私立中高進学通信
2025年8月号
校長先生はこんな人!
埼玉栄中学校
中高3000人という学び舎で
一人ひとりの可能性を紡いでいく
勅使河原 貞 (てしがはら・みさお)校長先生
1966(昭和41)年生まれ、埼玉県秩父郡出身。
日本大学理工学部数学科を卒業後、1990(平成2)年に埼玉栄高等学校に数学教諭として着任。
学年主任、研修担当、進学担当、教科代表、次長等の役職を担当。
途中5年間、系列校の栄東中学・高等学校に勤務。
2024(令和6)年、埼玉栄中学校教頭、2025年4月から、同中学・高等学校校長に就任。
部活動は日本刀を使用する居合道部の顧問を20年以上務める。現在、居合道錬士6段。
野球部を作ってくれた
恩師に憧れて
埼玉県の秩父郡小鹿野町という自然豊かな場所で育った私が、教員を志すきっかけを得たのは、中学時代の恩師との出会いでした。
数学の先生で、野球部の監督もされていた方です。生徒が少ない学校にもかかわらず、その先生は野球部を作ってくれました。入部をきっかけに、教職への憧れが芽生え、数学が得意になったのも、その先生の授業が楽しかったからです。
大学卒業後、本校に数学科の教員として奉職しました。その後、系列校への異動を経て、再び本校に戻ってきました。授業では中1から大学受験をめざす高3まで、幅広い年齢、さまざまなコースの生徒たちと、数学を通して語らってきました。
部活動では、居合道部に長年携わっています。高校時代に剣道を少し経験していたこともあって顧問を引き受けたのですが、最初は生徒に教わりながらのスタートでした。そこから外部の講習会や道場にも通うようになり、かれこれ25年近く続けています。時折、生徒とともに稽古し、自分自身も大会に出場しています。
居合道は技だけでなく、目に見えない部分、例えば姿勢や立ち居振る舞い、作法や心の在りようなどが評価される奥深い武道です。修行の深さが問われる世界で、そこが魅力といえます。
大規模校ならではの良さ
本校の生徒たちは、教員との距離がとても近く、特に中学から入学した生徒は、高校生になっても私たちと気さくに話をしてくれます。私が廊下を歩いていると、「先生!」とよく声をかけられますね。各教員やスクールカウンセラーが、生徒一人ひとりを日々きめ細かく観察し、指導しているからこそ築かれた信頼関係です。生徒たちも、何か困ったことや相談したいことがあれば、いつでも先生に話せるという安心感をもっています。
中高合わせて約3000人の大規模校だからこそ、多くの教員の目が生徒一人ひとりに向けられており、何かあればすぐに情報を共有し、相談しながら生徒に接しています。こうした先生と生徒の深い関わりが、本校の温かい雰囲気をつくっているのだと思います。
早い段階から将来の目標がはっきりしている生徒が多いのも本校の特徴の一つです。中学には『医学クラス』『難関大クラス』『進学クラス』があり、入学当初から自分の将来への意識を高める機会と、集中的に学習できる環境があります。もちろん、成長していくなかで考え方が変わることはありますから、本校ではそうした変化に柔軟に対応できるよう、クラス移動が可能です。中学時代に暫定的に目標を設定し、6年間で最終的にどうするかを決定できる時間的余裕は、中高一貫の大きなメリットだと思います。
工夫や継続で
未来へ羽ばたく力を育む教育
『人は生きた資本であり、資産である』を意味する建学の精神『人間是宝』は、本校が最も大切にしている教育理念です。これは創設者・佐藤栄太郎の哲学であり、「人は誰でも努力と勉強次第で、その道の第一人者になれる」という教えが込められています。“次第”というところがポイントで、工夫や継続する力があれば、誰もが可能性を秘めているという考えです。私たちは、生徒一人ひとりに内在する可能性を開花させ、将来的に自らの夢を実現してもらいたい。さらには、身につけた能力を自分のためだけでなく、社会貢献にも活かせる人材になってほしいと願っています。
私は、創設者から学校設立当時の苦労や思いを直接聞かせてもらっています。今から54年前の創立当初は、「埼玉は芋は育つが私学は育たない」と皮肉られるほど、私学には厳しい時代だったそうです。そんな時代にあえて埼玉に私学を作り、育てていこうという創設者の強い願いをよく知っているからこそ、教育理念を変わらず大切に受け継いでいきたいという思いが強いのです。
近年、力を注いだ取り組みとして、『医学クラス』の立ち上げがあります。周囲からは「中学で医学クラスなんて」と冷めた視線を向けられました。1期、2期と苦戦しましたが、3期生、今春の4期生からは着実に医学部合格者を輩出し、私たちの実践は間違っていなかった手応えを得ました。
地道な努力を惜しまず基礎をしっかりと固めることが、その後の成功へとつながります。そうした先輩たちに続き、「自分もやればできる」と自らの可能性を信じ、諦めることなく夢の実現に突き進む力を、6年間で培っていきます。

[沿革]
1972(昭和47)年に埼玉栄高等学校が開校。2000(平成12)年に中学校を開校。中学に『医学クラス』『難関大クラス』『進学クラス』があり、医学クラスでは学力だけでなく、コミュニケーション力や幅広い視野の育成を重視。0時限目、7時限目を活用し、希望制で演習授業を行うなど、細やかな学習サポートを行っている。部活動は67もあり、全国レベルの強豪が多数。1つの部活動につき1施設を用意している。顧問は教員が務め、指導するのが特徴。最新の校舎や多彩な学び・探究カリキュラムを整え、心・知・体のバランスを重視した教育に力を入れている。
(この記事は『私立中高進学通信2025年8月号』に掲載しました。)
埼玉栄中学校
〒331-0078 埼玉県さいたま市西区西大宮3丁目11番地1
TEL:048-621-2121
進学通信掲載情報
PICK UP!!
紹介する学校
- 2024年度『高校生国際シンポジウム』で4名が最優秀賞を受賞佼成学園中学校
- PBL×個人研究でめざす“自走する学び”サレジアン国際学園中学校
- 探究テーマの宝庫で学ぶ体験『アイスランド探究ツアー』芝浦工業大学柏中学校
- 理工系の知識で社会課題を解決 唯一無二の『SHIBAURA探究』芝浦工業大学附属中学校
- 独自の美術教育と『デザイン思考』で育む創造力女子美術大学付属中学校
- 多角的・複眼的な視点を養う分野の垣根を越えた『教科横断型授業』田園調布学園中等部
- 自立的・主体的な学習者を育成 プロジェクト型探究『T‐Project』桐朋女子中学校
- 東洋大学と連携した理数探究『未来の科学者育成プロジェクト』東洋大学京北中学校
- 未来を見据えた探究力を育成する『自問自答プログラム』二松学舎大学附属柏中学校
- 社会で活躍できるスキルを育てる『R-PROGRAM』立正大学付属立正中学校
- 真の数学好きが教える授業「数学は模索するのが楽しい」狭山ヶ丘高等学校付属中学校
- 自然現象を数式化して未来予想ができる面白さ高輪中学校
- 生成AIとプログラミングで世界に自分たちの仕事を創る瀧野川女子学園中学校
- あなたの「考え」が社会を変える!「多角的思考」と「社会形成力」を育む玉川学園中学部
- 大学レベルの研究に取り組み新しい価値の創造をめざす千代田中学校
- 数学史を絡めた導入タイムで生徒たちの好奇心を刺激獨協中学校
- 生徒各自がテーマを決める100人100通りの学びがある授業ドルトン東京学園中等部
- ロイロノートで協働学習 実社会と数学を結びつける安田学園中学校
- 実験で得た喜びや驚きから探究心を育て自立した探究者を育成する国学院大学久我山中学校
- 生徒の自主学習をサポートするセルフラーニングセンターが始動かえつ有明中学校
- 日本の教育・社会にイノベーションを!学校併設の教育研究機関『BSICE』を設立文化学園大学杉並中学校
- 姉妹で同じ学校に通うことで得られる安心感上野学園中学校
- 読書で得た力を活かし企画に挑戦!生徒主体の『読書プロモーター』が始動大宮開成中学校
- オープンキャンパスに来て入学を決めました関東学院中学校
- 学びも暮らしも自分を育てる時間に新校舎で深まる学び、寮生活で育つ力秀明中学校
- 開放感ある校舎で、勉強にも部活動にも邁進日本大学第二中学校
- やるべきことを明確に伝え家庭学習の習慣化を促進江戸川女子中学校
- 小さな成功体験や達成感を学習意欲につなげてやる気と学力をアップ!神田女学園中学校
- 文武両道を支える手厚い学習支援共栄学園中学校
- 挨拶と思いやりを大切に豊山生らしい空気が育っていく日本大学豊山中学校
- 農業体験と仏教修行が育む感謝の念と寛容のまなざし駒込中学校
- 「一日一日、かけがえのない」学校生活をめざして共立女子第二中学校
- 生徒の良き伴走者として生徒が主役の学校づくりに邁進光英VERITAS中学校
- 中高3000人という学び舎で一人ひとりの可能性を紡いでいく埼玉栄中学校
- 一人ひとりの夢を叶えるため学力向上と“心の教育”を全力でサポートします淑徳中学校
- 理科の学びを通じて生徒の感性と価値観を磨きたい開智日本橋学園中学校
- 生徒が率先して学ぶオープンな授業を実践文京学院大学女子中学校
- 教科・単元の偏りなく努力する力を見る東邦大学付属東邦中学校
- 思考力・読解力が活かせると話題の「理数探究入試」山脇学園中学校
- 基礎基本・AI活用・探究を突破口に「年内入試に強い学校」へと進化秀明大学学校教師学部附属秀明八千代中学校


