私立中高進学通信
2021年12月号
私たち、僕たちが大好きな先生
駒込中学校
「実験ありき」の授業で
理科好きの生徒を育てる
岩上 敏雄(いわがみ としお)先生
東京理科大学理学専攻科化学専攻修了後、駒込中学校・高等学校に勤務。
実験をメインとする理科教育を行い、理科好きの生徒を日々育成している。
顧問を務める自然科学部では、生徒たちの自主性を最大限尊重し、さまざまな活動を見守っている。
「多種多様な実験を安全に行う」をモットーに、中学の3年間で100回もの実験を行っている岩上敏雄先生。
岩上先生が実践する、“生徒を「理科嫌い」にしない授業”について聞きました。
授業を工夫し、面白くすれば
「理科嫌い」は生まれない
中1にバーナーのつけ方を教える岩上先生。生徒たちの興味津々といった視線が先生の手もとに集まります。――教員をめざしたきっかけは?
大学では「一応教職免許も取っておくか」といった軽い気持ちで教職課程を履修していたのですが、理科教育法という授業で武田一美先生という恩師に出会って人生が変わりました。厳しい先生でしたが、とにかく理科教育に対する情熱がすごくて、その情熱に惚れ込みました。
当時、武田先生はいろんなところに講演に行かれており、大学在学中は恩師にくっついて私も可能な限り講演のお手伝いをさせていただきました。
先生の講演はいわゆる聴衆の前で話すだけの普通の講演と違いました。講演を聞きに集まった先生たちにまず実験をしてもらうのです。その上で子供たちが実験をすることの大切さを説いていて、私も実験の重要性や意義を学びました。だからこそ私の授業は、「実験ありき」なんです。
――「理科嫌い」「理系離れ」といった言葉を耳にしますが、授業で気を配っている点は?
この学校で理科を教えていて、生徒たちが理科を嫌いだと感じたことは少しもありません。とはいえ、生徒たちが理科を嫌いにならないように、私自身も工夫をしています。
わかりやすく面白い授業をするために、当初私は自分の授業を録音していました。それを帰りの電車で聞いて、自分の話し方などを直すようにしました。
次に、ある時から録画をし始めました。動画だと話し方だけでなく動きの癖もわかるので、気づくことも多く、それを改善するようにしています。一つ例をあげると、話している時にちょこちょこ動くと聞きにくいことです。動きながら話していると、生徒は教員の動きを目で追いながら聞くので疲れてしまいます。他にも、ちょっとした動きに気をつけるだけで、見ている側の印象がかなり変わることに気がつきました。
――授業のやり方を追求し続けるのは、大変ではないですか?
理科は座学ではなく、「実験」という実学に基づいた学びがあるからこそできることも多いと思います。特に中学の理科は、まず興味を持ってもらうことが大切だと思っています。サッカー選手のすそ野を広げればトップ選手が増えるのと同じように、理科好きな中学生が増えれば、最終的に基礎科学を勉強する人が増えてくれるのではないかと思っています。理科は、大学進学に向けて本格的に勉強するのは高校に入ってから始めれば何とかなると思うので、まずは好きでいてもらいたいと思って授業計画を立てています。
実験を正しく習得するには
まず慣れることが大切
――生徒が実験をするときに気を付けていることは?
まずは順番ですね。長年積み上げてきたことを生かしてカリキュラムを作成していて、実験をどの順番で行うのかも決まっています。例えば、中1は最初に生物の実験を行います。なぜなら、実験室でのふるまい方や器具を扱うことに慣れていってもらうことが必要だからです。この順番を変えて最初に化学の実験を持ってきたりすると、ガスバーナーやガラス器具の扱いにとまどって、うまくいかないことが多いです。
近年は、オール電化の家に住んでいて日常生活で火を見ることのない生徒が一定数いるので、まず座って観察したり、顕微鏡で見たりする生物の実験をするようにしています。その後に火などを扱う化学実験をすることで、生徒たちに実験をすることに慣れてもらいます。
次に気をつけているのは、クラス全体を常に把握することです。実験の授業の時には、どこで何が起きているのか、教室のどこにいても生徒の様子を全部把握するように特に気を配っています。実験の中には、手順を間違えば危険を伴うようなものも若干あることは確かです。けれど、それらを安全に行うためにはどうすればよいかをいつも考え続けています。
このように中学3年間で培った実験の技術は確かな経験となり、高1になって高校から入ってきた生徒と比べると、中学からの内進生の動きはとてもいいです。けれども、高入生も慣れてくると実験を行う楽しさを感じてくれています。中でも理系志望の生徒は楽しそうですね。理科好きなら、実験が嫌いなわけはないですからね。
オンラインも活用して
実験の楽しさを伝えたい
――駒込をめざす人にメッセージをお願いします。
中学の3年間で100回くらいの実験をしています。自ら手を動かし、試行錯誤することによって思考力や創造性、発想性が伸びるのは証明されているので、とにかく手を使うことと本物を体験させて脳に刺激を与えていくことを大事にしています。
新型コロナウイルスによる休校期間も、生徒の自宅に教材を送ってオンラインで実験をやってもらいました。休校措置に対する新しい試みでしたが、オンラインでやった方がうまくいく実験もあるとわかったのは大きな発見でしたね。オンラインだと一人ひとりの手もとがモニターで確認できるので、生徒たちの実験の進捗状況を小まめにチェックしたり、個別に細かい指導やアドバイスを伝えたりすることができるのです。私の手もとを大きく写して見せられるので、生徒たちにも作業工程がわかりやすい。オンラインは今後も活用していきたいと思っています。
中学の実験のカリキュラムはすでに完成形に近いですが、やってみたいと思う実験があれば、随時変更しています。思いついたらすぐにプリントを作って年間を通して使うテキストの中に入れていきます。オンラインにしても新しい実験にしても、決して既成のものにとらわれずに取り組んでいきたいと思っています。そうすることで、少しでも興味を持って実験に触れてもらい、理科を嫌いにならないで卒業してほしいと願っています。嫌いでなければ、何かのきっかけで道が開けることもあると思っていますから。


岩上先生の説明を聞いた後、実際にバーナーに火を点け、試験管を熱してみる生徒たち。
慣れない作業に緊張しながらも、生徒たちの表情は楽しそうです。
(この記事は『私立中高進学通信2021年12月号』に掲載しました。)
駒込中学校
〒113-0022 東京都文京区千駄木5-6-25
TEL:03-3828-4141
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