私立中高進学通信
2021年12月号
私学の英語最前線
昌平中学校
学際的な視野で進化しながら
学校を挙げて取り組むPEP
埼玉県初のIB(国際バカロレア)中等教育プログラム(MYP)認定校の同校。「英語×他教科」で取り組む注目の授業『学際的単元』が間もなく始まります。
習熟度別で構成された中3の授業。
戸恒先生は帰国生も一般生も関係なく、どんどん英語で話しかけていきます。
学校生活の中に
いかに英語を定着させるか
同校はIB(国際バカロレア)中等教育プログラム『MYP』認定校として、グローバル基準の人材育成プログラムを実践しています。知識と実践を融合させた英語力超強化プログラム『PEP』(Power English Project)も重要なコンテンツの一つ。『全校生徒が英語を得意教科に』との合言葉があり、全教職員が一丸となってPEPをサポートしています。
「英語科以外の教員たちが “英語を教える”のではなく、日頃から “英語を頑張ろう”という雰囲気づくりに努めています。英語の学びは授業の中だけで完結するものではありません。学校生活の中にどれだけ英語を定着させるかが、本校の英語教育の重要なポイントです」
そう語るのは、中学英語科主任の戸恒和香子先生です。
「たとえば、数学の永田祐一先生は、朝の単語テストで問題用紙を配る際、必ず『Here you are』と、ご自身も積極的に英語を使っています。それに対して生徒も英語で一言返してくれます。教員力の高さは、本校の特色と言えるでしょう」
永田先生は自他ともに認める「Interna-tional Math Teacher」。中3の担任を務めています。
「もともと英語は好きなのですが、私自身がまず英語を積極的に使うことで、生徒が日常的に英語と触れる機会を増やしたいと考えています。自動車通勤で、車内ではいつも英会話のYouTubeを流し、覚えたての日常会話を、その日の数学の授業の中で活用しています。校内にある『インターナショナル・アリーナ』(通称「日本語禁止部屋」)にも積極的に出入りし、近くにいる生徒も巻き込みながら、ネイティブ教員とのコミュニケーションも楽しんでいます。リスニング力は多分、学生時代よりも数段上がっているかもしれません」
英語科と社会科の
コラボレーション単元
今年度からは、教科の枠を越えた英語教育の輪の中に、青年海外協力隊員や欧州での教員経験も豊富な松野岳水先生(国際教育部)も加わりました。教科担当は社会科です。
「たとえば『ASEAN』は、Association of Southeast Asian Nationsの略語であることを示しながら、言葉の意味をよりいっそう深く考えてもらっています。新しい内閣総理大臣が誕生したタイミングでは、 “国会の一般名称はnational assemblyだが、日本ではthe Diet、ほかにも、CongressやParliamentという言い方がある”など、タイムリーな話題を生徒たちと共有しながら英単語に触れてもらうこともよくあります。実はこれ、今年度後半から始まるプログラムに向けた布石でもあるのです」(松野先生)
松野先生がいう “布石”とは、MYPの要件の一つ『学際的単元』のことです。
「複数の教科を同じ単元で扱うのが学際的単元です。教科の枠を越えて、知識や自分の考えを、より深めていく効果を期待しています。英語科と社会科(公民)のコラボレーション授業はその中心となるもので、社会科で英語を交えて政党政治を学んだ後に、英語科では、英語でマニフェストをつくって、選挙活動を疑似体験する計画です。その準備段階として、公民で使用する用語も少しずつ英語で紹介しています」
オーストラリアに2校ある姉妹校との国際交流も、戸恒先生から松野先生へとバトンタッチ。現地校とオンラインでつないだハイブリッド型の英語の授業も、次年度からさらにパワーアップします。
「これまで英語科の教員たちが培ってきたカリキュラム、ノウハウというものを最大限に尊重し、これまで以上に力を振るってもらえる環境を整えることが、国際教育部としての立場です。
一方、授業などでは私の中米や欧州での経験も、グローバル教育の一環として伝えていきたいと思っています」(松野先生)
「全員が英語を得意科目に」
との思いでさらなる進化を
中学卒業時の英検準2級以上の取得率は81・3%。入学時には所持級なしの生徒が70・6%もいたことを考えると、その結果には目を見張るものがあります。また、国内の大学に在籍する留学生と校内で交流する『グローバルビレッジ』の開催など、独自に設定した “国内留学型”のプログラムも好評です。学校選びの選択肢の一つとして “昌平の英語”を挙げる在校生が突出して多いことともつながります。
「中学開設当時、英語の授業はごく一般的なものでした。私はその頃、併設の高校で指導していましたが、 “使わない英語は意味がない”と感じていました。そこからしばらくして、中学がMYPの候補校になり、2017年には認定校へとなる流れの中で、授業の中身を少しずつ変えていったのです。
そのポイントを一言でいうと、授業のなかで英語を使う場を設けることでした。習った単語や文法は意識してコミュニケーションに取り入れ、街中にあふれるカタカナ言葉で “すでに生徒は知っているな”と思ったら、楽しく会話文に取り入れて使っています。初めこそ間違えることが恥ずかしくて、なかなか英語で返答してくれない生徒もいますが、なるべく日本語を介さずにコミュニケーションを取り続けるなかで、誰もが “堂々と話せる自分”に成長していくのです。中1の後半あたりからは、オールイングリッシュに近い授業も可能になっており、習熟度別のクラス編成も導入しながら、全員が英語を得意教科とできるように努めています」(戸恒先生)
英語教育の充実ぶりに合わせて、昨年度から戸恒先生が強調し始めたのは、グローバルなコミュニケーションを意識した英語力の強化です。語学力は単なる “ノリ”ではなく、相手の立場で物事を考えることも視野に入れた、よりハイレベルな同校の英語教育が、さらに進化を続けるPEPなのです。
POINT
教科の枠組みを越えた信頼関係
青年海外協力隊員として2年間、「コスタリカで野球の普及活動に努めていました」と話す社会科の松野先生。
一方、受け持つクラスの生徒が職員室を訪れた際にはシンプルな英語で話しかけてみるという数学科の永田先生。松野先生が「これからも英語科の教員がやりやすい環境、生徒が自信をもって先生たちとコミュニケーションできる環境をつくっていきます」と言えば、永田先生は「中3の担任として、卒業までに英検準2級以上を取ろうと、常に声かけをしています」と力強く話します。「学際的で頼もしい」と、戸恒先生も英語科以外の先生方にも信頼をおいている様子でした。
担当の先生より
職員室でも1日の始まりは
「英語で挨拶」が定着しています
職員室ではあえて、生徒から英語で挨拶をしてこない限り振り向きませんでしたが、今では「職員室では英語」が定着しています。最近は保健体育の教員も、英語で挨拶をしたりしています。実は挨拶だけでも英語でできることは、とても大事なことなのです。中2・中3の生徒たちが「Good Morning」と言っている姿を見て、中1生もどんどん変わっていきます。小さくても大事な第一歩です。(中学英語科主任/戸恒和香子先生)
(この記事は『私立中高進学通信2021年12月号』に掲載しました。)
昌平中学校
〒345-0044 埼玉県北葛飾郡杉戸町下野851
TEL:0480-34-3381
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