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私立中高進学通信

2021年1月号

実践報告 私学の授業

駒込中学校

SF映画を視聴して科学者に学び
短編SF小説作りにチャレンジ

SF映画の科学的知識を学ぶSTEAMプログラム
映画を元に、自分たちでも短編のSF小説のあらすじをつくっていきます。

映画を元に、自分たちでも短編のSF小説のあらすじをつくっていきます。

これからの時代に不可欠な
理数系教育「STEAM」

 人工知能の発達やビッグデータの活用など、高度な情報通信技術が進展するこれからの時代に求められる理数系教育として「STEAM(スティーム)教育」が注目されています。科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)、芸術(Art)、数学(Mathematics)を融合させた教科横断的な教育を指します。

 先行きが見通せない不透明な現代社会では、知識をどれだけ身につけたかではなく、正解のない課題に対して、知識を活用しながら「何ができるか」を考え、積極的に最適解を求める姿勢が問われます。このような新しい学力を身につけるには、従来の授業形態にとらわれず、自由に学び合いながら、生徒自身が、1つのものを作り上げるようなプロジェクト型の活動が適しています。

 2020年10月下旬、同校の中1・中2生が、科学的な知識のうえに、思考力や判断力、表現力を養う、STEAMプログラムに取り組みました。事前にSF映画『インターステラー』を視聴し、作品の背景にある物理学の知識を専門家から聞き、自分たちでSF小説を作ってみようというユニークな取り組みです。

 しかも、授業は教員が「指導」するのではなく、理工系の現役大学生がファシリテーターとなり、各クラスを「支援」します。グループ活動が順調に進むように助言し、生徒との対話から、新しい発想のヒントを引き出していきます。

アートで伸ばす感性と
科学的思考の融合

 説得力のあるSF小説は、奇想天外な思い付きを、ただつなぎ合わせるだけでは作れません。さまざまな観点から考察して科学的知識を深め、そのうえで「こんなことが起こりうるかもしれない」と未来の可能性を提起し、ストーリーを構成するプロセスを経て生まれます。このプロセスを生徒たちが追体験することで、理科を学びながら発想力を身につけることができ、創造力の源となるワクワク感や感性も磨くことができるのです。

 慣れない学び方に最初は戸惑っていた生徒たちも、大学生のファシリテーターによる上手なリードでリラックスして発言できるようになっていき、思い思いのSF小説の筋書きを立てていきました。

 今回は小説を扱いましたが、STEAM教育における“A(アート)”は、音楽や絵画、演技、映像といった分野だけではなく、文化や経済、法律や政治といったリベラルアーツ(教養)まで含みます。科学的な知識と深い教養に支えられた発想力をこの年代から身につければ、社会に出たときに活かされるだけでなく、人生をより豊かなものにしていくことができるのです。

授業レポート
SF映画で物理学を学び、オリジナルのSF短編小説を作ろう
Step 1
導入「もしも重力がゼロなら?」 SF映画を視聴し、科学者が解説

 プロジェクトの元になるSF映画『インターステラー』(2014年)を全員で視聴します。その後、東京工業大学助教の山崎詩郎先生の解説を聞きました。

 山崎先生は親子向けの科学実験教室や「SF映画で学ぶ相対論」などの本格的な物理教室を開くなど、幅広く活動している物理学者です。『インターステラー』の監督、クリストファー・ノーランの最新作『テネット』(2020年)では、日本語字幕の科学監修も手掛けています。

 山崎先生は「もし、摩擦がなくなったら」「水が油と入れ替わったら」「光と同じ速度になったら」など、自然法則に「もしも」を重ねてみようと話しました。

異常気象によって人類滅亡の危機が訪れている近未来を舞台にしたSF映画『インターステラー』を視聴。そのストーリーには、科学的知識が多く盛り込まれています。異常気象によって人類滅亡の危機が訪れている近未来を舞台にしたSF映画『インターステラー』を視聴。そのストーリーには、科学的知識が多く盛り込まれています。
オンラインで東京工業大学助教の山崎詩郎先生とつなぎ、作品の解説や、どのような科学の知識が用いられているかを教わります。オンラインで東京工業大学助教の山崎詩郎先生とつなぎ、作品の解説や、どのような科学の知識が用いられているかを教わります。
Step 2
調査わかったことを書き出し、小説のテーマを決める

 生徒たちの興味を引き出すため、視聴した『インターステラー』以外にも、地球外知的生命体をテーマにした『コンタクト』、人工知能をテーマにした『エクス・マキナ』といったSF映画についても紹介しました。この中からクラスで1つ、SF映画を選択して、さまざまな観点からキーとなる概念を調べていきます。

 それぞれのテーマについて「すでにわかっていること」「まだわかっていないこと」「将来起こると予測されていること」など、さまざまな視点から、調査していきます。

 生徒は1人に1台配布されたタブレット端末を使って、ネット検索をしながら調べ、クラス全員が共有していきます。あるグループはアインシュタインが編み出した相対性理論の公式「E=mc2」の持つ意味を大学生から教えてもらいました。「いろいろなところに使われているから、調べてごらん」と言われ、目を輝かせていました。

ワークシートに沿って、映画で扱われているテーマを調べていきます。タブレット端末で調べながら、わかったことを書き出していきます。ワークシートに沿って、映画で扱われているテーマを調べていきます。タブレット端末で調べながら、わかったことを書き出していきます。
集めた情報を付せんに書き、黒板に貼っていきます。こうすることでわかったことや、さまざまな意見を共有し、つなげて考えることができます。集めた情報を付せんに書き、黒板に貼っていきます。こうすることでわかったことや、さまざまな意見を共有し、つなげて考えることができます。
Step 3
展開SF小説のコンセプトを練り、ストーリーを考える

 グループごとに「実現したら面白い未来」を考えます。話し合いながらまとめ、続いてストーリーを考えます。

 科学的知識を背景に、登場人物や物語の設定について起承転結を考慮しながら考えていく活動は、理科や数学の要素に加えて、物語作りという国語の要素もあります。生徒たち一人ひとりが、楽しみながら活動していました。

ファシリテーター役を務める大学生が生徒たちの調べた科学の知識が、どう役立っているかをわかりやすく、興味をひくように話してくれました。ファシリテーター役を務める大学生が生徒たちの調べた科学の知識が、どう役立っているかをわかりやすく、興味をひくように話してくれました。
「人間が空を飛べるようになって、自由に行き来できるようになったら……という未来を想像して、設定やストーリーを考えたのが楽しかったです」(左・中1/M.K.さん)「人間が空を飛べるようになって、自由に行き来できるようになったら……という未来を想像して、設定やストーリーを考えたのが楽しかったです」(左・中1/M.K.さん)
「グループで、“瞬間移動ができたらいいな”など、実現したらいいと思えることを話し合ってストーリーを考えました。こういう授業は面白いです。大学生の先生が調べ方や、相対性理論の公式について、わかりやすく教えてくれました」(右・中1/K.U.さん)
ココも注目!
教科の枠を超えた学びで
理数系の世界を体験
小出行賢先生

 2020年度は新型コロナウイルスの影響による一斉休校で、生徒同士が協力しながら学べる機会は多くありませんでした。2学期の半ばには、中1生も学校生活に慣れてきましたので、1日かけてSTEAMプログラムに挑戦してみました。

 本校は高校に『理系先進コース』を設け、最先端の科学技術に触れる授業を展開しています。中学生のうちから教科の枠を超えた理数系の学びを経験することで、理系先進コースを希望する生徒が増えることを期待しています。(中1学年主任・社会科/小出行賢先生)

進学通信 2021年1月号
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