私立中高進学通信
2022年4月号
中1の始め方
狭山ヶ丘高等学校付属中学校
考える力や協働する力、
生活習慣を身につける
批判や否定をせず、お互いに自由に意見を表明して刺激し合うブレーンストーミング。各自アイデアを出し合い、意見を付箋に書いて貼っていきます。同校ではGoogle Workspaceを導入していますが、中1は自分の手を動かして作業することを重視しています。
自分の心を見つめる『内観』をベースとし、豊かな人間性と高い学力を育んでいる同校。中1生が自分で考えて発表する力を身につけるため、また、自学自習の姿勢を確立するために用意されたさまざまな取り組みをご紹介します。
『マインドマップ』を描き
自分自身を知ることから始める
中1では、自分自身の『マインドマップ』を作成することから始めます。
「マインドマップとは、キーワードを中心に置き、そこから連想する言葉やイメージを放射状につなげて広げ、思考を整理して発想を豊かにする思考術です。中1はまだ社会や世界と自分とのつながりといった考え方が身についていないので、まずは自分のことから始めます。自分自身や家族、友達など、自分に近いことをテーマに知っていることを整理して描き、でき上がったマインドマップを俯瞰して何が見えるかを考えます。中2になると他者や社会へ視点を広げ、中3では自分で問題点を見つけ出して4000字以上の論文を執筆し、それを元にポスターセッションを行います。自分の研究を分かりやすく他者へ伝えるトレーニングをするわけですが、問題提起をしてみると『自分には知識が足りない』など、最終的には自分の問題に戻ってきて、自己を見つめ直すことにつながります」(教頭・国語科/北谷高志先生)
さらに、中1ではグループで自由にアイデアを出し合う『ブレーンストーミング』を通して、思考を深める取り組みをします。
以上の事柄は主に総合の時間に行います。天気が良い日は全員で農作業体験に出かけます。
農作業体験で集団行動を学び
みんなで達成感を味わう
同校の特徴的な取り組みの一つが、中1と中2で行う農作業体験です。学年ごとに学校が借りている畑へと、スクールバスで10分ほどかけて移動します。昨年の中1は夏はピーマン、トマト、ナス、冬は大根、白菜などの野菜を植えて生育後に収穫しました。農作業体験は、特に彼らにとっては大切な学びの時間です。
「農具を扱うので怪我をしないように、お互いに段取りを確認して作業するなど、協働することで集団行動を学びます。もう一つの学びは、何かを成し遂げることの達成感。野菜の成長は目に見えますから、手間をかけて育て、大きく実った時はうれしいものです。反対に収穫できなかった場合でも、何が悪かったのかをみんなで考えることができます。全員で同じ目標に向かって、体を動かして頑張るので、集団としての団結力が高まります。採れた野菜は生徒が家に持ち帰りますが、たくさん採れるので教員もご相伴にあずかることがあります(笑)。高校にもお裾分けをして喜ばれています」(英語科/伊藤亮太先生)
7時20分からの朝ゼミで
『自学自習の姿勢を確立』
さらに、中1に身につけてほしいのが生活習慣だと北谷教頭先生は話します。
「本校では7時20分から朝ゼミを開いています。中1は英・国・数の3教科、基本的に各教科で週1回ずつ行っています。7時20分に学校でゼミがあるということは、何時に起きて、何時に朝食をとるべきなのか、前日の夜は何時に寝なくてはいけないのかといった生活習慣を身につけるのは、中1の初めが最適だと思います。さらに私は『週3回、7時20分に学校にいるなら、ゼミのない日もその時間に登校すれば、朝の時間を有効活用することができるよ』と生徒に話しています。朝に勉強する習慣がついていれば、1日のうちで自由に使える時間が増えます。そのために、最初はきついかもしれませんが、中1で習慣づけてほしいと考えています。ただし朝ゼミは強制ではないので、自分のペースに合わなければ、本人が勉強しやすい生活習慣を設定すれば良いと思います」(北谷教頭先生)
朝ゼミがない日も早く登校している生徒には、声がけすることもあります。
「『朝の教室で、一人で勉強しているときに声をかけられるとうれしい』という言葉を生徒から聞きます。教員からの何気ない声がけが、生徒の励みになっているようです」
最後に、北谷教頭先生と伊藤先生からメッセージをいただきました。
「コロナ禍もありますが、何が答えなのか分からない世の中です。別の言い方をすると、これからの社会には答えがたくさん存在するとも言えるでしょう。そんな時に求められるのは『あなたはどう考えますか?』ということです。身近なことでも自分で情報を得て、自分で考えることが大切です。その能力を本校で獲得して、変化していく世の中に流されるのではなく、自分で自分の道を選んでいける人になってほしいと思います」(北谷教頭先生)
「自分の考えを持って、それを説明できる人になってほしいです。それには中1が肝心です。自分の好きなことや学びに対する興味をどんどん広げていって、中学を卒業する頃には、社会にあるさまざまな情報源から正しい情報を集め、他者に自分の意見を伝えることができる人をめざしましょう」(伊藤先生)
この年の大きなテーマは「歴史」で、写真の班は「時計の歴史」についてプレゼンしました。(2019年撮影)
野菜の成長過程を観察して、最終的にレポートにまとめ、探究的な学びにつなげます。
(この記事は『私立中高進学通信2022年4月号』に掲載しました。)
狭山ヶ丘高等学校付属中学校
〒358-0011 埼玉県入間市下藤沢981
TEL:04-2962-3844
進学通信掲載情報
PICK UP!!
紹介する学校
- 発展 iPad導入で広がる可能性 学習環境がさらに充実国士舘中学校
- 学習と生活の習慣を中1から身につけ 希望学部へ進学日本大学第一中学校
- 生徒それぞれの希望の進路を叶えるために 学習・受験をサポート!文教大学付属中学校
- 恩師や仲間との強い絆 そして探究が広げた世界開智日本橋学園中学校
- 母娘二代で京華女子へ 卒業後も続く絆京華女子中学校
- 素直で壁がない自由な好奇心を 育んでくれた学校生活光英VERITAS中学校
- 全幅の信頼を寄せる先生と ともに歩んだ6年間聖徳学園中学校
- 高い志を胸に抱いて 学習や部活動に打ち込んだ6年間東邦大学付属東邦中学校
- 中高6年間の充実の日々が 夢へと羽ばたく力になる安田学園中学校
- 伝統に新たな変化が加わった 世田谷学園の文化祭「獅子児祭」世田谷学園中学校
- 留学生と中3生が英語で交流 異文化を理解する『Global Eye』横浜富士見丘学園中学校
- 自分の言葉で思考を深める 中学3年間の探究学習光塩女子学院中等科
- プログラミング授業で 論理的思考力と創造力を育む相模女子大学中学部・高等部
- 社会人による特別講座で さまざまな仕事に関心を持つ品川女子学院中等部
- 英語により親しむ研修が 将来の可能性を増やす帝京大学系属帝京中学校
- 考える力や協働する力、生活習慣を身につける狭山ヶ丘高等学校付属中学校
- 生徒一人ひとりに寄り添う 細やかな人間教育を普連土学園中学校
- 卒業生のつながりが深く いつでも集まれる母校は 居心地の良い“第2のホーム”日出学園中学校
- 卒業生チューターが生徒一人ひとりの 受験勉強に寄りそってきめ細かにアシスト佼成学園女子中学校