私立中高進学通信
2025年9月号
卒業生が語る私の成長Story
東京家政大学附属女子中学校
“食”と向き合う力をくれた場所
東京家政大附属で芽生えた探究心

株式会社にんべん
研究開発部
S・Yさん
「何事にも、やる気・元気・根気をもって本気で取り組みなさい」——高木くみ子校長先生(当時)のこの言葉を胸に、
Sさんは合唱部やビオトープ委員会などの課外活動へ積極的に参加し、
学校行事にも全力で取り組みました。このメッセージは、今も彼女の原動力となっています。
東京家政大学附属女子中高から大学までの10年間の学びを経て、現在も成長を続けるSさん。同校で過ごした日々やそこで芽生えた思いが、今の仕事や人生とどのように結びついているのか、お話を伺いました。
食への探究心や好奇心が芽生えた
スクールランチ

2012年に東京家政大学附属女子中学校へ入学し、中高大と一貫して東京家政で学び続けたSさん。大学では管理栄養士をめざし、家政学部栄養学科管理栄養士専攻(現・栄養学部管理栄養学科)に進みました。卒業後の2022年4月に株式会社にんべんへ入社し、同年10月から現在まで同社の研究開発部で働いています。
食への探究心や好奇心が芽生えたきっかけは、中学で体験した『スクールランチ』でした。
同校では中学の3年間、ランチルームで生徒同士が会食するスクールランチを実施しています。Sさんは「当時は食育を受けているという感覚はなく、とにかくおいしいので毎日楽しみにしていて、一番乗りをするためにランチルームへ走っていっていました」と振り返ります。
「小学校時代は好き嫌いが多く、給食でも食べられないものが多かったんです。だからこそ、おいしいスクールランチに感動し、だんだんと『自分も作ってみたい』と思うようになりました。友達と一緒に楽しみながら食事をとると苦手な食べ物を克服できることにも興味をもち、高校生になってからもランチルームをよく利用していました」
食育に取り組む人々の姿に触発され、
管理栄養士を志す
「みんなで食べるからこそ学べることがある」と話すSさん。みんなで食事を共にする意味を考えるようになったのは、あるボランティア経験がきっかけでした。エピペン(※)が欠かせない子どもたちのキャンプを引率した際、アレルギーをもつ子どもたちのために、現地の方々がアレルゲンに配慮して「みんなが食べられる食事」を用意する様子を見て、「同じ釜の飯を食う」ことの大切さを実感したと言います。
「食べられないものを諦めるのではなく、どうすれば食べられるようになるかを考えるようになりました」
スクールランチの献立を考える専属の栄養教諭(管理栄養士)、村上まさ子先生の存在も、Sさんの進路に影響を与えました。
「直接話す機会は少なかったものの、『食育メモ』を通じて旬の野菜や栄養素について学び、食事を通して先生の思いを受け取っていたと思います。また、私の母が関わるNPO法人の食育活動でも村上先生にご助力をいただいており、母を通じた交流がありました。
食育に熱心に取り組まれる村上先生の影響は大きく、『栄養士』という専門職に興味をもち、高校生の時に東京家政大学のオープンキャンパスに参加しました。その際、栄養学科での学びや将来の展望を明確に理解したことで、ここで学ぶ意志が固まりました」
※エピペン…アレルギーの重症な反応であるアナフィラキシーの応急処置に使用する自己注射製剤。
中高時代の思い出と成長
今も大切にしていること
Sさんは中学時代、合唱部やビオトープ委員会など課外活動に積極的に取り組みました。中2の夏休みには、ボランティアとして日本に住む外国人の方に日本語を教える経験もしています。
「部活動や委員会、ボランティアを通じて、人と接する喜びを知り、自主性も育むことができました。仕事をしていると、多くの人に助けられる場面があり、一人でできることには限界があります。そこで必要となる積極的に協力し合う姿勢は、中高時代に身につきました」
Sさんには、大切にしている言葉があります。それは、高木くみ子校長先生(当時)が話された「何事にも、やる気・元気・根気をもって本気で取り組みなさい」というものです。
「新しいことに挑戦する際はその言葉を思い出し、大学時代や社会人になった今も座右の銘にしています。
大学の卒業論文では、正解のない課題へ真摯に向き合い、実験が思うように進まなくても改善策を模索する経験を積みました。また商品開発の現場では、繰り返し組み合わせを検討する根気強さも求められますが、こうした努力は高木先生の言葉に支えられてきたといっても過言ではありません」
知識と経験を積み重ね
食育に挑戦したい
管理栄養士と理科の教員免許をもつSさんは「商品開発の仕事をしながら、やがては食育分野にも取り組みたい」と展望を語ります。
「日本古来の食品である鰹節には、“鰹節を削る”という文化がありますが、そうした伝統は徐々に廃れつつあります。このような日本の温かく優しい食文化を次世代へ伝える役割を担いたいと考えています。例えば、実際に鰹節を削ってもらう体験を提供するなど、子どもたちと一緒に食育活動を行っていきたいと願っています」
高校生の頃からキャンプなどで子どもたちと接してきた経験が、今の思いにつながっているそうです。
「家政は、私の学びや芽生えた思いが今も息づき、現在の私につながっている場所です。また、ビオトープがあり、春の桜、夏のセミの抜け殻、秋のイチョウや紅葉、冬の雪景色など、四季折々の自然の変化を身近に感じながら過ごせることも、この学校の魅力のひとつです。温かみを感じる緑豊かな環境も含めて『チーム家政』という一体感があり、私が困った時には両手を広げて迎えてくれる、安心できる心のよりどころだと感じています」
恩師からの応援メッセージ
これからも挑戦を重ねて
夢を実現していってほしい

中学から大学までの10年間にわたって培われた探究心は素晴らしく、現在の仕事の確かな基盤になっていると確信しています。研究開発の業務はチームで取り組む性質上、人の話に耳を傾け、互いに協力し合う姿勢が不可欠です。協調性に優れたSさんであれば、誰もが安心して仕事を任せられると感じています。
かつて「教員の道か就職するかで迷っている」と相談を受けましたが、仕事に真摯に向き合い、全力を尽くすことで、いかなる夢も実現できると思います。これからの長い人生のなかで、多くの挑戦を重ね、豊かで充実した日々を歩むことを心より願っております。(栄養教諭・管理栄養士・中学校給食室/村上まさ子先生)
(この記事は『私立中高進学通信2025年9月号』に掲載しました。)
東京家政大学附属女子中学校
〒173-8602 東京都板橋区加賀1-18-1
TEL:03-3961-2447
進学通信掲載情報

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