私立中高進学通信
2022年12月号
授業ルポ!
十文字中学校
自由に学び探究し
自ら学ぶ力を育てる
数学科
個別最適化学習
単元で学ぶ内容の概要と狙いを、わかりやすく説明します。
理科実験施設『サイエンスパーク』の設置など、以前から理数系教育に力を入れてきた同校。2022年度からは中学の数学科の授業で、個別最適化学習がスタートしました。中1での取り組みをレポートします。
生徒一人ひとりに
合った学習を実施
十文字では2022年度より数学科の授業において、生徒の理解度や習得度に合わせて個別に学びを進めることができる同校独自の学習プログラム『J‐PALM』を、活用しています。デジタル教科書やデジタル問題集、学習動画などを組み合わせ、問題を解いてつまずいたら、小学校の単元までさかのぼって学習したり、習得の早い生徒は先取り学習をしたりと、生徒一人ひとりが最適化した学習が行える仕組みです。
「生徒がもっと数学を好きになるような授業を実現するために、一人ひとりの理解度に合った学習で確かな学力を身につけてほしいという思いから個別最適化学習を導入しました。
個別学習といっても、生徒がそれぞれ勝手に学習を進めるわけではありません。新しい単元を学ぶ時は教員がしっかりと説明し、そこから生徒それぞれが自由に個別学習を行います。その後に理解度を図るためのチェックテストを実施し、全員の理解が深まったところで、数学で学んだ知識を活かして物事を考える探究活動を行います。
こうした一斉授業、個別学習、チェックテスト、探究活動という4つのフェーズを、単元のボリュームに合わせて一学期につき1~2回の頻度で回していきます」(中1数学担当/星川 潤先生)
この4つのフェーズについて、より詳しくお話を伺いました。
Step 1一斉授業
新しい単元は一斉授業で学ぶ
取材日の中1の授業では、方程式の学習が行われていました。教員を中心とした一斉授業です。まずは教科書を読んで、全員で問題を解いてみます。
生徒が解き方と解答を発表すると、「この解き方は、比例を使って解いた例ですね。このやり方だと算数を使っても解けるから、今日は数学を使って解く方法を勉強しましょう」と、教員は生徒の答えを尊重したうえで、授業の狙いをしっかりと生徒たちに伝え、「x」を使って方程式を作る方法を解説していきます。生徒も次々と質問を投げかけたり、自分の意見を述べたりしています。
「『何を学ぶのか』『何のために学ぶのか』を明確に伝えることで、目的がはっきりして、生徒から“やらされている感”がなくなり、モチベーションも高まります」(星川先生)
希望を加味した習熟度別にクラス分けをしているので、数学が苦手な生徒たちも少人数制の授業で理解を深められます。「先生に質問しやすい雰囲気です」と生徒たちが話すように、授業中の発言も活発です。教員も最後の1人がわかるまで、じっくりと時間をとって解説することができます。
Step 2個別最適化学習
個々が主体的に学ぶ『J-PALMタイム』
教員の一斉授業の後は、タブレット端末を使った個別最適化学習のプラットフォーム『Libry』を活用した『J-PALMタイム』になります。
まずは、学習シートで単元の目標を確認し、個々に学習計画を立てます。その後、動画教材を使ってじっくり1人で問題を解く生徒もいれば、友達同士で机を合わせて相談しながら進める生徒、教員を呼んで1対1で質問する生徒、教員を囲んで輪になってグループで教えてもらう生徒など、学習方法はさまざまです。
「中1では、習熟度別にクラス分けをしていますが、一番上のクラスでは、興味が広がり、次の単元や高校分野へと学びを進める生徒もいます。
クラス分けに関しては、生徒ごとに合った学習の進め方をしてほしいので、『どんどん先取りしたい』『じっくり学習したい』など、生徒の希望も加味しています」(星川先生)
それぞれが自分のペースで学ぶことができ、自分のやり方を決して否定されない点がポイントです。
Step 3理解度を確認
チェックテストなどで到達度を確認
『J-PALMタイム』の次の授業では、学んだ内容をチェックテストで確認します。
また、教員は個別最適化学習のプラットフォーム『Libry』を通して、生徒の学習状況をチェックし、解答状況や何につまずいたのかなどを把握して、適切なサポートを行います。
「生徒の自主性に任せつつ、生徒のちょっとした動きに敏感に反応し、すべての生徒からの『助けて』サインをキャッチすることを心がけています」(星川先生)
Step 4探究活動
学んだことを応用し、数学を“探究”する
単元を履修した後は、学んだことを用いて探究活動を行います。日常生活や学校行事など身近な事柄を題材にし、数学的なものの見方や考え方を学びます。グループワークを基本として、生徒同士の気づきの共有や発信力の向上をめざしています。
「『修学旅行に行く時の新幹線の座席を想定し、2席3席で知らない人の隣に座らない、1人にならないという条件を満たすことはできるか?』という問題について、生徒たちに解法を考えてもらいました」(星川先生)
同校は特に探究活動を大切にしており、1つの単元に必ず1回は探究活動を組み入れるようにしています。
「文系学部でも受験科目に数学の試験を課す大学が増加しているように、『文系志望だから、数学はやり過ごせばいい』という時代ではなくなりました。数学の学びを通して得られる思考力は、将来必ず必要とされます。数学の授業を、そうした力を伸ばす機会にしてほしいですね。学年が上がるにつれ自己調整学習力を高め、受験勉強を含めた、自身の夢を実現するための力を身につけてほしいです」(星川先生)
取り組みの狙い
目標は主体的な学習者を育てること
行事のなかで「生徒の主体性を育む」ことはよく行われていると思いますが、本校では『学びの中で主体性をもつ』ことも重視しています。まず、主体的な学習者として育ってほしいという願いがあり、その力をつける取り組みのひとつが、数学科の個別最適化学習と探究活動なのです。
自分のペースで学んでいくなかで、学ぶことの楽しさを知り、主体的に興味・関心を広げて、学びを深める力を養ってもらいたいと考えています。(中1数学担当/星川先生)
(この記事は『私立中高進学通信2022年12月号』に掲載しました。)
十文字中学校
〒170-0004 東京都豊島区北大塚1-10-33
TEL:03-3918-0511
進学通信掲載情報
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