私立中高進学通信
2022年12月号
授業ルポ!
富士見丘中学校
思考力を育みながら
STEAM能力を強化
理科
美術科
理科の実験を行う際には、必ず2時間連続で授業を行います。
1時間目に実験、2時間目に考察・発表・教科書学習という流れにすることで、自分で思考し、答えを導き出す力を高めます。
定評のある英語教育に加え、全教科でICTを活用し、STEAM教育を強化している富士見丘。毎週実験を行っている理科の授業と、アクティブラーニングを取り入れた美術科の授業に密着しました。
毎週行う実験で、理科への
興味・関心を引き出す
SGH(※1)指定校としての5年間を経て、WWL(※2)指定校として先進的なグローバル教育を行っている富士見丘。理系人材の育成強化と、生徒たちが将来的に立ち向かう未知の問題を解決するうえで必要になる思考力や判断力、創造力の養成を目的に、STEAM(※3)教育にも力を入れています。
「理科や数学の授業を充実させるとともに、美術科の授業でもアクティブラーニングを取り入れ、多角的なアプローチで柔軟な思考力と大胆な発想力を高めています。いずれの教科でもICTを活用し、思考力や表現力を育む21世紀型のカリキュラムを実践しています」(副教頭/佐藤一成先生)
同校の理科の授業は、毎週実験を行うことが特徴です。まず仮説・予想を立て、実験を行い、考察し、発表する。教科書で学ぶのはそれからという、通常とは異なる流れで進行する点もユニークです。
「知識ありきの実験ではなく、自分で思考し、答えを導き出すことを重視しています。実験をした学習内容はテストの点数が格段に高くなるなど、理解の定着に役立っていると感じます。
実験の際は、その後の発表や資料作成に使えるよう、タブレット端末で実験の様子を撮影しています。後期からは、パワーポイントを用いた資料づくりも行う予定です。
最初の授業で『理科は苦手』と言っていた生徒も、実験には楽しそうに取り組んでいます。まずは理科を好きになってほしいので、中学では、身近なテーマと関連付けた実験で興味の芽を育て、高校では、大学での研究・レポート作成の基礎的な技術や知識を養成する選択授業を用意し、世界で活躍できる研究者の育成をめざしていきます」(理科/林瞳美先生)
※1 SGH…Super Global High Schoolの略称。文部科学省がグローバルな社会課題を発見・解決できる人材、グローバルなビジネスで活躍できる人材の育成に取り組む高等学校を指定する制度。
※2 WWL…World Wide Learningの略称。これまでのスーパーグローバルハイスクール事業の実績や教育資源を活用し、国内外の大学、企業、国際機関等が協働して高校生国際会議の開催など高度な学びを提供するネットワークの形成をめざす取り組み。
※3 STEAM…Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学・ものづくり)、Art(芸術・リベラルアーツ)、Mathematics(数学)の5つの領域を対象に、理数教育に創造性教育を加えた教育理念。分野横断的な学びで探究力と創造力を育成し、未知の問題を解決できる人材を育てる。
自分との対話を深め
表現力を養う美術科の授業
美術科の授業でも、グローバル社会に必要な素養を意識した指導が実践されています。武蔵野美術大学と連携して美術展を行うなど、外部との交流も盛んです。
「これからの社会を生きていく力を養うために、自分自身と対話し、考えを明確化すること、言葉で表現することを大切にしています。自分の内面に目を向けて、得意分野や好きなことを発見してもらうと同時に、自分の考えを論理的に人に伝える力も育てていきます」(美術科/岡崎紀子先生)
美術科の授業では毎回、自分の手のデッサンを行っています。
「“継続すれば上達できる”という成功体験を得てもらおうと、毎回行っています。粘り強く取り組む力、集中力を高める習慣付けを行うことが狙いです。これは美術科以外の学習でも役立つ力です。
授業では、コツをつかめば絵は上達していくこと、ヘタウマな絵も観る人をハッピーにできることなど、人生を豊かにしてくれる美術の本質をしっかり伝えています。誰かのために役立つデザインを創造する力が必要とされるこれからの時代。今ないものを新しく考えられる創造力・空想力を育んでいきたいですね」
こうした授業を経験することで、学外のプログラミングコンテスト、デザインコンテストなどに挑戦する生徒が増え、そうした経験をもとに難関大学の総合型選抜入試で合格する生徒が増加中です。学びの深まりとともに、今後のさらなる躍進に注目が集まっています。
毎週の実験で科学的な探究力がアップ!
理科
小麦粉と水を使って
火山の形成について考察
取材当日は、中1の理科の授業で、「マグマのどのような性質が火山の形に関係しているのか」を調べる実験が行われていました。
実験内容は、小麦粉と水を異なる配合で混ぜ合わせて粘度の違う2つの物質を作り、それぞれをビニール袋に入れ、中央に穴をあけた紙皿にセットし、ゆっくり押し出して様子を観察するというもの。各自で仮説・予想を立てた後、3人グループで実験を行いました。
「小麦粉がサラサラしているほうが平らになる」「粘度が高いと隆起する」という結果が判明し、その結果をもとに考察して「マグマの粘度の高さに比例して高い火山を形成する」との結論を導き出しました。
実験後は、経過と考察、結論を文章化して、グループごとに発表を行いました。
実験の効果大!
深く学べて記憶に残る
理科の実験は、毎回とても楽しいです。実験をしてすぐに検証することで、なんとなく知っていた知識をより深く理解することができますし、教科書を読むだけの学習に比べて、興味が高まって記憶にも残ります。(Nさん/中1)
思考力と創造力を結び付けて表現
美術科
自画像のデッサンを通して
自分と向き合い表現力を磨く
今回は、恒例の手のデッサンに続いて自画像に取り組みました。
「どんな自分を表現したい?」「なぜその表情にしたの?」という先生からの問いに、生徒は自身との対話を試みながら、自分の顔をタブレット端末で撮影し、表現したい自分を突き詰めます。デッサン画が完成すると、数名の生徒が全員の前で作品の説明を行います。
「発表しない生徒も、その作品で表現したいことを文章化する作業を毎回行います。書くことで自分の考えが明確になり、伝える力へとつながります」(岡崎先生)
自分を描くことで
“自分らしさ”を探究
自画像をデッサンする時は、「自分らしい表情」とは何かを考えて、納得いくまで何度もタブレット端末で自撮りしました。タブレット端末は撮影した画像の細かい部分を拡大して見たり、題材の情報を調べたりするなど、美術科の授業でも大いに活用しています。(Kさん/中1)
(この記事は『私立中高進学通信2022年12月号』に掲載しました。)
富士見丘中学校
〒151-0073 東京都渋谷区笹塚3-19-9
TEL:03-3376-1481
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