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私立中高進学通信

2022年12月号

授業ルポ!

玉川学園中学部

サンゴの養殖と
海への移植に成功

『自由研究』から発展
「サンゴ研究」
沖縄・伊江島の海の岩場に、水中ボンドでサンゴの苗を固定します。校内の水槽で育てた約50株を移植しました。

沖縄・伊江島の海の岩場に、水中ボンドでサンゴの苗を固定します。
校内の水槽で育てた約50株を移植しました。

自発的に自分の研究テーマに取り組む探究型学習の授業「自由研究」。10年前にサンゴをテーマにした生徒たちの研究は、今では沖縄・伊江島のサンゴを校内の水槽で養殖し、自分たちの手で伊江島の海に戻すところまで発展しています。

創立以来の自学自律の伝統を
受け継ぐ『自由研究』

 全人教育を第一の教育信条に掲げ、創立以来、自学自律の教育を実践している玉川学園。『自由研究』は、その理念を具現化する取り組みです。 “自由研究”という言葉は、今では一般名詞として使われていますが、同校では1929(昭和4)年の創立以来の伝統として戦前から行われており、現在の自由研究、また「総合的な学習の時間」、探究活動の源流とも言えるものです。

 その特徴は「本物に触れる」ことと、生徒の個性を最大限に尊重する点にあります。中高6年間を通して『自由研究』は必修科目としてカリキュラムに位置付けられており、各自が主体的、創造的な学習に取り組みます。

 まず中1・中2では、興味・関心を伸ばす教科発展型の『自由研究』に取り組みます。主要教科や体育科、音楽科などの実技教科をベースに書道、英語表現、天文、園芸、体操、手芸、作曲、写真など、取り組みたい内容を生徒が選び、体験を中心とする研究を行い、年度末の「玉川学園展」に向けて作品やレポートを作成し、口頭発表を行います。

 中3の『自由研究』は「学びの技」と題して、問いの立て方や、情報収集・選択の方法、論理的にまとめるスキル、発表や論文の作成方法、そして評価や振り返りまでの探究のプロセスなど、高校での『自由研究』を充実させるためのスキルを身につけます。じっくりと学び、好きなテーマを探究し、一歩進んだ「深い学び」へと発展させていきます。

 そして、高1から高3までは、課題研究型の『自由研究』に取り組みます。1つのテーマを3年間追い続ける本格的なもので、自ら研究計画を立て、調査や実験、取材、制作などに取り組みます。最終的に提出する論文はどの生徒も1万字以上だといいます。大学で学びたいことや、生涯の夢につながる生徒もいて、進路選択の原点にもなり得るものです。コロナ禍で校外での活動が制限されていた期間も、生徒たちはオンラインで外部とつながり、校内での実験や観察など、可能な限りの方法でテーマを深めています。

一人の生徒の研究が
サンゴ保全活動に発展
多くの人の支援で成功した沖縄の海へのサンゴの移植。忘れられない夏になりました。多くの人の支援で成功した沖縄の海へのサンゴの移植。忘れられない夏になりました。

 理科の授業で海の環境に興味をもった生徒が、「海についてもっと知りたい」と声を上げたことがきっかけで、2011年にサンゴの『自由研究』が始まりました。調べてみると、地球温暖化による海水の高温化でサンゴの白化現象が進んでおり、このままではサンゴが死滅する恐れがあることがわかりました。

 校内で調べ学習をし、サンゴを養殖している石垣島へ見学に行くなどの活動をしていくうち、「水槽でもサンゴは育つ」という話を聞き、校内に水槽を導入。サンゴの飼育に本格的に取り組み始めました。何人もの生徒が『自由研究』のテーマに選び、『自由研究』の時間以外にもかかわりたい、とクラブ活動「サンゴ研究部」へと発展していきました。

 サンゴ研究部は現在、中高合わせて45名ほどが在籍。沖縄県「伊江島海の会」と連携し、サンゴ養殖プロジェクトを5年計画で展開中。2022年7月には、校内の水槽で育てた伊江島のサンゴを生徒自らの手で現地の海へ戻すことに成功しました。

 今後は養殖と移植のサイクルをうまく回していけるかが、研究の焦点となります。生徒たちはそれぞれが課題をもって日々、サンゴの研究・飼育に取り組んでいます。

日本サンゴ礁学会での発表も経験
産学連携で学園内に大型水槽を設置

 2011年にある生徒の『自由研究』から始まった「サンゴ研究」。2018年の「国際サンゴ礁年」をきっかけに、企業と産学連携協定を締結し、サンゴ飼育の水槽が充実しました。サンゴ研究部の生徒たちは日々、水槽の管理や、サンゴの世話をしています。

 2021年からは沖縄県・伊江島海の会との連携プロジェクトをスタートさせ、サンゴ礁復活に取り組んでいます。伊江島の海のサンゴを学校に送ってもらい、それを養殖して海に還し、生育状況をモニタリングするのが当面の研究テーマです。伊江島の中学生とのオンライン交流も行う予定です。

 生徒各自が『自由研究』として取り組むほか、日本サンゴ礁学会でポスター発表するなど、積極的に外部へ発信しています。中高生が本格的に養殖を始めたことは注目を集めており、それがサンゴ保全の必要性を多くの人に知ってもらうチャンスになればと考えています。

学園内の理科教育専用校舎「サイテックセンター」の「夢工房」に設置してあるサンゴ養殖用の水槽。学園内の理科教育専用校舎「サイテックセンター」の「夢工房」に設置してあるサンゴ養殖用の水槽。
大学や企業の協力も得て本格的な設備を備えています。大学や企業の協力も得て本格的な設備を備えています。
サンゴは水温や塩分濃度をしっかり管理しないと育ちません。サンゴは水温や塩分濃度をしっかり管理しないと育ちません。
試行錯誤の繰り返しで研究を深める
安定したサンゴ養殖が当面のテーマ
サンゴを手入れする生徒たち。サンゴは少しの環境の変化で成育が悪くなってしまうので、水槽に手を入れる際にも気を配っています。サンゴを手入れする生徒たち。サンゴは少しの環境の変化で成育が悪くなってしまうので、水槽に手を入れる際にも気を配っています。

 サンゴを水槽で育てるには、株を切り分けて小分けにし、台座に接着して水槽に入れます。サンゴの根がしっかり成長すると、水槽内で育てた後、海へ移植しても生きられるといいます。

 2022年1月に、海への移植が成功したのは、前年の9月に沖縄・伊江島から空輸されたサンゴを同校の水槽内で育てたものです。すべての生育が成功したわけではなく、白化現象が進んで悪化したものもあるそうです。

 これまで現地の人や、専門家のアドバイスを受けながら試行錯誤を繰り返してきた生徒たち。どのような条件やタイミングであれば、安定的に移植ができるのか。研究はまだまだ続きます。

大学生と協働するチャンス
大学の「サンゴ研究」を見学・体験

 静岡県・沼津沖はサンゴ生息の北限と言われています。東海大学海洋学部の協力を得て、年に1回、沼津沖を訪れてサンゴ研究の一端を見学しています。

 サンゴの生態を学ぶほか、観察のためにシュノーケリングの練習も行います。

 学外での活動によって、多様な人々と触れ合う生徒たち。年齢も立場も超えてサンゴについて語り合い、考える体験は、生徒たちの自信の源となり、将来を拓く礎の一つとなるでしょう。

沼津市での研修の様子。シュノーケリングの練習もします。沼津市での研修の様子。シュノーケリングの練習もします。
学園を飛び出し、さまざまな人とのかかわりのなかで、貴重な体験を積んでいます。学園を飛び出し、さまざまな人とのかかわりのなかで、貴重な体験を積んでいます。

取り組みの狙い
自然や環境だけでなく
そこに関わる人、社会も考える

 サンゴ研究を通して、生徒は自然や環境といった側面だけでなく、そこに住む人たちの考えや立場、暮らし、またサンゴ研究の専門家とかかわり、社会的な側面からも学びを深めていきます。さまざまな現実に直面して葛藤や悩みも生まれます。生徒にはいろいろな材料を吸収し、ものの見方や考え方を身につけて世界を広げ、生き方に役立ててほしいと考えています。(サンゴ研究部顧問・社会科/市川信先生)

(この記事は『私立中高進学通信2022年12月号』に掲載しました。)

玉川学園中学部  

〒194-8610 東京都町田市玉川学園6-1-1
TEL:042-739-8931

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