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私立中高進学通信

2022年12月号

授業ルポ!

日本大学豊山女子中学校

世界に羽ばたく
女性研究者の育成

理数Sクラス
課題研究
「高校生理科研究発表会」を翌週に控え、高2の化学班の生徒たちは『課題研究』の授業内でプレゼンテーションを練習していました。本番では時間制限があるため、正確に計り、質疑応答の受け答えまでしっかりと行います。

「高校生理科研究発表会」を翌週に控え、
高2の化学班の生徒たちは『課題研究』の授業内でプレゼンテーションを練習していました。
本番では時間制限があるため、正確に計り、質疑応答の受け答えまでしっかりと行います。

1971(昭和46)年より理数科を設置し、医療や研究の第一線で活躍する卒業生を輩出してきた同校。大学と連携したハイレベルな研究、学術英語の授業など、世界で通用する研究者を育てる高校「理数Sクラス」の魅力に迫ります。

理系人材の育成に特化した
高校の『理数Sクラス』
高2理数Sクラス担任・理科(化学)/齋藤絢子先生高2理数Sクラス担任・理科(化学)/齋藤絢子先生

『興味から意欲へ~中高を通じた女子への理数教育論の開発~』をスローガンに掲げる日本大学豊山女子では、科学的倫理観を有する女性研究者の育成に力を注いでいます。その一端を担うのが、高校『理数Sクラス』の『課題研究』。日本大学理工系学部・教授陣の協力のもと、高水準の研究・実験を行う、同校が誇る独自の取り組みの一つです。

「高校レベルを超えた内容を扱うこともあります。本格的な研究・実験の経験が積めるため、大学進学後に大きなアドバンテージがあります」(高2理数Sクラス担任・理科(化学)/齋藤絢子先生)

 2017年からは、課題研究と関連のある英語論文の読解や執筆、英語でプレゼンする力を養う『学術英語』の科目が設けられました。

「理系大学では、英語論文の読解は必須です。英語で論文を書き、発表するスキルは、研究者として世界に発信するためには欠かせません」(英語科主任/杉田竜之介先生)

理系ネイティブ教員が
専門的な指導を行う『学術英語』
英語科主任/杉田竜之介先生英語科主任/杉田竜之介先生

『理数Sクラス』を対象としたこれらのカリキュラムは、毎週土曜日の午前中に行われます。1時限目は『学術英語』の授業。理系大学出身のネイティブ教員と日本人英語教員が2名体制で指導します。高1では、理系科目を英語で学びながら、毎回、生徒一人ひとりが英語で発表する場を設け、少しずつ難易度を上げながら、高度な英語の表現力を育成していきます。

「高2になると、英語でプレゼン資料を作成して発表することを繰り返します。高3では、英語論文作成の仕上げに入り、学術的な表現や論文特有の書き方などを徹底的に指導します。『学術英語』の授業のおかげで、物おじせずに英語で発表する力、研究者として世界に発信していく意識が生徒たちに根付いているのを感じます」(杉田先生)

大学との連携でハイレベルな
実験・研究を行う『課題研究』
高1理数Sクラス担任・理科(生物)/伊原佳子先生高1理数Sクラス担任・理科(生物)/伊原佳子先生

 土曜日の2・3時限目は『課題研究』の授業です。生徒たちは物理・化学・生物・数学の4つの班に分かれ、そのなかで3~4名がグループワークで、一つのテーマに沿って研究を深めていきます。高1の2学期にテーマ決めを行い、高3の1学期まで研究活動を進め、その内容を日本語と英語の論文にまとめます。

「研究内容が大学の学部選びなどの進路につながる生徒は少なくありません。そのため、テーマ選びは非常に重要です。テーマ選びの一助となるよう、高1の1学期には、日本大学の教授陣や理系分野のスペシャリストを招いて特別講座を開催しています」(高1理数Sクラス担任・理科(生物)/伊原佳子先生)

 生徒たちの選んだテーマは、「パラボラアンテナの性質と二次曲線」(数学)、「強度の高いトラス橋の構造」(物理)、「抗菌効果のあるリップクリームを作る」(化学)など多岐にわたります。生徒はそれらのテーマに沿って「仮説→実験→検証→考察→発展」を繰り返していきます。

「高2の夏には『課題研究発表会』を行います。2022年度は日本大学の教授から事前にアドバイスをもらい、発表当日にも教授の方々を招いて講評およびアドバイスをいただきました。大学教授の直接指導が、生徒のモチベーションアップと成長にもつながっています」(伊原先生)

 こうした経験を積んで自信をつけた生徒たちは、学外の発表の場への参加意欲を高め、2022年9月には、高2『理数Sクラス』の生徒が「第16回高校生理科研究発表会」に参加し、化学班が奨励賞を受賞しました。

「学外で発表し、他校の研究やプレゼン手法を知ることで、生徒は “研究者”としての視点がさらに養われ、人間的にも成長します。今後はさらに外部での発信の機会を増やしたいと考えています」(齋藤先生)

 かつては『理数Sクラス』の生徒の大半が、日本大学の各理系学部へと進学していましたが、近年では他大学の理工系学部に進む生徒も増加しています。

「『課題研究』で身につけた力は、多様化が進む大学入試でも有効なものとなるはずです。理系大学をめざす生徒にもぜひ入学してもらいたいですね」(齋藤先生)

英語で論文を書く力をつける
学術英語

 理系大学出身のネイティブ教員が、理科教育をベースとした的確な英語指導を実施。論文特有の英語表現を学びながら、英語の論文を読み、書き、発表する力を養います。

実験と考察を繰り返して研究を深める
課題研究(化学)

 高1と高2が同じ実験室で研究を進めるため、発表や実験手法を身近に学べる環境です。高2生からアドバイスをもらって研究をブラッシュアップすることも!

生物の謎に迫り解明する
課題研究(生物)

 高2の生物班は、先輩がテーマにしていたプラナリアの研究を受け継ぎ、その研究をさまざまな方向に展開しています。

さまざまな手法で方程式と解を導く
課題研究(数学)

『高校生理科研究発表会』を翌週に控え、中華鍋をパラボラアンテナに見立て、「パラボラアンテナの性質と二次曲線」をプレゼンする高2の数学班。

物理法則を応用する力を磨く
課題研究(物理)

「強度の高いトラス橋の構造」をテーマに橋の構造を文献で調べ、議論を重ねてきた高2の物理班。最強度のパスタブリッジをめざしてこれまで作った橋は約40基!

生徒インタビュー
『理数Sクラス』で学びたくて
豊山女子を選びました!
『理数Sクラス』をめざして中学から同校に入学した3名にお話を聞きました。

『理数Sクラス』をめざして中学から同校に入学した3名にお話を聞きました。

理系探究・研究に惹かれて本校を志望

 小学生の頃から理系を志望していたので、中学に数学と理科の探究授業があり、高校では『理数Sクラス』を選択できる本校を選び、中学から入学しました。『課題研究』では、廃棄される野菜を使った体に優しい石鹸作りをテーマに研究しています。『課題研究』は自分たちで自由に研究でき、発表の場もたくさんあるので、これからが楽しみです。(高1・化学班/Tさん/写真左)


苦手な数学を克服したくて数学の研究にトライ

『課題研究』では自分がやりたいことを追求できるので、苦手を克服しようと思い、数学班を選びました。研究を通じて生活のさまざまな場に数学が活かされていることが見えてきて、学ぶのが楽しくなり、今では数学が好きになりました。父が歯科医なので、将来の夢は医者になることです。(高2・数学班/Mさん/写真中央)


将来の夢に直結した研究に没頭

 入学前の学校見学の時、白衣を着て『課題研究』の実験をしている先輩の姿に憧れを抱き、本校に入学しました。将来は建築関係に進みたいので、『課題研究』では物理を選んで「強度の高いトラス橋の構造」をテーマに研究しています。将来の夢に直結している研究なので、とても楽しいです。(高2・物理班/Sさん/写真右)

進学通信 2022年12月号
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