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私立中高進学通信

2022年12月号

授業ルポ!

芝浦工業大学附属中学校

ホンモノのSTEAM教育を
中学から

SHIBAURA探究

中2の『データサイエンス』の授業の様子。
通常の授業でも、マイクやスライドを使うプレゼンの機会を多く設けています。
「SHIBAURA探究」の取り組みは外部でも高く評価されており、
2021年度第9回イノベーション教育学会年次大会にて学会優秀賞を受賞。
『IT』では私立大学附属・併設中学校・高等学校(附属校サミット)の研究発表校に、
『GC』ではパナソニック教育財団の特別研究指定校にも認定されています。

誰かのための「新しい」を創る能力を養う『IT』と、多様性を理解して世界で活躍する力を育成する『GC』。理工系のスペシャリストを育てる同校の2つの探究活動『SHIBAURA探究』をレポートします。

知識・技術を習得して
新たな価値を見い出す探究活動
探究IT担当・数学科主任/横山浩司先生探究IT担当・数学科主任/横山浩司先生

 2021年4月より共学化した芝浦工業大学附属は、共学化と同時に、同校だからこそ実現できるホンモノのSTEAM教育の実践を目的に、生徒の主体性を重視した探究型カリキュラム『SHIBAURA探究』をスタートさせました。ロボット製作やプログラミングなど、IT技術を学び、論理的思考力を育む『IT』(Information Technology)と、多彩なプロジェクト型の探究活動を
行う『GC』(Global Communica-tion)という2つの科目を設定。グローバル社会で活躍できるエンジニアの育成をめざし、文理の枠を超えて中1から本格的な理工系教育やPBL(※)を行っています。

 今回取材したのは、中2『IT』のカリキュラムの一つである『データサイエンス』の授業です。授業を行う探究IT担当・数学科の横山浩司先生はこう述べました。

「1人の人が街を歩いていて、目の前の電光掲示板に、その人が興味をもつ商品のコマーシャルがAIによって流される。そんな未来が将来到来するかもしれません。なぜ、その人が興味を惹かれる商品がわかるのか。それはその人が過去に検索したデータが蓄積されているからです。これからますます、こうしたビッグデータが重要視されてきます」

『データサイエンス』では、ビッグデータや統計学、プログラミングなどの理論を応用して、膨大なデータから価値ある情報を導き出し、課題を解決する手法を学びます。

 1学期にはその前段階として『データ解析』を学びました。同校では多くの大手企業が市場調査・分析のために情報収集で活用している検索エンジン『Astrategy』(エーストラテジー)を導入。キーワードを入れると、関連する世界中の記事を日本語で読むことができ、さまざまな市場データを把握できます。

 取材当日の授業では、「東京のテクノロジーと生活」をテーマに疑問などをワークシートに記し、さまざまなデータを調べ、問いを立てていました。問いを書き終えた男子生徒が、次のように発表しました。

「僕は日本人の給料がどんどん下がっていることに疑問を抱きました。そこで、日本人の最低賃金の推移や外国との差といったデータを集めました。それを参考にして解決をめざすために『世界に通じるテクノロジーを他国にセールスし、賃金を全体的に上げることができないだろうか』という問いを立てました」

 横山先生に、この授業の狙いについてお話を聞きました。

「生徒たちは中1の『IT』や『GC』の授業ですでに問いの立て方を学んでいますが、『データサイエンス』の授業では、データという根拠をつけて問いを立てられるようにすること、そして、データを根拠とする有用性や価値、強みを知り、今後、データ分析について学ぶ意欲をさらに高めることを狙いとします」

※PBL…「Project Based Learning」の略。生徒自らが課題を発見し、解決する能力を養う教育方法。正解のない課題について考え、調べ、議論する過程を重要視し、思考力や協働する力も育成する。

社会問題の解決に
リアルにチャレンジできる
探究IT担当・英語科主任/袖山駿先生探究IT担当・英語科主任/袖山駿先生

 3学期の『IT』の授業では、東京およびその周辺で地下鉄を運営する東京メトロの課題解決に挑みます。この取り組みでは、探究IT担当・英語科主任の袖山駿先生がファシリテーターを務めます。

「来校した東京メトロの各担当部署の方々から、いくつかの課題を生徒たちにご提示いただきました。これまで学んできた『データサイエンス』や『データ解析』の技術や知識を活用しながら、解決策をグループワークで探っていきます」(袖山先生)

 社会と結びついた探究活動は、『SHIBAURA探究』の特徴の一つです。理工系の知識で実際の社会課題を解決する体験は、この先にある生徒たちの進路選択にも大きな影響を与えるはずです。

 横山先生や袖山先生をはじめ『IT』を担当する教員は、担当教科に関係なく理工系教育の研修や学会に参加するなど、日々研鑽を積み、現実社会とつながりをもった授業を常に行っています。こうした姿勢は「探究を教える教員は、常に探究者であり続けねばならない」という同校の「STEAM教育」の理念に基づいており、常に最先端の情報や学び方を生徒に提供し続けているのです。

ITスキルを身につけ論理的思考を育成
『IT』(Information Technology)
意見交換をしながら、官民のビッグデータを集約したデータ検索サイト「Resas」などを活用してデータ調べ。疑問点を調べるなかで、探究テーマを見いだしていきます。意見交換をしながら、官民のビッグデータを集約したデータ検索サイト「Resas」などを活用してデータ調べ。疑問点を調べるなかで、探究テーマを見いだしていきます。
袖山先生(写真右)もファシリテーターとして『データサイエンス』の授業を指導。情報収集に関してアドバイスをするなど、きめ細かにサポートしています。袖山先生(写真右)もファシリテーターとして『データサイエンス』の授業を指導。情報収集に関してアドバイスをするなど、きめ細かにサポートしています。
グローバルな視点でPBLに取り組む
『GC』(Global Communication)
探究のフィールドを学校周辺から
地域、さらには世界へと広げていく

『IT』と並ぶ探究型授業『GC』では、多様性と国際性を身につけるための学びを進めています。中1では『湾岸TOYOSU&TOKYOプロジェクト』として、同校のある湾岸エリアを調査して豊洲解剖図鑑を制作。中2では『NAGANO&JAPANプロジェクト』として農村体験を通して日本の社会課題を調査し、解決策を考えます。中3では『世界USA&WORLDプロジェクト』として、海外に教育旅行を予定。現地を調査して、課題を発見し、解決に向けた提案を行います。こうして身の回りから世界へと段階的にフィールドを広げていくのです。それと同時に言語力と発信力も育んでいきます。

 また『IT』と『GC』で身につけた技術や思考法、表現力は、中3の理工系の知識で社会課題を解決する『総合探究』につながります。ほかにも希望者対象の『SHIBAURA探究旅行』も用意され、新潟県燕三条市の方々と連携した2泊3日のPBLを実施したり、信濃川大河津分水を見学したりします。

『SHIBAURA探究旅行』では、燕三条市にある金属加工の工場を訪問。働く方々と対話をしながら、現場の課題を知り、その解決に向けて考察を巡らせます。『SHIBAURA探究旅行』では、燕三条市にある金属加工の工場を訪問。働く方々と対話をしながら、現場の課題を知り、その解決に向けて考察を巡らせます。
中2の探究旅行は、3泊4日の長野農村合宿。新しい農業についても学びました。中2の探究旅行は、3泊4日の長野農村合宿。新しい農業についても学びました。
中1の『湾岸TOYOSU&TOKYOプロジェクト』では、豊洲の街を散策するほか、企業訪問や水陸両用バス「スカイダック」で湾岸エリアの視察体験も。興味を広げて探究します。中1の『湾岸TOYOSU&TOKYOプロジェクト』では、豊洲の街を散策するほか、企業訪問や水陸両用バス「スカイダック」で湾岸エリアの視察体験も。興味を広げて探究します。
コンピューター言語を早期から学ぶ
プログラミング教育
社会との接点を常に意識し、スキルと問題解決能力を鍛える
技術科/岩田亮先生技術科/岩田亮先生

 同校では、中学からコンピューター言語を学んでいます。中1では、ゲーム感覚で操作できるScratchでドローンをプログラミングして実際に飛ばす授業を行い、中2・中3の『技術科』の授業では、プログラミング言語のRubyを学び、マイコンのArduinoを使ってロボットを自律走行させるプログラミング制御技術を学習します。高校からは世界のエンジニアたちが使用しているC言語を基本文法から学び、ソフトウェアの開発を学びます。

 同校のプログラミング教育を統括するのは、現在も研究者として論文を発表し、外部企業との共同研究も行う技術科の岩田亮先生です。

「授業で生徒たちを指導するのは、大手企業でプログラマーとして設計や開発に携わっていた教員たちです。情報科だけで教員は4名おり、システムエンジニアも常駐しています。
 中・高ともに情報科の授業では、ただ技術を学ぶのではなく、“自分たちが学んでいることは、社会でどのように活かすことができるのか”という視点を常に養い、問題発見能力や問題解決能力を鍛えています。技術と同時に思考力や多様な視点を養える点が、本校のSTEAM教育の強みといえます」(岩田先生)

コンピューター室では高1の生徒たちがC言語の基本文法を学習中。意見を交わしながら演習問題を解いていました。コンピューター室では高1の生徒たちがC言語の基本文法を学習中。意見を交わしながら演習問題を解いていました。
3名の教員がサポートに入り、疑問点をていねいに解説。教えるのは、プログラミングの現場を知り尽くしたエキスパートばかり。3名の教員がサポートに入り、疑問点をていねいに解説。教えるのは、プログラミングの現場を知り尽くしたエキスパートばかり。

進学通信 2022年12月号
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