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私立中高進学通信

2022年12月号

授業ルポ!

日出学園中学校

体験によって
高める“創る力”

情報科
技術科
高1の情報科の授業の様子。 「理想の一人暮らし」をイメージして作成したシミュレーション案をプレゼンし合い、活発に議論を重ねる生徒たち。学び合う校風が思考力や課題解決力をさらに高めています。

高1の情報科の授業の様子。
「理想の一人暮らし」をイメージして作成したシミュレーション案をプレゼンし合い、
活発に議論を重ねる生徒たち。
学び合う校風が思考力や課題解決力をさらに高めています。

芸術科・技術科・家庭科・情報科・総合探究科の5科で構成される『STEAM科』にて、分野横断型のSTEAM教育を推し進める同校。新しい大学入試にも対応する高校の情報科と、しっかりと手を動かしてものづくりの基礎を学ぶ中学の技術科の授業をレポートします。

情報の扱い方を学ぶ
高校・情報科の授業
技術科の山本俊一先生(左)と、情報科の武善紀之先生(右)。技術室は生徒が安全に、使いやすいよう作業台や棚、プロジェクターの設置場所も工夫がされています。技術科の山本俊一先生(左)と、情報科の武善紀之先生(右)。技術室は生徒が安全に、使いやすいよう作業台や棚、プロジェクターの設置場所も工夫がされています。

『誠・明・和』の校訓のもと、確かな学力と豊かな心と大きな夢を育む6年一貫教育を行う日出学園。さまざまな教科を横断しながら学ぶ、STEAM教育に力を入れています。同校では中学の技術科や高校の情報科を「STEAM」の科学(Science)や工学(Engineering)として位置づけています。この2つの教科はテクノロジーを活用して、何かを加工し新たなものを創り出す点ではよく似ています。

 情報科は、新学習指導要領において「情報Ⅰ」の科目が必履修となり、2024年度の大学入学共通テストにも新教科として追加されました。同校では、すでにその新たなカリキュラム内容を、高2の情報科で実践しています。子どもの時からインターネットやスマートフォンを当たり前のように使ってきている生徒たちに、課題の制作を通して「情報の扱い方」をじっくりと考え、学ぶ時間をもってほしいとの思いからです。情報科の授業では、「プログラミング」のほか、「情報デザイン」や「データサイエンス」も学びます。

 取材した日、高2の情報科の授業では、武善紀之先生によるモデル化とシミュレーションの授業が行われていました。モデル化とは対象を単純化し、実物を基にモデルを作ること、シミュレーションとは実際の問題を解決するためにモデルを使って実験することを指します。

 この授業では「家具配置シミュレーション」に取り組みました。単身者向けワンルームの洋室6帖に必要な家具や家電を合計12万円以内でそろえるのが条件です。実際の20分の1の縮尺にした間取り図を描き、選んだ家具が部屋の大きさに収まるかを確かめます。予算内に収まるかは通販サイトを参照して価格を合計し、Googleの描画アプリやスプレッドシートを使って考えていきます。モデル化とシミュレーションのメリットを、身近な例から体験的に考えるのが、授業の狙いです。

 生徒たちは、授業前の課題として作成してきた自分の「理想の一人暮らし」のシミュレーションをグループ内でプレゼンし、互いに意見を出し合いました。ある生徒は「読書が好きだから本棚を中心にした部屋にしました。でも目が疲れそうだから観葉植物を置いてあります」と話します。すると他のメンバーから「テレビは置かないの?」「食事はどこでするの?」など、質問が飛んできます。ドアや窓をふさがない快適な家具の配置、インテリアにこだわりつつ予算内に収まる説得力のある部屋が生徒間の評価で高得点を得ていました。

 担当の武善先生は、生徒が自分から取り組みたくなる授業づくりを得意としています。生徒も「友達にソファーベッドというものがあると教えてもらって、狭くても家具が配置できた」「決められた内容ではなく、自分の考えを自由に表現して発表するのは面白い」と、楽しく学べている様子を語ってくれました。

日常に使える「もの」を
作る経験を大切にしたい

 中2の技術科では、素材を加工して「ミニちりとり」つくりに励んでいました。亜鉛板を打ち木で軽く叩いて折り曲げ、持ち手を付けるための穴をドリルで開けていきます。穴を開けたあとはバリをきれいに取り除いて出来上がりです。

 作業工程を技術科の山本俊一先生が作った動画で確かめ、さらに山本先生が目の前で実演をします。その後は生徒それぞれが、自分の力で加工を進めていきます。

 亜鉛版をなかなか上手く曲げられず、穴を開けるところまでたどりつかない生徒もいます。「先生!」と方々から声がかかるたびに、山本先生は駆けつけて様子を確認します。「動画を何となく見ているだけでは手順があやふやになってしまうよ」と指摘しながら、生徒が一人でやり直せるところまで修正し、再びトライできるようサポートします。

 山本先生は公立中学での教員経験が長く、指導や教材づくりのベテランです。山本先生が技術科の授業で大事にしているのは「確実に製作するため失敗しない工夫をした指導をする」。生徒は日常生活のなかで工具を使う機会が少ないため、初めて経験する作業ばかりだといいます。ただ試行錯誤に任せるだけでは、日常生活で使える技術は高まりません。

「説明を聞いて理解したことと、実演を見て手を動かすことがイコールになるよう、オリジナルの教材や道具をそろえ、ものづくりのポイントを理解できるよう支援しています」

 ほかにも木工作品や、「光るフォトスタンド」を作って電気回路を学び、露地栽培や養液栽培にも取り組みます。

「形になって使えるものをつくる経験は大事です。中学の技術科で一度、ものづくりの楽しさを経験することで、ものづくりの発想力が育まれ、高校の情報科での学びもスムーズになると思います。デジタル技術の裏側にはそれを創り上げてきた “人”が存在していることが伝わるからだと思います」(山本先生)

身近な題材で、情報の活用法を習得
情報科 (高2)

Step 1
自分の端末で「理想の部屋」を構想する
授業は図書室内のワークスペースで実施。モデル化とシミュレーションを行うメリットとそこからわかることをしっかり講義で学びます。

 授業は図書室内のワークスペースで実施。モデル化とシミュレーションを行うメリットとそこからわかることをしっかり講義で学びます。


まずは1人1台のタブレット端末を用いて、事前に作成してきた「理想の一人暮らし」のシミュレーションを確認。頭をひねりながら予算や暮らし方を考えて、家具や家電を配置しました。

 まずは1人1台のタブレット端末を用いて、事前に作成してきた「理想の一人暮らし」のシミュレーションを確認。頭をひねりながら予算や暮らし方を考えて、家具や家電を配置しました。

Step 2
相互にプレゼンしてブラッシュアップ
グループワークでクラスメートからコメントをもらい、改善点を見つけます。個々に意外な着眼点があり、他者の視点で気づきを得られる瞬間です。

 グループワークでクラスメートからコメントをもらい、改善点を見つけます。個々に意外な着眼点があり、他者の視点で気づきを得られる瞬間です。


完成した「理想の一人暮らし」の部屋。それぞれの個性が出ています。楽しみながらシミュレーションの基礎を学ぶことができました。

 完成した「理想の一人暮らし」の部屋。それぞれの個性が出ています。楽しみながらシミュレーションの基礎を学ぶことができました。

手を動かしてものづくりの楽しさを体験
技術科 (中2)

Step 1
「ミニちりとり」で板金加工に挑戦
技術室の作業机の上で亜鉛板を叩いて折り曲げたあと、ていねいに重ねていきます。生徒たちの表情は真剣そのもの。

 技術室の作業机の上で亜鉛板を叩いて折り曲げたあと、ていねいに重ねていきます。生徒たちの表情は真剣そのもの。

Step 2
教材や工具を工夫し確実な完成へ導く
山本先生が、持ち手を付ける穴の部分に目安を付ける方法を実演。手元をよく見て学びます。

 山本先生が、持ち手を付ける穴の部分に目安を付ける方法を実演。手元をよく見て学びます。


ボール盤を使って穴をあける作業。ドキドキしながらも、ていねいに着実に機械を動かします。

 ボール盤を使って穴をあける作業。ドキドキしながらも、ていねいに着実に機械を動かします。


今日はここまで完成しました。

 今日はここまで完成しました。

(この記事は『私立中高進学通信2022年12月号』に掲載しました。)

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