私立中高進学通信
2022年12月号
授業ルポ!
浦和実業学園中学校
毎週、実験!
主体的な理科授業
4つの新実験室で理科教育を強化
2022年4月、新校舎新2号館に大学レベルの設備を備えた4つの実験室が誕生。実験を主軸とした「理科教育の強化」が始動しました。新しい理科実験室で行われる中1の「理科実験授業」をリポートします。
グローバル社会で活躍できる
理系人材を実験中心の授業で育成
英語イマージョン教育やハワイ短期留学など、充実した国際教育で知られる浦和実業学園は、これに加え理科教育の強化に取り組んでいます。
「グローバル人材と並び、現代社会では理系人材が必要とされています。その育成を両輪で推進し、グローバル社会で幅広く活躍できる生徒を育てます」(広報/小池克弥先生)
理科教員たちのアイデアを集結させ、新校舎に理科・物理・化学・生物の新しい4つの実験室が誕生しました。大小プロジェクターが完備され、部屋の組み換え可能な可動式の実験台やバイオクリーンベンチ、耐震台、ドラフト装置など、大学レベルの設備が備えられています。
「理科は実験が命。実験室を新設したことで、中学での実験回数はこれまでの倍以上に増やしました。失敗をしながら実験を繰り返すことで経験を積み、生徒たちは本物の知識を獲得していきます。
同時に大切にしているのが主体性の育成です。自分たちで計画立案から実験、検証、研究結果のプレゼンテーションまで完遂する力を育てたいと考えています。一つのプロジェクトをやり遂げる力は、ほかの教科にも応用できますし、社会のさまざまな分野で必要とされるスキルでもあります。実験の授業では、あえて細かな指示は出さず、教員はファシリテーターに徹しています」(中1担任 理科/手塚千幹先生)
同校の中1生は、毎週金曜日に座学で知識を得つつ実験の準備をして、翌日の土曜日午前の2時限を使って実験を行っています。生徒たちは、それぞれ金曜日の授業で実験結果の予想を立て、土曜日の実験を通してその結果を知識として吸収します。主体的な実験で得た知識は深く定着し、理科的に考える力も養っています。
中学生専用の「理科実験室」で
毎週行われる生徒主体の実験
取材した日は、「水溶液の性質~水溶液から物質を取り出そう~」をテーマに、塩化ナトリウムと硝酸カリウムをそれぞれ水に溶かして冷却し、その様子を観察・記録する実験を行っていました。
「水溶液から取り出した固形物を『結晶』といいますが、英語では何といいますか?『crystal』ですね」
授業を進める手塚先生は、英語イマージョン教育も取り入れながら、適宜プロジェクターに「ろ過のやり方」など参考動画を映し、実験方法と手順、注意点などを説明します。
「理系学部では英語論文の読解は欠かせません。日頃から英語の理系用語も教えるようにしています」
説明が終わると、生徒たちは3~4名ずつのグループに分かれ実験を開始します。全員が白衣を着て、ビーカーや試験管、顕微鏡やスタンド、ろ過装置などを用意。2本の試験管に水を入れ、それぞれに塩化ナトリウムと硝酸カリウムを加えて湯煎し、かき混ぜながら溶けるまでの時間経過と温度変化を観察します。
手塚先生は、実験台の間を回りながら「実験過程で感じたこと、発見したことも書き留めてください」「どうやって冷やすのがいい?」「水溶液が固まらない場合は、まずろ過してその後どうするんだった?」と、生徒が考え、行動するよう声かけをします。各実験台からは「なかなか溶けないから熱湯を足そう」「硝酸カリウムは固まってきたけど、塩化ナトリウムは固まらない。ろ過してみよう」など、生徒たちのにぎやかな声が聞こえてきます。自分たちなりの工夫をするのが同校ならではの実験スタイルです。
取り出した結晶物を顕微鏡で見た生徒からは「キラキラしている」「宝石みたい」とさらに歓声が。最後に手塚先生の提案で塩化アンモニウムの水溶液を80℃まで温めてしばらく待つと、雪のような結晶が現れました。市販の「スノードーム」のような美しさに生徒たちは大喜びでした。
「実験をたくさん積んだ経験が、その後のアカデミックな学びにつながります。生徒たちにはできるだけ多くの経験を積んでほしいですね。
中1の3学期には、生徒全員で実験動画の作成にトライします。また、中3では、選択制で卒業論文か卒業研究のいずれかを作成する計画も進めています」
Step 1画像や動画でわかりやすく解説
実験前には教員が画像や動画を使って実験の手順をわかりやすく解説し、主体的な実験へとつなげます。
Step 2湯煎した試験管を冷却して観察
2種類の水溶液を冷却した際の変化を熱心に観察する生徒たち。硝酸カリウムの水溶液を冷却すると次第に固形物が出現。「固まってきた!」「思ったより大きいね」と、興奮気味な生徒たちの声が聞こえてきます。
Step 3顕微鏡で結晶の特徴を掴む
冷却しても固まらなかった塩化ナトリウムを1滴、スライドガラスに乗せて蒸発させ、顕微鏡で結晶化していることを確認。物質によって結晶の大きさが異なることを体得しました。
Step 4「実験記録をこまめに取ること」を重視
「記録は実験の要」と手塚先生。「実験記録をこまめに取り、今日わかったこと・感じたこと」を大切にし、次の実験に活かします。iPadで実験を動画撮影するほか、顕微鏡にカメラ部を当てて撮影をしたり、手書きで真剣にメモを取ったりする生徒の姿もあちこちで見られました。
高度な設備を備えた個性的な実験室
中学生専用の「理科実験室」
中央前部にスペースを確保し、教員が全体を見渡しやすく、かつ実験用具を並べやすい造りに。生物実験室と理科実験室には最新の顕微鏡を40台ずつ完備。取り出しやすさを考慮した収納は理科教員のアイデアによるものです。
可動式実験台完備の「物理実験室」
物理の実験は距離を要することが多いため、実験台を可動式(写真)にすることで、つなげて遠距離の実験もできる造りです。
高度な装置を備えた「化学実験室」
危険な気体を処理できるドラフト装置(写真)や精密電子天秤を使用するための耐震台など、高度な設備を備えています。
250種類以上の動植物を管理する「生物実験室」
250種類以上の動植物を管理する生物実験室。無菌状態で作業ができる「バイオクリーンベンチ」も完備しています。
生徒インタビュー
自由に実験できるのが楽しいです
Nさん(中1)
理系の研究者だった祖父や曾祖父の影響で、理科や実験が大好きです。理科は自分で想像し、実際に手を動かして発見することが大切だと思います。自分でやってみることでもっと楽しくなり、興味も深まります。この学校では、設備が整った研究室で毎週のように実験ができ、生徒主体で自由に進められるのでとても満足しています。
将来の夢は古生物学者。そのため生物部に入っていますが、生物部も充実した施設で自由に調査・実験ができるから楽しいですね。
苦手だった理科が好きになりました
Hさん(中1)
毎回金曜日の理科の授業では、翌土曜日の実験の準備をしながら予想を立てます。実験をしてその予想が当たったらうれしいし、違っていたら実験を通してどこが間違っていたのかを確認できるので、クイズみたいで楽しいです。
中学に入るまで理科は苦手な教科でしたが、自分で何度も実験をすることで、教科書を読んでもピンとこなかった知識が自然と理解できるようになり、今では理科が好きになりました。理科が苦手な人にこそ、この学校をおすすめしたいです!
(この記事は『私立中高進学通信2022年12月号』に掲載しました。)
浦和実業学園中学校
〒336-0025 埼玉県さいたま市南区文蔵3-9-1
TEL:048-861-6131
進学通信掲載情報
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