私立中高進学通信
2022年12月号
実験/実習大好き!
聖望学園中学校
問題発見能力や問題解決能力
表現力を高める『自由研究』
生徒それぞれが興味あることを研究テーマに据え、実験を重ねる『自由研究』。夏休み中に実験を行い、2学期にその成果を発表。研究結果をポスターにまとめ、文化祭で展示します。
自由研究「クマムシの発見確率」を発表し、クラスメートの質問に答えるNさん(中3)。
みんなの意見を参考にして、文化祭で展示するシートの内容をさらにブラッシュアップします。
理科の知識を総動員
個性豊かな『自由研究』
「今の日本は小麦の食糧自給率がとても低く、外国から輸入する小麦の値段も高騰しています。そこで、私は日本のお米を使った米粉を小麦粉の代わりにすれば、輸入に頼らずにすむのではないかと考え、米粉で食べ物をつくり、小麦粉と比べてみました」
『自由研究』の成果をまとめたポスターを使ってプレゼンテーションするのは、中3のYさんです。この日、理科実験室では、ICTを活用した『自由研究』の発表会が行われていました。生徒たちのポスターを見ると「地震に強い家」「お弁当を長持ちさせる方法」「暑い夏でも快適に犬の散歩をするには」など多彩なテーマが並んでいます。
「『自由研究』では、中1は興味のあることについて実験を行い、その成果をまとめます。中2はそこから発展させ、実験を行う前に仮説を立てて、条件を検討します。中3は最初に問いを立て、自分が解決したい問題を設定するのです。そのうえで研究テーマを決めて、文献を調べたり実験をしたりして考察をまとめます。この『自由研究』を通して、環境破壊や地球温暖化をはじめとする社会の諸問題の解決に、理科の知識が大きく役立つことを知ってほしいと思います」(ICT教育部長・理科/永澤勇気先生)
「クマムシの発見確率」
「父から『かわいい微生物がいるよ』と教えてもらったのが、クマムシです。この微生物が7カ所のコケから、どのくらいの確率で生息しているのか調べてみました」(Nさん)
Nさんは近所の駐車場や道路、夏休みに訪れた軽井沢の川や公園など7カ所でコケを採取。顕微鏡で観察し、クマムシの有無を確かめました。その結果、クマムシが見つかったのは駐車場と公園の2カ所。「クマムシが生息している『ギンゴケ』は、駐車場のような過酷な環境で育ちます。そのため、栄養が豊富な環境では別のコケが生えていたのかもしれません」(Nさん)
「未来を救う〜米粉の食事〜」
「小麦粉と米粉を使ってパンとクッキーをつくりました。米粉のパンは表面が固くなって焼き目がつきにくく、クッキーは仕上がりがきれいでした」(Yさん)
完成したものを家族に食べ比べてもらうと、「パンとは別のものと思えばおいしい」、「クッキーはもう少しやわらかくなればいい」という感想が返ってきました。Yさんはよく料理をすることから、この研究を思いついたそうです。この自由研究を通して「米粉に比べ、小麦粉のほうがおいしいが、小麦粉が手に入らなくなっても、米粉でパンやクッキーはつくれる」と考察しました。
「溶けにくいアイスをつくる」
「地球温暖化で気温が高い日が多いので、私は屋外でも時間をかけて味わえるように、溶けにくいアイスをつくろうと思いました」(Aさん)
Aさんは牛乳に粉末寒天を混ぜたものと、混ぜないものを凍らせて比較。完成したアイスを室温27℃で5分ごとに溶けるかどうか記録しました。粉末寒天を混ぜないアイスは10分後、混ぜたアイスは25分後に溶け始めました。しかも、粉末寒天を混ぜなかったアイスが溶け切っても、混ぜたアイスは溶けないままでした。この結果にAさんは感動したそうです。
生徒全員に
理科を好きになってほしい
永澤勇気先生
本校はICTの活用がとても進んでいます。夏休み中の実験の進捗状況もiPadにアップしてもらい、一人ひとりにアドバイスしました。生徒には実験をすることで、検証することの大切さを実感してほしいと考えています。たとえば「プリンの固さを変えるには」を研究テーマにした中3生は、タンパク質が固まるには熱が大きく関係していることに気づきました。大きな成長です。『自由研究』を通して、理科を学ぶ意味を知り、全員に理科を好きになってほしいと願っています。
科学的な視点や分析力も
養えます
『自由研究』では、中2から比較をします。材料や条件の一部を変えて実験をして、結果を比べてみるのです。こうして科学的な視点や分析力を養っていきます。また、表現力やプレゼンテーション力を向上させることも『自由研究』の目的のひとつです。比較や分析の結果、考察についてわかりやすくポスターにまとめ、大勢の生徒に伝わるようプレゼンテーションできるようになることをめざします。中3になると、多くの生徒がこれらの力を高めています。
(この記事は『私立中高進学通信2022年12月号』に掲載しました。)
聖望学園中学校
〒357-0006 埼玉県飯能市中山292
TEL:042-973-1500
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