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私立中高進学通信

2022年12月号

私たち、僕たちが大好きな先生

二松学舎大学附属柏中学校

歴史の面白さを
生徒に伝えたい

社会科 永富 友香(ながとみ ゆか)先生
成城大学文芸学部文化史学科で学ぶ。民俗学を専攻し、各地の伝承や祭りを現地でのフィールドワークによって調査し、
祭祀や祭礼の起源などについて研究する。卒業後、公立中学校勤務を経て二松学舎大学附属柏中学校・高等学校に勤務し、
社会科の歴史の授業を担当する。美術館や博物館を訪ねるほか、各地の名所や史跡へ見学に行くことを趣味とする。
部活動は、高校男子ハンドボール部の副顧問を務める。

歴史や美術など、時代を感じるものが好きという永富友香先生。明るく、包容力のある永富先生は、生徒に慕われ、頼りにされる存在です。歴史の授業や探究学習を通じて、自分でテーマを設定し、自分で考える力を身につけてほしいと、日々奮闘しています。

話し合いを通して
新しい発見をする
歴史の授業で配付するオリジナルプリントは、授業の振り返りに便利なよう工夫されています。中1生と中2生に、年間約30枚ずつ配付します。歴史の授業で配付するオリジナルプリントは、授業の振り返りに便利なよう工夫されています。中1生と中2生に、年間約30枚ずつ配付します。

――教員を志したきっかけは何ですか?

 小学生の頃から、就きたい仕事として教員に魅力を感じていました。そして、高校で出会った日本史の先生の授業がとても興味深く、歴史を深く学んで社会科の教員になりたいと思いました。その先生は雑談が楽しく、夏休みなどにご実家のお寺に生徒を集めて、ご自身が行かれたところの話をしてくださったり、史跡などを案内してくださったりしたのです。その当時に感じた面白さを私も子どもたちに伝えたいという気持ちで、社会科の教員を志しました。

――歴史の授業では、どのような工夫をされていますか?

 生徒全員がタブレット端末を持っているので、社会科に役立つアプリを活用して、ちょっとした空き時間でも学習できるようにしています。授業ではまず、そのアプリで前回の復習をするところから始めます。また、デジタル教科書を使用したり、動画資料を見せたり、できるだけ視覚にはたらきかけるようにしています。特に中1生はまだ50分授業に慣れていないので、集中力を保つことが難しい面があります。そこで、書く時間・見る時間・話し合う時間と、メリハリをつけています。それぞれの時間ごとに生徒のタスクが変わるので、あっという間に終わったという声が上がるほどです。

 また、重要語句の記入欄を設け、統計資料をまとめたオリジナルのプリントを配付し、生徒が記入したものにコメントをつけて戻すようにしています。

――授業内で、生徒たちはどのようなことを話し合うのでしょうか。

 私がよく言うのは、「歴史上の人物もみんなと同じ人間なんだから、喜怒哀楽の感情があったんだよ」という部分です。怒りや喜びといった感情で歴史が動いたことを知ると、生徒は歴史を遠い話ではなく、自分と同様に感情をもった人間が動かしてきた身近なものとしてイメージしやすくなります。そこで、歴史上の人物になったつもりで「あなたならどうしたかな」と、グループで話し合ってもらいます。すると、歴史上の出来事の背景を理解する必要が出てくるので、自分で調べたり考えたりして、歴史への興味を自然と強めます。ただ、自分ひとりで考えることには限界があるので、ペア学習やグループワークを通して、ほかの人の意見を聞いて新しい発見ができるようにしています。そこに学校で学ぶことの意義があると思います。

 歴史は暗記ものと思われがちですが、ある程度は暗記する部分があるとしても、「なぜ」「どうして」という問いに、自分で調べたり考えたりして、自分なりに把握しておくことが大事だと思います。そのため、試験でも単に知識を問う問題ではなく、「参勤交代によってどのような影響があったか」といった、考えて説明させる問題を出すようにしています。

――日本と世界の出来事を有機的に考えることが重視されていますね。

 高校で歴史総合が導入されたこともその現れです。近代史を学ぶ中3では、特に世界とのかかわりが重んじられます。それが、今世界で起こっていることに関心をもち、その背景を理解することにもつながるからです。

 本校では毎日、新聞3紙のコラムをみんなで読む時間を設けています。3紙が同じようにウクライナの問題を取り上げていれば、それが大きな問題だと気づけます。こうしたことが、世界や社会への窓口になっていくのです。

生徒と接する時間を大切に
その変化にも気を配る

――中学校では、学ぶ力を育てるためにどのような指導をされていますか。

 本校では探究学習に力を入れており、中1で近隣の手賀沼について調べる「沼の教室」、中2で京都・奈良を訪れ宿泊学習をする「古都の教室」、中3で海外研修をする「世界の教室」を実施しています(コロナ禍の期間は、海外研修を国内研修に振替)。3年間かけて、テーマを絞り、仮説を立て、調査し、まとめ、発表するという学び方を身につけられるようにしています。学年ごとに文化祭で発表するほか、中3ではその集大成として論文を完成させます。

 教員は、発達の段階に合わせてテーマを示唆したり、発表資料のつくり方をアドバイスしたりと柔軟にフォローします。最近はインターネットを利用してたくさんの情報を集めることが簡単になりましたが、その信ぴょう性については注意が必要といったことも話しています。コロナ禍の影響で校外での調査ができない時期もありましたが、できるだけ校外学習を取り入れていきたいと思っています。

――生徒とはどのように接していらっしゃいますか。

 中学校の歴史の授業は週2時限と比較的少ないので、担任のクラスには、授業以外にもできるだけ多く顔を出すようにしています。生徒の様子を見たり、雑談したりするなかで、生徒の変化に気を配るためです。毎日接していないと変化には気づきにくいですから。思春期なので難しい面もありますが、気になることがあれば、保護者と話をすることもあります。

 一方で、提出物の期限厳守や、挨拶などの基本的な部分ができていなければ注意をします。当たり前のことを当たり前にできるようにするというのは、本校の教員間での共通認識です。

 中学生は成長するにつれて寡黙になりがちですが、本校には明るく素直な生徒が多く、積極的に話しかけてくれます。中学で担任した生徒が、高校生になってから話しに来てくれることもあります。そうしたところは、中高一貫校ならではだと思いますね。

探究学習で調べたことをまとめ、発表用の資料をつくります。内容や見せ方について先生がアドバイスします。探究学習で調べたことをまとめ、発表用の資料をつくります。内容や見せ方について先生がアドバイスします。
各学年の探究学習で調べ学んだことを、文化祭で来場者に向けて発信します。各学年の探究学習で調べ学んだことを、文化祭で来場者に向けて発信します。

探究学習では、テーマを中心に置き、関連する中テーマや小テーマをマンダラートに表し、自分のテーマをしぼっていきます。

(この記事は『私立中高進学通信2022年12月号』に掲載しました。)

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