私立中高進学通信
2023年12月号
実践報告 私学の授業
関東学院中学校
『SDGs』をテーマに
社会とつながる課題解決力を育成
オリジナルプログラムで展開する『総合的な探究の時間』
地域社会への視点を軸に
社会課題を解決する
2022年度より同校は、高校の『総合的な探究の時間』を使い、地元・横浜市の企業と連携して取り組む体験型オリジナルプログラムをスタートさせました。7月、11月、12月の3回、計35時間にわたって、未来への課題を能動的に解決する力を育む集中型授業です。
「大切にしているのは『社会は大人がつくるもの、自分たちには関係ない』という生徒の気持ちを変えていくことです。日本の高校生は他国に比べ、自分が地域や社会から必要とされている意識が極めて低いという調査結果があります。
生徒の将来のために、その意識を変えたい思いがありました。そこで、生徒たちが何度も取り組み、身近な存在となったSDGsをテーマに、街や企業と関わる課題について、積極的にアイデアを提案する力を育てたいと考えました」(理科科・教務部校外・探究委員会/桐ヶ谷綾菜先生)
2022年度の高1生(現高2)が取り組んだ課題の一つは、地元に縁のある企業のSDGs活動をPRする動画制作です。プログラムに賛同する市内10数社の企業等へ実際に訪問して、 アイデアを出し合いました。工業系の大学に女子学生を増やすため、化粧品会社と大学が提携するアイデアや、動物園で行われている環境保全の取り組みをピックアップするなど、生徒ならではの視点から、さまざまな提案が出されました。
授業の成果を発展させ
コンテストで入賞
このプログラムで探究した成果を発展させ、全国の高校生がSDGs達成のアイデアを競うコンテスト『SDGs Quest みらい甲子園』2022年度大会において、首都圏大会決勝へ進出しました。
「このチームは、横浜市で瓶のリサイクルを行う『マルニ商店』の新規事業を提案するなかで、リサイクル資材『ポーラスα』に着目しました。
この資材は乾燥地帯などの土壌改良に有用なため、都会のビルに農園を作り活用するほか、将来的にはアフリカの乾燥地帯の食糧問題を解決するというアイデアを提案し、評価を受けました」(国語科/齋藤美喜先生)
桐ヶ谷先生、齋藤先生を含めた教科を横断する教員チームが一丸で取り組み、同プログラムは今も進化を続けています。
「生徒に経験させたいのは社会との関わりです。自分たちのアイデアが社会課題の解決にどうつながるかを大人へ提案することで、将来を考える力も育てたい。そこからさらに自分自身の問いを見つけ、大学での学びにつなげてほしいです」(桐ヶ谷先生)
「社会や大人とのつながりを自覚することは、生徒の自己変容にもつながります。今後は学問の入り口としての探究学習を意識したプログラムを強化し、中学を含め全校で進めていきます」(齋藤先生)
授業レポート
授業の取り組みから生まれたアイデアについて意見交換
企業、研究者が一堂に会する懇談会が生徒の要望から実現
『SDGs Quest みらい甲子園』で好成績を収めたチームメンバーの強い要望により、プログラムの協力企業であるマルニ商店、リサイクル資材のポーラスαを開発した鳥取再資源化研究所の代表取締役であり農学博士の馬場貴志氏と、山陽小野田市立山口東京理科大学 特任教授の森田廣先生が来校し、チームのメンバーと交流する懇談会が5月に行われました。
懇談会では、生徒たちが『SDGs Quest みらい甲子園』で発表した『ガラスで守る世界 ガラス瓶リサイクルの新しい可能性』と題するプレゼンテーションを発表。各氏からポーラスαの再資源化技術やSDGsへの取り組みにおける解説のほか、意見交換が行われました。
外部企業と直接対話の機会が設けられたのは、同校初の試みです。専門家のアドバイスを受けた生徒たちにとって、今後の探究学習で糧となる貴重な意見交換の場になりました。
探究授業の成果をさらに発展させ、『SDGs Quest みらい甲子園』に出場し、ファイナリストとなったプレゼンテーションを企業の代表者や研究者の前で発表。
ポーラスαを微生物電池に活用するシステムについて、開発者の山陽小野田市立山口東京理科大学特任教授・森田廣氏による実験も実施されました。
生徒が提案した観光地と瓶リサイクルを結び付けたアイデアには、企業代表からも感心する声があがりました。
生徒たちは、意見交換でも活発に発言。実社会では企業がSDGsにどう取り組んでいるか、新技術をいかに役立てているかの見識をさらに深めました。
生徒に聞きました
チーム『子供の笑顔を増やし隊』が企業コラボレーションで得たもの
最初は授業の課題としての提案でしたが、実際に企業の皆さんにも協力していただいて『SDGs Quest みらい甲子園』に出場できたことは、大きな自信になりました。
企業の皆さんとの関係をさらに深めて、アイデアを形にするための学びを続けたいと思います。(チームリーダー・Tさん/高2)
『総合的な探究の時間』の授業や『SDGs Questみらい甲子園』出場を経験したことで、私自身のSDGsへの理解と知識がとても深まりました。今の世界を変えるには、私たちが現実的な提案をして、世の中を切り拓くことが大切だと自覚しました。このチームに参加できて良かったです。(Kさん/高2)
リサイクルしたガラス瓶から作られるポーラスαの存在を知ったことで、これを活用した緑化活動や事業化のアイデアが、調べれば調べるほど膨らみました。
企業の皆さんとお会いしてお話を聞いたことで、SDGsについてもっと知り、アイデアを実現させたいと思いました。(Mさん/高2)
授業で『マルニ商店』さんにPR動画を提案し、Tくんがポーラスαの存在を見つけたことが、このチームの出発点です。
高校生のアイデアを皆さんが応援してくださり、とても励みになりました。こうして企業の方々と直接交流した経験を、自分の将来にも活かしていきたいと思います。(Hさん/高2)
ココも注目!
協力企業からのメッセージ
生徒さんから『ポーラスαがあれば宇宙でも農業ができる』というアイデアも飛び出しましたが、研究者たちも同じ考えです。
若い力を磨いて、ぜひアイデアを実現できるよう頑張ってください。(鳥取再資源化研究所 代表取締役/馬場貴志氏)
地域技術者、地域社会学者がもつ課題解決のためにも、学生はもっと社会と結び付くべきです。
見つけた課題を、このような発表に発展させられたのは素晴らしいと思います。(山陽小野田市立山口東京理科大学 特任教授・鳥取再資源化研究所 技術顧問/森田廣先生)
高校生のアイデアはまさに原石。海外に向けた事業提案にも感心しました。私も関東学院OBの一人として、今後もぜひ協力したいです。(マルニ商店 代表取締役社長/栗原清剛氏)
(この記事は『私立中高進学通信2023年12月号』に掲載しました。)
関東学院中学校
〒232-0002 神奈川県横浜市南区三春台4
TEL:045-231-1001
進学通信掲載情報
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