私立中高進学通信
2023年12月号
実践報告 私学の授業
共立女子中学校
教えることで理解が深まる
新科目『歴史総合』で模擬授業
生徒が教える立場に!グループごとに授業を受け持つ試み
どのような模擬授業を行うのか見通しを立てた後は、本番に向けた板書を想定し、書いてみます。
筋が通っているか、説明がわかりやすいかを確かめます。
高1『歴史総合』の授業にて、共立女子では生徒が教員役となって授業を行う『模擬授業』を実践。探究型学習によって対話的・主体的な学びを深めています。
新スタイルの授業で
プレゼン力アップ
2022年度から全国の高校で探究系の教科が新たに設けられました。知識や技能を身につけるだけでなく、それらを活用して自ら課題を発見し、思考力や判断力、表現力を高めることがねらいです。共立女子では、そうした資質・能力を育むためには、知識伝達型の授業から脱却し、生徒が能動的に学ぶアクティブラーニング型の授業が必要だと考えています。
2022年度から始まった、高1必修の新科目『歴史総合』(※)では、生徒による『模擬授業』という、意欲的で新しいスタイルが取り入れられています。
「調べ学習と発表に関して、本校の生徒たちは中1から数多く経験してきて実力はついています。
そこで、ただ調べて発表をするだけではなく、他者にわかりやすく説明するプレゼンテーション力も高めることはできないかと考え、『歴史総合』の教科書の内容を、クラスのみんなに教える『模擬授業』にしてみてはどうかと考えました」と、社会科の菊地裕文先生は導入の経緯を語ります。
※ 歴史総合…2018年度の学習指導要領の改訂により、2022年度から、高校の『日本史B』『世界史B』は廃止され、代わりに『歴史総合』『日本史探究』『世界史探究』という新科目がスタート。これらの新科目は、歴史事項の暗記に偏らず、生徒が主体的に歴史を学ぶことを重視しています。
生徒4~5名が
先生役を担う
『歴史総合』は、歴史学習の入り口となる、日本史と世界史が融合した授業ですが、歴史上の出来事を時系列に追って学ぶものではありません。近現代を中心に『近代化とは何か』『大衆化とは』『グローバル化の進展と諸課題』といったテーマを立てて、世界や日本の歴史を相互関係のなかで捉え、考察することが求められる、知識活用型の探究科目です。
高1の6月に行われる定期考査までは教員が授業を行い、9月からは生徒が教える『模擬授業』にシフトします。4~5名のグループごとに教科書の単元が2つずつ割り振られ、1グループで2回の授業を担当します。
夏休み前の授業では、グループに分かれて熱心に授業構想を練る生徒たちの姿がありました。12月の定期考査に向けて、教える責任は重大です。
「授業内容を考え、教えることは生徒にとって初めての体験だと思いますので、6月までの授業ではグループワークやワークショップを多く取り入れて、話し合いを活性化させています。
人に教えるには、歴史的な出来事が起こった背景や、他国に及ぼした影響などを資料で示しながら、論理的に説明する必要があります。グループで話し合い、模擬授業の組み立てを考えることで理解が深まっていくのです。
また、中学3年間で鍛えたプレゼンの力がしっかりと生徒に根付いているからこそ、こうした授業が展開できるのだと実感しています」
授業レポート
覚えるだけじゃない歴史の学習
自分の言葉で説明すると理解が定着することを実感
7月、高1の『歴史総合』の授業を取材しました。授業が始まると、生徒たちはすぐにグループごとに机を寄せて、『模擬授業』の準備に取りかかります。
グループごとに割り当てられた各単元の内容について、どのように教えていくかの方針を決めていきます。テーマは『世界恐慌』『ベルリン封鎖』『朝鮮戦争と日本の役割』など。まずは教科書をじっくり読み込んで内容を把握します。続いて、効果的に理解を促す図や板書の内容を考えていきます。
担当部分の教科書の内容を確認します。
正解が印刷された補助プリントを使って、答えを導き出すためにはどんな説明が必要なのかを考え、模擬授業の組み立てを整理していきます。
教員は教室を回って、グループからの質問に答えます。
タブレット端末で図解のアイデアを考えます。手を動かしながら描くことで、理解が深まります。
生徒のコメント①
『模擬授業』にチャレンジ中の高1生に聞きました
幅広い範囲をしっかり捉えたい
1つの単元で扱う範囲が幅広いので、わからない言葉をみんなで共有してまとめています。模擬授業ではきちんと内容を伝えなければならないので、入念に調べています。(Mさん/高1)
わかりやすく伝えるために奮闘中
どうすればわかりやすく伝えられるか悩みながら、グループワークを楽しんでいます。話す内容や項目をGoogleドキュメントに書き込んで、グループ内で共有しつつ共同編集して進めています。(Kさん/高1)
生徒のコメント②
昨年度『模擬授業』を経験した高2生に聞きました
苦戦しましたが、今後役立つ経験に
楽しい授業として印象に残っていますが、板書でも伝え方でも、どうすればわかりやすく伝えられるかを考えることが難しかったです。模擬授業の経験は、教えたりプレゼンしたりする場面で今後役立つと思います。(Aさん/高2)
自分に合う学習方法を知るきっかけに
私は覚えることが苦手なのですが、まとめたことを言葉にして伝えたほうが、定着し覚えやすいことを模擬授業で発見し、自信がつきました。今は世界史や数学などの理系科目にも模擬授業での体験が活かされています。(Kさん/高2)
ココも注目!
中学校での調べ学習の成果がベースになります
2022年度から生徒による『模擬授業』を実践していますが、12月の定期考査の平均点は、教員が教えていたそれまでと遜色ない結果でした。それならば、生徒に発表の力がつくこちらの方法を続けてみようということで、現在も進めています。
生徒は忙しいですから、基本的には教科書と資料集を用いた解説に限定し、授業時間中の作業で収まるように心がけています。1月からは、自分が関心をもつテーマについて、授業中にレポートを作成する取り組みも行って、情報を整理して文章を書く力も養っています。(社会科/菊地裕文先生)
(この記事は『私立中高進学通信2023年12月号』に掲載しました。)
共立女子中学校
〒101-8433 東京都千代田区一ツ橋2-2-1
TEL:03-3237-2744
進学通信掲載情報
PICK UP!!
紹介する学校
- それぞれの『志』を大きく育てる アフリカ・スタディーツアー足立学園中学校
- 新設の2コースでユニークな授業 未来を見据えた先見性あるプログラム春日部共栄中学校
- 『SDGs』をテーマに 社会とつながる課題解決力を育成関東学院中学校
- 教えることで理解が深まる 新科目『歴史総合』で模擬授業共立女子中学校
- 段階的に深化する探究プログラムで 専門性の高い論文を書く力を養成佼成学園中学校
- どうやったら動く? 電動自動車作りに挑戦駒込中学校
- 思考力や表現力を伸ばす 中3の研究論文狭山ヶ丘高等学校付属中学校
- 常識を揺さぶり 自分の枠を越える『未来デザイン』実践女子学園中学校
- 社会と直接つながり視野を広げる 『Learner’s Time』を展開品川翔英中学校
- 『デザイン思考』を体験・実践し 課題解決スキルを身につける『探究』田園調布学園中等部
- 新コースで伝統の探究学習が深化 自問自答する力を鍛える二松学舎大学附属柏中学校
- 主体的に参加! 大学生と社会課題に向き合うワークショップ文化学園大学杉並中学校
- 20年後の“プリキュア”を考える! 個性的な探究プログラム文京学院大学女子中学校
- 生徒が先生役となり英語で授業 生徒主催の『Learning by Teaching』横浜女学院中学校
- 生徒の興味・関心を引き出し さらなる学びに導く『トップランナー授業』横浜創英中学校
- 高2で研究・執筆した論文は 学校の勉強にも大学受験にも役立ちました大宮開成中学校
- 日・英の研究論文を仕上げた 中高6年間は私の財産です佼成学園女子中学校
- 全体発表会でのプレゼンで 大きな反響を得られて自信につながりました八王子学園八王子中学校
- ハワイ語消滅の危機を探究し ハワイ語で作る川柳コンテストを創設!富士見丘中学校
- 探究活動がきっかけで興味が開花 看護師の夢を後押し安田学園中学校
- チームで意見をまとめて自治体にプレゼン 生徒の“ワクワク”を育てるコラボ授業玉川学園中学部
- 3つの大学と高大連携協定を結び 実践的で教科横断的な視点を養う和洋九段女子中学校
- 学習意欲が高まる年間行事で 「使える」英語力を育む横浜翠陵中学校
- 『Inspire High』で 視野を広げ発信力を磨く浦和実業学園中学校
- “プログラミングの光と闇”を学ぶ デジタル・シチズンシップ教育森村学園中等部
- 自分の可能性と向き合う 6年間がスタート!上野学園中学校
- 中学受験生の気持ちに寄り添いたい!共立女子第二中学校
- 高い志を胸に切磋琢磨できる環境です国学院大学久我山中学校
- 自分らしく過ごせる女子校生活が好き!東京家政学院中学校
- 部活動を通し、仲間たちとの絆が強まります!立正大学付属立正中学校
- 生徒と一緒に学びながら 探究心を育んでいますドルトン東京学園中等部
- 基礎学力強化とキャリア教育の2本柱と共同担任制で 進路を強力サポート光塩女子学院中等科
- 得意を活かして学力を伸ばし 妥協のない大学進学を実現多摩大学目黒中学校