私立中高進学通信
2021年7月号
THE VOICE 新校長インタビュー
芝浦工業大学附属中学校
「好きなもの」の先にある
輝かしい世界を体験させたい
佐藤 元哉 (さとう・もとや)校長先生
1959年、東京都墨田区出身。芝浦工業大学高等学校(現・芝浦工業大学附属高等学校)を卒業後、
獨協大学外国語学部英語学科に進学。卒業後、芝浦工業大学柏中学高等学校に26年間勤務。
その後異動し、芝浦工業大学附属中学高等学校の進路部長、
キャリア教育推進室長、教頭を歴任して、2021年4月に校長に就任。
恩師との出会いによって
大きく変わった人生
芝浦工業大学附属の最先端の教育
- STEAM教育
Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Arts(芸術)、Mathematics(数学)の5つの力を総合的に学ぶ - 大学連携教育
芝浦工業大学の全面的な協力を得て、多種多様なものづくりの楽しさを体験する - 独自の探究学習
身近な話題から国際性と多様性を身につける『探究GC※』と、技術&プログラミング・デザイン思考で未来を創造する「探究IT」に取り組む
※「GC」は「Global Communication」の略
私は本校の卒業生です。私の実家は本所深川で祖父の代から続く材木店でした。作業場では大工さんたちが墨で目印をつけたり、カンナで削ったりして木材を加工していました。すべて手作業です。この光景を見て育った私は、ものづくりが大好きになりました。なかでも夢中になったのが模型飛行機づくりです。今もこの趣味を愛し、わが家に模型飛行機の工作室をつくってしまったほどです。
私は3人兄弟の長男で、家業の材木店を継がなければなりませんでした。父は私に大学で建築を学ぶことを勧めました。ものづくりに興味のあった私は父の助言もあり、現在の芝浦工業大学附属高等学校に進学しました。しかし、この学校で出会った2人の恩師によって、私の人生は大きく変わってしまったのです。2人とは第8代校長の渋谷大輔先生と、後に第11代校長となられた鈴木渉先生でした。
渋谷先生も鈴木先生も英語を教えておられました。この先生方の授業に魅了された私はもともと好きだった英語の勉強に夢中になっていきました。私は芝浦工業大学に進学せず、他の大学で英語を学びたいと思うようになりました。この気持ちを父に告げると父から猛反対されましたが、渋谷先生と鈴木先生の応援のおかげで、英語の道に進むことができました。
「教員に向いている」
その言葉で一歩踏み出せた
私は、母校である本校で教育実習をしました。そのとき、この2人の先生方から私の授業をほめていただき『教員に向いている』といっていただいたのです。しかも当時、家業が規模を縮小していたため、父も私が教員になることを許してくれました。そして縁あって本校の姉妹校として開校2年目を迎えていた芝浦工業大学柏高等学校の英語科教員に採用が決まりました。渋谷先生と鈴木先生が推薦状を書いてくださいました。
芝浦工業大学柏高等学校で教えながら中学校の開設や男女共学化の仕事に携わった後、2008年に母校である本校の教壇に立つことになりました。
そして今年の春、私は本校の第15代校長に就任しました。そんな私に高校の同級生のお母様からお手紙をいただきました。手紙には「元哉くんが校長になってくれて我が息子のように本当にうれしい」と書かれており、私は胸が熱くなりました。四十年ぶりの激励でした。
一人ひとりの夢や目標を
どこまでも大切にしたい
私は校長として、これまで本校が築いてきた教育のクオリティーをさらに高め、掘り下げていきたいと考えています。そのひとつが『STEAM教育』です。
「人文科学」「社会科学」「自然科学」という言葉があるように、私は人文や社会の英知が科学を支えていると思っています。ノーベル物理学賞を受賞した湯川秀樹氏や朝永振一郎氏、物理学者のアインシュタイン氏も音楽ほか、芸術の素養がありました。本校からは多くの生徒が理工系の大学に進学しますが、こうした生徒にこそ、芸術や文学、哲学などの教養が必要だと考えています。そこで、本校ではすべての教科の教員が自分の担当教科と科学技術との接点をテーマに幅広く学ぶ『ショートテクノロジーアワー』という授業を本課内に設けています。たとえば、プールのコースロープは水泳選手が最大限に力を発揮できるように工学的な研究によって消波性能が高められています。このような話を体育の教員がするのです。臨場感ある話が、工学に興味のある生徒の心に大きく響くでしょう。
また、身につけた知識を運用して創造力を養うために、『探究GC(※)』と『探究IT』という2つの探究型授業も用意しています。
大学連携教育にもさらに力を注いでいきます。2017年に竣工した本校の新校舎は、芝浦工業大学の豊洲キャンパスまで歩いて15分です。本校には私のようにものづくりが大好きな生徒が入学してきます。そんな生徒を待っているのは、豊洲キャンパスでのロボット製作のほか、さまざまなワークショップでの学びです。今後は講座の内容をさらに充実させて「好きなもの」の先にある輝かしい世界をこれまで以上に見せてあげたいと思っています。
さらに本校は今年の春、女子生徒を迎え入れました。女性の研究者や技術者の育成という社会のニーズに応えるためです。高い志を抱く女子が男子と切磋琢磨してくれることを期待しています。
私の恩師である渋谷、鈴木両先生は、私の英語に対する熱い思いを受けとめてくださり、未来へとつなげてくださいました。2人の先生方のように、本校の教員たちが生徒一人ひとりの夢や目標をどこまでも大切にして、その可能性を大きく広げられる学校づくりに努めてまいります。
[沿革]
1922年に同校の前身である東京鐵道中学が開校。戦後に東京育英高等学校に再編。その後、1953年に経営が芝浦学園へ移され、芝浦工業大学高等学校へ。1982年には板橋区坂下に移転して中学校を開設。2017年に豊洲移転し、芝浦工業大学附属中学高等学校として2021年に共学化。
(この記事は『私立中高進学通信2021年7月号』に掲載しました。)
芝浦工業大学附属中学校
〒135-8139 東京都江東区豊洲6-2-7
TEL:03-3520-8501
進学通信掲載情報
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