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私立中高進学通信

2025年12月号

校長先生はこんな人!

トキワ松学園中学校

“好き”を伸ばし、未来をつくる
探究を通じて自分らしさを
見つける学びの環境

田村 直宏 (たむら・なおひろ)校長先生
1971(昭和46)年、⼤阪府出⾝。京都⼤学理学部卒業後、理科・数学の教員に。
⼤阪⻘凌⾼等学校を経て、⼤阪⼯業⼤学⾼等学校(現・常翔学園中⾼)では24年間クラス担任を務め、
卓球部顧問としても活躍。2021(令和3)年にトキワ松学園⾼等学校教頭、2022年より現職。
ロイロ認定イノベーター、UE(植松電機)パートナー(ロケット教室開催資格)、
相手の力を引き出す話術「ペップトーク」の資格も取得。現在は篠笛の練習に熱中。

“好き”を追求する力を培う
中学から探究の基盤づくり

 本校の校長に就任して3年が経ちました。『探究女子を育てる』という本校の目標が、生徒たちの無限の可能性と教職員の尽力により、大きく開花してきたと感じます。就任した2022年の春は、ちょうど高校で『総合的な探究の時間』が必修化された時期でした。それを好機と捉えて、他校の約6倍もの時間をかけて『探究』に取り組むことを決めました。

 高1には、企業のミッションに取り組む『クエストカップ』の『企業探究学習』を導入しました。初参加した2023年から2025年まで連続して全国大会への出場を果たしています。

 参加2年目にあたる2024年は吉野家ホールディングスの課題に挑んだチームが、廃棄されるタマネギの皮から美容液を作り、女性客を呼び込む提案をして企業賞を受賞。2025年には全国最多の3チームが全国大会に出場し、イオンリテールの課題に挑んだチームが、『企業賞』を授与されました。

 女子校ならではの自由に発言・発表できる環境が、生徒たちの豊かな発想力と表現力を大きく伸ばしていると確信しています。

 高2では、ゼミ形式で本格的な個人探究に取り組んでいます。「自然科学ゼミ」のある生徒は、雑草を利用した植物性の「苗ポット」の素材開発に取り組み、外部コンテストで表彰されました。「美術デザインゼミ」は、食品メーカー主催のスナック菓子パッケージデザインコンペを実施。最優秀賞を受賞した生徒の作品が実際の商品に採用されました。受賞者には第2弾のデザインの依頼が来るなど、「起業」に近い経験を積んでいます。

 中学でも『探究女子』の育成を着々と展開しています。中1では、『思考と表現』という授業で探究の土台を築きます。この授業では、図書室の司書教諭が書籍の読み方、調べ方、発表の仕方、そしてインターネットでの調べ方を教えます。中2では、「商品開発」と「アプリ開発」に取り組んでいて、データサイエンスの基礎も学びます。アプリ開発では生成AIを活用していて、これが中3で行う「AIを社会でどう役立てるか」を考える授業につながります。

 こうして段階的に探究のスキルと知識が深まり、高校で「自分がやってみたいこと」を軸とした探究へとつながっていくのです。

目標をもって入学する
意欲的な生徒が増加

 本校の生徒は、発想力や表現力が豊かです。外部コンテストへの参加を勧め、生徒の活動風景や成果をメディアなどで取り上げてもらうようにしたところ、生徒たちの学校生活への向き合い方が大きく変わってきました。

 生徒たちは、以前にも増して学校生活へ積極的になり、入試説明会での学校案内やプレゼンテーションにも「私もやりたい」と手を挙げる生徒が続出しています。これも探究の楽しさを伝えたいという意思の表れでしょう。中学入試でも志願者数が増加し、「トキワ松でこんなことをしたい」という明確な目標をもって入学してくる生徒が増えてきました。

 高校の『美術デザインコース』へ進む生徒たちの意識も大きく変わりました。単に「絵が好きだから」というだけでなく、「美大へ行きたい」「美術系で就職したい」という明確な目標をもって入学してくる生徒が増えています。実際に美術系大学への合格実績も向上しました。探究を通じて創造性が鍛えられ、美大入試で求められる「発想力」が養われた結果だと考えています。

 このように6年間を通した探究活動により、生徒たちは将来の進路や職業につながる確かな力を身につけ始めています。

学校の“当たり前”を
常に問い直す

 実は、私は子ども時代、学校が大嫌いでした。建前だけで話す先生が嫌でしたし、いじめにあったこともあります。だからこそ、今の生徒に同じ思いはさせたくないのです。それに、皆を同じベルトコンベアーに乗せて均一な人間を量産するような教育は時代に合いません。人口減少の時代だからこそ、一人ひとりの持ち味を伸ばして、尖らせていくことが必要です。

 そのためにも学校の当たり前を問い直し、生徒が「認められている」「楽しい」「ここに来て良かった」と感じられる学校であり続けなければなりません。これこそが、創立者・三角錫子先生の「もって生まれた天分を伸ばす」という理念の現代的な実践だと考えています。生徒たちが失敗を恐れず安心して挑戦できる、そんな学校をこれからもめざしていきます。

[沿革]
東京女子高等師範学校(お茶の水女子大学の前身)を卒業し、北海道や鎌倉などで教壇に立った教育者・三角錫子(みすみすずこ)により、1916(大正5)年に創立。現在は、未来の社会を創造する「探究女子」の育成を教育理念に、「思考力教育」「国際力教育」「美の教育」に注力。2023(令和5)年から参加している全国規模の探究活動コンテスト『クエストカップ』では、毎年全国大会への出場を果たしている。高校からは「文理探究コース(アドバンスクラス・スタンダードクラス)」と「美術デザインコース」に分かれ、それぞれ探究や自由選択科目により希望進路の実現をめざしていくカリキュラムが特色。和やかな校風のもと、一人ひとりの個性を伸ばし、未来へ羽ばたく力を養う教育が実践されている。

(この記事は『私立中高進学通信2025年12月号』に掲載しました。)

トキワ松学園中学校  

〒152-0003 東京都目黒区碑文谷4-17-16
TEL:03-3713-8161

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