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私立中高進学通信

2022年7月号

校長先生はこんな人!

大宮開成中学校

遺跡の発掘調査員から
祖父が創立した
大宮開成の教員へ

松﨑 慶喜 (まつざき・よしのぶ)校長先生
創立者・松﨑庚子良先生の孫、前理事長・松﨑洋右先生の三男として1972(昭和47)年に生まれる。県立大宮高校卒業後、明治大学へ進学。1996(平成8)年、現・白岡市役所に入庁。2011年、大宮開成高等学校に社会科教員として赴任。2015年、大宮開成中学・高等学校の教頭に。2022年、同校の校長に就任。剣道は六段の腕前。

松﨑 慶喜 (まつざき・よしのぶ)校長先生
創立者・松﨑庚子良先生の孫、前理事長・松﨑洋右先生の三男として1972(昭和47)年に生まれる。
明治大学文学部史学地理学科卒業。1996(平成8)年、現・白岡市役所に入庁。
2011年、大宮開成高等学校に社会科教員として赴任。2015年、大宮開成中学・高等学校の教頭に。
2022年、同校の校長に就任。剣道は六段の腕前。

恩師の言葉が心に響き
15年間、考古学に携わる

「君たちは今、どういう時代を生きているかわかっていますか? 今、世界は大きく動こうとしているのです。今という時代を絶対に忘れないでください」

 私が高3の秋、日本史を教えてくださった恩師が授業中、このように力を込めて話されたことがあります。その前年の1989年にベルリンの壁が崩壊し、翌年には東西ドイツが統一されました。まさに激動の時代だったのです。

 恩師のその言葉が心に強く響いた私は、大学で歴史学を専攻しようと決め、明治大学文学部史学地理学科に進学、考古学を専攻しました。中高と剣道に打ち込んでいた私は体を動かすのが好きで、友人から「考古学は体力が必要な発掘調査があるから、松﨑に向いているよ」とアドバイスされたからです。

 考古学のなかでも私は縄文時代を研究しました。卒業論文のテーマは『大宮台地南部における遺跡群研究』です。私が生まれ育ったさいたま市大宮区の周辺には、縄文時代の遺跡が多く、このエリアをメインフィールドにした研究に打ち込んだのです。埼玉県の発掘調査を専門に行う埼玉県埋蔵文化財調査事業団にも研究や調査のため、何度も足を運んでいました。

 大学卒業後、この事業団の補助調査員となり、発掘の修行を積んでいたところ、さいたま市と隣接する現在の白岡市の町役場から、白岡で発掘調査をしてみないかという誘いをいただきました。

 快諾した私は15年間、白岡町役場の調査員の仕事に携わりました。住宅などの建築物を建てる際に遺跡が発見されると、発掘調査をしてその詳細を報告書にまとめます。小学校を訪問して発掘調査の話をしたり、遺跡に小学生たちを連れていったりすることもあり、充実した日々を送りました。

太古の人々の息遣いを
感じてもらうために

 発掘調査に大きなやりがいを感じていた時のことです。「そろそろ大宮開成の仕事を手伝わないか」と本校の理事長だった父・松﨑洋右から話がありました。迷いましたが「この先、父にもしものことがあれば、あの時に引き受けていればよかったと後悔するだろう」と思い、父の言葉に従いました。

 私は併設の大宮開成高等学校で社会科の教員として生徒に日本史を教えることになりました。私の専門分野である縄文時代は日本史の教科書で1ページしか扱われていません。だからこそ、私は生徒に次のように語りかけていました。

「縄文時代は約1万5千年も続きました。近現代史よりもはるかに長い歴史ですが、授業では1時間で教え終わります。日本史に限らず、どの科目も中学校や高校ではほんの一部分しか学べません。大学へ進学したら広い視野を養い、興味のある分野をどこまでも深く研究する喜びを知ってください」

 授業では、私が集めた石器や土器の標本を生徒に見せていました。本来なら博物館のガラスの向こうにあるこれらに触れることで、太古の人々の息遣いを感じてもらえたらと思ったからです。

 振り返ると、教員は発掘調査と同じくらい醍醐味のある仕事です。「先生が教えてくださったから今の自分があります」「自分に自信がなかったのに、先生の言葉に勇気づけられました」「やさしく辛抱強く教えてくださって感謝しかありません」。卒業生からそう言ってもらえるたび、私は教員になって良かったと心から思っています。

創立の原点に立ち返り
校訓に基づく人間教育を

 今年の春、私は新校長になりました。就任にあたり、自分が創立者である松﨑庚子良の血を引く者であることに大きな責任と自負を感じました。そこで、本校の原点に改めて立ち返ろうと思い、校訓である『愛・知・和』を私なりに読み取って、新しい解釈をしてみました。

『愛』は「利他の心」です。生徒には自分だけでなく他の人たちも幸せにできる人になってほしいと思っています。『知』は情報があふれる社会を生き抜くための「豊かな知性や知識に基づく的確な判断」です。『和』は『愛』と『知』を調和させて「多様性」を認める心です。自分とは違う価値観を受け入れ、平和な社会に貢献できる生徒を育てたいと思います。

 本校には“教えたい”という熱く純粋な思いにあふれた教員が多く、生徒と教員、そして生徒同士が真剣に向き合い、やわらかみと深みのある探究活動を日々、実践しています。個性を認め合い、互いに響き合いながら学ぶ日々を通して、未来を切り拓く力を培ってまいります。

[沿革]
 1942(昭和17)年創設の大宮洋裁女学校が前身。1959年、大宮開成高等学校を設立し、校舎を現在地(さいたま市大宮区堀の内町)へ移転。1997(平成9)年に共学化し、2005年に中高一貫部を開設。今年2022年には創立80周年を迎えた。

(この記事は『私立中高進学通信2022年7月号』に掲載しました。)

進学通信 2022年7月号
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