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私立中高進学通信

2021年4・5月合併号

実践報告 私学の授業

共立女子中学校

アニメ制作で学ぶ映像表現
生徒を伸ばす「教える美術教育」

約40台のMacを新たに導入
Macの導入と同時にコンピュータ演習室を改修。教員や助手の目も届きやすく、指導しやすくなりました。

Macの導入と同時にコンピュータ演習室を改修。
教員や助手の目も届きやすく、指導しやすくなりました。

油絵とPhotoshop®の
両方を中1から学ぶ

 30年以上前から美術教育に力を入れている同校では、中学から油絵などの古典的な技法を学ぶことに加え、コンピュータ演習にも力を入れています。中1ではフォトレタッチソフトの「Photoshop®」を使って、写真を合成した空想画に挑戦し、中2ではグラフィックソフトの「Illustrator®」を使って、ベジェ曲線の基本的な描き方を習い、CDジャケットのデザインに取り組みます。2020年末には、約40台のMacを新たに導入しました。

「中学生の頃から専門的なツールを使えば、将来にも役立つでしょう。コンピュータもWindowsからMacに入れ換えたため、描画速度が上がり、より使いやすくなったと思います」

 と美術科の上田祥晴先生。古典的な技法と、コンピュータ演習の両方を行う意図について伺いました。

「生徒によって、“コンピュータが得意” “絵具を使った彩色が苦手”など、得手不得手が異なります。立体物、ファインアートなど幅広い創作にチャレンジしてもらい、そのなかから『この分野なら力を伸ばせる』と、飛躍できる機会を見つけてほしいと考えています。
 ひとつでも得意な分野が見つかれば、美術はとても楽しい教科になるはずです」

10秒60コマのアニメを
生徒一人ひとりが制作

 中3になると、生徒たちは60コマのアニメーションを制作します。

「授業では、まず芸術表現における映像の役割を解説し、アートアニメーションを鑑賞します。その後、iPadのアニメ制作アプリを使って、手描きのアニメを複数制作します。その中から応用できそうなアイデアを絵コンテにして、青い丸が10秒間60コマにわたって変化していくアニメを作っていきます」

 アニメ制作では、画面中央にある青い丸を思い思いに変化させ、10秒間の動画に仕上げていきます。生徒たちは、はじめに絵コンテを作り、1人1台所有する iPadで下描きしたうえで、「Photoshop®」を使って青い丸をベースにした絵を1コマずつ描いていきます。小さな青い丸が大きく膨らんだり、半分に割れたり、地球に変貌したり、さまざまなアイデアを盛り込んで、60コマで変化させていくのです。

 生徒が使うコンピュータの隣には、サブモニターが設置されていて、美術科教員がソフトを操作する様子をすぐ横で見て、確認できるようにしています。助手のサポートもあるため、コンピュータに慣れていない生徒でも、操作に戸惑うことはありません。

ひとつの課題に時間をかけ
創作にじっくり向き合う

 5~6時間をかけて、1人1本のアニメを完成させたら、クラス全員分の作品を動画編集ソフトで1本につなげます。アニメの始めと終わりを青い丸で統一しているので、クラス40人分の作品をつなげると、1本のムービーとして鑑賞できるのです。

「60コマのアニメを作るには、60枚の絵を描く必要があります。60枚の絵を、変化をつけながら描くことは、生徒にとって高い山を見上げるような感覚でしょう。 最初のうちは、提出期限に間に合わせるために、無難にアイデアをまとめようとします。しかし、実際に作り始めると、新たな発想がわいてきて、より高度な表現に挑戦したくなっていくのです。
 美術科では、ひとつの課題に時間をかけるようにしています。アニメ制作でもじっくりと向き合い、作っては壊しを繰り返すことで、より高い次元の制作へとつなげてほしいと思っています」(上田先生)

青い丸を60コマで自由に変化させていきます。生徒によって、ユニークな発想が飛び出すことも。完成が楽しみです。青い丸を60コマで自由に変化させていきます。生徒によって、ユニークな発想が飛び出すことも。完成が楽しみです。
手元のiPadで、あらかじめ準備してきた下描きを表示しています。上田先生のアドバイスを受けながら1コマずつ作成していきます。手元のiPadで、あらかじめ準備してきた下描きを表示しています。上田先生のアドバイスを受けながら1コマずつ作成していきます。
手本を示し理論を説けば
美術の力は必ず伸びる
自画像を油絵で描く生徒たち。「人は意外と自分の姿をわかっていません。中学生のうちに、自分を見つめる客観的な目を養ってほしいと思います」(上田先生)自画像を油絵で描く生徒たち。「人は意外と自分の姿をわかっていません。中学生のうちに、自分を見つめる客観的な目を養ってほしいと思います」(上田先生)

 油絵やコンピュータ・グラフィックの基礎に中1から取り組む背景には、「教える美術教育」という同校の基本姿勢があります。

「国語や数学と違い、美術の授業では教員が絵の描き方や表現の具体的な方法を教えずに、生徒が『自分には才能がない』と感じてしまうケースが多いように思います。しかし、絵を描くことも、理論を教えれば生徒たちは必ず上達します。
 本校では、教員が手本を実演して具体的に方法論を説明し、技術的なサポートをしながら理論を教えています。自分の絵を見て『うまくなった!』と感じる瞬間は、生徒にとって何よりの喜びになるでしょう」(上田先生)

 また、油絵の取り組みには、じっくりとものづくりに向き合ってほしいという意図があります。

「油絵具はゆっくり乾くので、じっくり時間をかけて描き込めるのが大きな特徴です。これまで使用していたアクリル絵具は乾くと量が減りますが、油絵具は酸化して固まるため量が減らず、厚みのある独特のタッチを残すこともできます。
 中学生のうちに油絵具に慣れておけば、高校では段違いに高度な制作ができるはず。中1からデッサンにも力を入れているので、より本格的な作品が生まれることを期待しています」

 校内には草間彌生氏、山口薫氏をはじめとする著名なアーティストの原画作品が飾られ、日常的に芸術に触れられるのも同校の大きな魅力です。

 美術に親しむことは、幸せな生き方にもつながると上田先生は話します。

「美しいものがわかるか否かは、人生において大きな意味を持つと思います。美の基準を知り、豊かで幸せな人生を送ってほしいと願っています」

ココも注目!
ほめて伸ばす教育で、確かな力をつける

 生徒の理解力・表現力は、わずか1年間で大きく変化します。例えば、中3生にマンガ表現を教えてもなかなか理解できませんが、高1生はスムーズに表現技法を習得します。このように、生徒の反応を見ながら適したカリキュラムを調整しています。本校では、どんな場面でもできるだけ褒めて力を伸ばすことを大切にしています。能力を開花させ、美術・芸術系大学に進学する生徒も増えています。(美術科/上田祥晴先生)

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