私立中高進学通信
2021年4・5月合併号
注目! News and Topics
東京農業大学第三高等学校附属中学校
『次世代型学力』を軸とした教育改革で
“自分に誇れる未来”をつかむ力を育成

教頭の西山明人先生が担当する中3の『論理の時間』の授業。
2021年の大学入学共通テストの問題を見た西山先生は、「改めて論理的思考力の重要性を痛感した」と話します。
大きく変化するこれからの社会を生き抜くために、思考力や主体性、創造力を伴う学力が求められています。こうした『次世代型学力』の育成を軸とした教育改革を、同校では2020年から推進しています。この改革の柱は『大胆なグローバル化』『実学教育の強化』『学内完結型学習体制』の3本です。校長の神山達人先生に話を聞きました。
オーストラリアの州立校で
希望の専門分野を学ぶ

「本校では、高度な英語力だけでなく、世界基準のコミュニケーション能力を身につけるために、『大胆なグローバル化』として多彩なプログラムを組んでいます。中1では、留学生と英語で交流する『イングリッシュワークショップ』を実施し、異文化に触れ、外国の人たちと心の距離を縮める3日間を過ごします。文化祭では保護者や来場者に自分やクラスメートについて、英語で紹介する取り組みもあります。
中2では『グローバルイングリッシュキャンプ』を実施しています。新潟県魚沼市で世界各国の留学生と3日間、寝食をともにしながら、さまざまな体験をする宿泊型の研修です。このキャンプでは、留学生による指導で、英語劇を生徒の力で作り上げ、後日、文化祭で発表します。
中3では、希望者に向けて『クイーンズランド州立校語学研修』を実施しています。オーストラリアにある同州の教育省と提携しており、兄弟校である東京農業大学第一や他校の中3生と一緒に、語学研修やホームステイを経験します。
州立校では、生徒が希望する専門分野の授業に参加することもできます。中3生の6割が参加する人気の研修です」(神山校長先生)
新型コロナウイルスがおさまるまで、こうしたプログラムは休止していますが、その代わりにネイティブ教員からマンツーマンでレッスンを受ける「オンライン英会話」を開講し、留学生やクイーンズランド州立校の生徒との交流もオンラインで行っています。
醸造体験に続いて
ヒラメの養殖研究を

「『実学教育の強化』に関しては、中1でダイズを栽培して味噌を作る醸造体験を、中2で稲作の体験をします。さらに、中2では2020年度より、校内でヒラメの養殖研究を始めました。いずれもグループで観察データの集積や分析をしています。
中3では体験型修学旅行で北海道へ行き、新巻鮭の加工に挑戦したり、鮭の遡上を観察したりします。また、網走市にある東京農業大学の北海道オホーツクキャンパスも訪問します(※)。そして、どの学年も、これらの実学で得た成果をまとめて、文化祭で発表しています」(神山校長先生)
こうした学校改革と歩調を合わせてスタートしたのが、教頭の西山明人先生が担当する『論理の時間』の授業です。大学入試改革で求められる思考力や表現力を養うことを目的に、中学3学年が読解力・発信力・ディベート力のスキルを体系的に学びます。この授業で身につけた力は文化祭の発表に活かされるほか、英語で考えたり、表現したりする力を補強する役割も果たしています。
「『学内完結型学習体制』に関しては、第一志望の大学に現役合格できるように、本校で勉強のすべてを解決できる体制を整えています。そのひとつが予備校の先生方が来校して生徒に教える『学内塾』です。2020年度は希望者対象でしたが、今春の新入生から必修で導入します。予備校の先生方と本校の教員が生徒一人ひとりの成績を共有して、二人三脚で成績向上をサポートしていきます。
『大胆なグローバル化』『実学教育の強化』『学内完結型学習体制』、そして『論理の時間』を連動させ、身につけた『次世代型学力』により、生徒自らが誇れる未来をつかめるよう、一丸となって指導していきます」(神山校長先生)
※2020年度はコロナ禍のためいずれも中止となりました。

『次世代型学力』の概念図。
改革の3つの柱を土台にして、これからの社会を生き抜く力や柔軟な対応力を養い、
生徒一人ひとりが「自分に誇れる未来」を創造することをめざします。
『究理探新』を教育改革によってさらに推進
校長 神山達人先生

大学入試改革がスタートし、中学校の学習指導要領も改訂されます。「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」「主体的に学習に取り組む態度」といった学力の3要素が、これまで以上に求められます。
さらに、2022年からは高校に「探究」科目が導入されます。本校の創立は1985年。本校の初代校長の吉野博太郎が校訓を『不屈・探究・信頼』と定めたのは、まさに先見の明があったといえるでしょう。
本校の実学教育では、さまざまな実験や体験を通して、疑問や課題を発見し、道理や法則を学びます。この『究理探新』を、教育改革によってさらに推進していきたいと考えています。
論理的な思考力を、生き抜く力へ
教頭 西山明人先生

生徒が学んだり、考えたり、発表したりする時に使うのは日本語です。そこで、論理的な文章を書く力を鍛えるために、2018年度に『論理の時間』の授業をスタートさせました。
生徒には段落の役割や文章の組み立て方など、小論文の型を教えていきます。そして「(家の)手伝い」「体育祭」「文化祭」「課外活動」「1年間の思い出」をテーマとして年に5回、400字の小論文を書いてもらいます。
生徒は学年が上がるにしたがって、物事の見方が精密になり、書く力もついていきます。この力を、未来を生き抜く力へと発展させていけたらと思っています。
(この記事は『私立中高進学通信2021年4・5月合併号』に掲載しました。)
東京農業大学第三高等学校附属中学校
〒355-0005 埼玉県東松山市松山1400-1
TEL:0493-24-4611
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