私立中高進学通信
2024年7月号
校長先生はこんな人!
昭和学院中学校
6年間の学校生活で
最も楽しくあるべきは“授業”
その実現に向けた取り組みを
山本 良和 (やまもと・よしかず)校長先生
1963(昭和38)年、高知県生まれ。
土佐高等学校、高知大学教育学部を経て、高知市立大津小学校に勤務。
その後、鳴門教育大学大学院修士課程を修了し、高知大学教育学部附属小学校を経て、
筑波大学附属小学校にて21年間、算数教育の研究に従事。
国内のみならず欧米、中米、アジア(全16カ国)において算数授業や講演を行う。
2022(令和4)年より昭和学院小学校校長を務め、2024年4月より昭和学院中学校・高等学校の校長に就任。
高校恩師の授業が
教員への道を導いた
私が教員を志したのは高校時代のことでした。きっかけは地理の授業です。担当された先生は生徒の興味・関心を引き出す術に長けていて、授業そのものがとても面白く、みるみる地理が好きになりました。と同時に、自然と「私もこんな素晴らしい授業ができる教員になりたい」と思うようになったのです。
私は専業農家の長男でしたが、「家を継がずとも自分の好きなことをやりなさい」と父の後押しを受けて、高知大学教育学部に進学。恩師にならい、中高の社会科・地理を専攻し、中高教諭の資格と、さらに小学校教諭の資格も得ました。教員採用試験を受ける時期になり、私はある決断をしました。本来であれば中学か高校の教諭をめざすべきところですが、私が選んだのは小学校教諭の道でした。
その選択には理由があります。大学時代、高校と小学校へ教育実習に行きましたが、小学校には座学メインの高校にはない、衝撃的な授業風景があったからです。実習では、私が一生懸命作成した絵地図の教材に、子どもたちは目を輝かせて素直に反応を返してくれます。さらに印象深かったのは、実習生を担当した音楽の先生の授業でした。そこでは、教員が言葉で指示することは一切なく、鍵盤楽器を弾くだけで子どもたちが反応し、楽しい笑顔の授業が進行していました。これこそが教育の力であり、私がめざしたいものだと確信しました。
私は、学生時代に地理と同じくらい数学の勉強に励んでいました。算数こそ子どもの論理的思考を育み、知的好奇心を呼び起こす最適な教科だと考え、算数を専門教科とする小学校教諭になりました。教育で最も大切にすべきは能動的な “授業”である。その考えは、今も変わることなく私の教育観の根本にあります。
“学び”に恵まれていない
中米諸国で感じたこと
本学院へ赴任する前に21年間勤めた筑波大学附属小学校では、さまざまな経験を積みました。全国各地の小学校で子どもたちに授業をし、教員向けの講演を行う国内活動、そして、アメリカやデンマーク、フィンランド、中米諸国でも子どもたちや教員に向けた算数の授業や講演を多数行いました。
なかでも日本の教育について深く考えさせられたのは、JICA(国際協力機構)の要請で訪れた中米諸国でした。国を豊かにする “考える力”を育むため、算数・数学教育の遅れを改善するプロジェクトの一環です。経済的に貧しく、治安も不安定で常に命の危険がある国々では、学校に通えるだけで子どもたちは幸せです。実際に授業中も、答えがわからなくても積極的に手を挙げ発言します。学ぶことへの素直な喜びがあり、知的好奇心を満たしたいという意欲にあふれていました。
一方で日本の子どもたちは、国内が平和にもかかわらず、勉強を “やらされている”感覚が強く、自ら学ぶ意欲が乏しいように感じます。それはとてももったいないことです。近年の中高教育では探究の時間を設け、主体的な学びを提唱していますが、それが探究の時間だけで完結してしまっては意味がありません。真に大切なのは普段の授業なのです。
行事や部活動、友人との交流など、学校に通う楽しみは人それぞれだと思いますが、生徒が学校で一番長く時間を費やすのは授業です。その時間を最も楽しいと感じられる授業、笑顔が生まれる授業を、小学校教員として培ったノウハウをもとに教員の皆さんと一緒に作り上げたい。それが校長職を拝命した私の使命と感じます。
生徒の夢を最適化する
カリキュラム内容の充実を
私は2023年度まで昭和学院小学校の校長、2024年4月より中学・高校の校長となり、今も各学年、各クラスの授業見学をずっと行っています。そこでわかったことは、本学院の生徒がとても素直で真面目であることです。だからこそ、「この子たちの学力、人間力はもっと伸ばすことができる」と確信しています。
中高の学びは小学校よりも専門性が格段に高く、ICT化も進んでいます。だからこそ教員と生徒が親密なコミュニケーションを取りながら一緒に考え、成長しながら授業を楽しむことが大切だと考えます。特に本校は、中学は4コース、高校では5コース制を敷き、生徒の個性や自分らしさ、興味・関心から、めざす夢の実現を最適化できるカリキュラムを用意しています。その素晴らしい器を活かすためにも、個々の授業の充実を、これからも自分の命題として取り組んでいきたいと思います。
[沿革]
1940(昭和15)年、昭和女子商業学校として開校。学制改革により、1947年に昭和学院中学校、1948年に同高等学校を開校。2003(平成15)年、男女共学制が始まる。2010年、新キャンパス計画のもと新校舎が完成。2020(令和2)年、創立80周年を迎え、新制服を採用。同時に、主体的な学びを育み、生徒一人ひとりの潜在的能力や可能性に焦点を絞った新コース制をスタート。
(この記事は『私立中高進学通信2024年7月号』に掲載しました。)
昭和学院中学校
〒272-0823 千葉県市川市東菅野2-17-1
TEL:047-323-4171
進学通信掲載情報
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