私立中高進学通信
2021年8月号
みんなの自慢のコーチ
女子聖学院中学校
生徒の主体性を重んじた指導で
音楽的・人間的成長を促す
吹奏楽部コーチ・指導者 岡本 謙先生
同校チャペルにて。奏者としても一流の岡本先生。
撮影時にもすてきな音色を聴かせてくださいました。
和気あいあいとした雰囲気ながら、吹奏楽コンクールで確かな実績を積み上げている同校。
コーチを務める岡本謙先生に、生徒の主体性を引き出す指導について伺いました。
生徒の主体的な活動を
応援する気持ちで指導
中1から高2まで約70名の部員を抱える同校の吹奏楽部は、中高合同で日々練習に励んでいます。例年の活動日は月~土曜日ですが、コロナ禍の現在は週4回約1時間の練習を実施。入学式、吹奏楽コンクール、記念祭(文化祭)、クリスマスを祝う会、アンサンブルコンテスト、定期演奏会などで演奏を披露する場も多く、目標を定めて練習に励んでいます。
そんな吹奏楽部で、約4年半前からコーチを務めているのが岡本謙先生です。フルート奏者の岡本先生は、シエナ・ウインドオーケストラ、東京吹奏楽団のメンバーを経て、劇団四季、東宝ミュージカル、宝塚歌劇団のオーケストラプレイヤーとしても活躍。東京国際大学吹奏楽団の音楽助監督も務めるなど、演奏・指導経験が豊富です。
岡本先生がフルートを始めたのは、小4の時のこと。中学で吹奏楽部に入り、さらに熱中していったそうです。
「中2の時に、吹奏楽部でモーツァルトのオペラ『魔笛』の序曲を演奏したんです。顧問の先生がオペラの曲をいろいろ聴かせてくださり、モーツァルトが大好きになりました。そこからどんどんのめり込み、音楽ひと筋になっていきました」
自身も音楽で感動を味わったからこそ、中高生に対しても「音楽を好きになってほしい」という思いで指導をしているそうです。
「音楽を好きになってもらうには、上からの押し付けにならないように注意しています。コーチを引き受ける時も『みんなの部活動だから、みんながやりたいことをやりましょう』と生徒たちと約束しました。生徒の活動を、私が応援するというスタンスを大切にしています」
生徒間で問題を解決し
部員たちの絆を深める
コンクールに向けて厳しい練習を行う吹奏楽部も多い中、同校は和気あいあいとした雰囲気が持ち味です。それでも、部員の思いがひとつになった時、想像以上のパワーを生み出すところが同校ならでは。事実、コンクールやアンサンブルコンテストでは、金賞受賞や都代表選考会進出など優秀な成績を収めています。
「確かに厳しく指導すれば、演奏は上達するかもしれません。でも、部活動を辞めてしまう生徒も出てしまうように思います。生徒が音楽を嫌いになるような事態は、絶対に避けたいと思っています」
心がけているのは、生徒たちの主体性を引き出す指導です。やる気に火がつけば、コツコツ努力する大切さを実感し、音楽的にも精神的にもひと皮むけると岡本先生は話します。
「中1のうちは先輩に甘えっぱなしですが、ある時ガラッと変わる瞬間が訪れます。音楽面で言えば、楽器に息を吹き込んだ瞬間の音色が変わります。吹奏楽の楽器は子ども用、大人用の区別がないため、野球で言えば最初は重たいバットを振っているような状態です。
でも、トレーニングを重ねることで、楽器が応えてくれるようになります。いろいろな音源を聴き、『自分もこういう音を出したい』という一心で練習すると、一線を越えられるんですね。そのためにも『頑張ればここまで行けるよ』と道筋を示すようにしています」
生徒の成長に関しては、次のようなエピソードも話してくれました。
「数年前に打楽器を担当していた、ある中1生のことです。体が小さく楽器に負けていて、練習にも集中できていないため、中2の先輩から相談を受けました。
そこで私は『あの子はまだ精神的に幼いから、少し待ってあげてほしい。そして、ひとつでいいから、何かできたことがあれば褒めてあげて』とお願いしました。その先輩もまだ中学生のため、イライラすることもあるでしょう。ですから『あなたがつらい時は、我慢せず私に話してほしい』とも伝えました
それからしばらくして、後輩の中1の生徒がめざましい変化を見せたのです。ひとりでコツコツ練習できるようになりましたし、演奏も上達しました。彼女たちが高校生になった時には、日本ジュニア管打楽器コンクールのアンサンブル部門で全国大会に進出するほどの成長を遂げました。
主体性をもつことで、人はここまで変わるんだと感動しましたし、指導した先輩も辛抱強く頑張ったと思います」
演奏を通して
生きる姿勢を学ぶ
生徒の努力はもちろん、生徒主体で問題を解決するように促す岡本先生の姿勢が見受けられます。こうした指導により、部員たちの絆も強まるそうです。
「みんなで音楽を奏でる集団ですから、仲間を大事にするのは大前提。『私なんかいなくてもいい』ではなく、一人ひとりが必要とされていることを感じてほしいと思います。
また、吹奏楽ではソロで演奏する機会もあります。責任をもって自己主張し、自分の演奏をまっとうした経験は、社会に出た時にも大きな強みとなるでしょう」
指導を通じて、生徒たちの人間性も養っている岡本先生。優しく穏やかな物腰ですが、その言葉からは芯の通った教育方針が感じられます。
「私は、生徒ができることしか言いません。その代わり、できるはずのことをやらない時は、厳しく指導します。できることをきちんとやらないのは、周りの仲間に対しても失礼。それは音楽に限らず、何に対しても言えることです。演奏を通して、生きるうえでの姿勢も学んでほしいと思います」
吹奏楽部での指導は、岡本先生自身の学びにもつながっており、部員たちと信頼関係を築くことは、双方にとってプラスになっているようです。
「いつか自分のバンドの指導をしたいと思っていたので、本校のコーチになり、私の夢も叶いました。だからこそ、至らないながらも一生懸命取り組んでいます。今後も生徒たちの主体性を重んじて、指導に努めていきたいですね」
(この記事は『私立中高進学通信2021年8月号』に掲載しました。)
女子聖学院中学校
〒114-8574 東京都北区中里3-12-2
TEL:03-3917-2277
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