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私立中高進学通信

2021年8月号

THE VOICE 新校長インタビュー

かえつ有明中学校

豊かな人生の礎を築く中高時代
「共感的対話」を大切にした教育を

前嶋 正秀 (まえじま・まさひで)校長先生
1962年東京都生まれ。大学卒業後公立中学校で教鞭を執った後、
1988年嘉悦女子中・高等学校(現かえつ有明中・高等学校)に英語科教諭として赴任。
2000年から教科主任、学年主任、教務主任を歴任し、2015年教頭に就任。2021年4月より現職。

教員をめざしたのは
「金八先生」がきっかけ
大切にしているもの
  1. 生徒の無限の可能性(学びを深める)
  2. 自分の可能性に気づき始める(学びを深める)
  3. 「豊かな人生」に自覚的になる
  4. 自分に必要なものをつかみとる力が育まれる
  5. 「豊かな人生」を送るための礎ができる

 高2の時に、私の人生を変えたと言っても過言ではないテレビ番組が始まりました。それは、『3年B組金八先生』という学園ドラマです。ドラマの中とはいえ、生徒と本気で向き合う金八先生にあこがれ、「私もこんな先生になりたい」と思ったのです。そこからは将来の仕事は教員と決め、大学で英語を学び、教職課程をとって教員になるための道を進んできました。

 女子校時代の本校に赴任してから33年間、多くの生徒と出会ってきた中で、印象的な生徒たちがいます。

 ずいぶん前のことですが、学校生活の中である疑いをかけられた生徒グループがありました。生徒と日頃から本音でつき合い、彼女たちの心が澄んでいることを知っていた私は、あくまでも彼女たちを信じました。彼女たちは、卒業するときに、「先生のように人を信じられる人間になりたい」と言ってくれました。私にとって宝のような言葉です。卒業後も結婚式に呼んでくれるなど、彼女たちとの付き合いは続いています。

生徒に望むのは
「豊かな人生」を送ること

 私の教員としての究極の願いは、生徒たちに「豊かな人生を送ってほしい」ということです。豊かな人生というと、人によって捉え方はまちまちでしょう。自分の周囲の人、あるいは世界の人が平和に暮らすことが豊かな人生と思う人もいるでしょう。自分自身が社会のために貢献することと考える人もいると思います。

 私はまず、「自分にとって豊かな人生とは何か」に、中高時代に気づいてもらいたいと思っています。生徒たちは無限の可能性を秘めています。学びを深めていくと自分の可能性が見つかり、さらに学びを深めると、自分にとっての豊かな人生に自覚的になってきます。すると、自分には何が足りないのか、何が必要なのかを主体的に考え、自己実現に向けてそれを自分でつかみに行くようになります。そんな力を、中高の6年間で養ってほしいと思うのです。

教育理念につながる
「共感的対話」

 そのために、本校では、「共感的対話」を大切にしています。たとえば、生徒の話を聞く教員は、生徒の言うことをありのまま受け止め、なるべく多様な選択肢を与えるよう意識しています。「先生は自分を否定しない」と思った生徒は、安心して自己表現ができるようになります。それは、自分の考えを持ち、自分の言葉で伝えることにつながっていきます。言い換えれば、これは本校の教育理念にある「主体的に行動できる人間へと成長できる基盤」であり、それが豊かな人生を送るための礎となっていくのです。

多様性あふれる環境で
先進的な取り組みを進める

 本校には、「ディープラーニング」「グローバル」「ダイバーシティ」という3つの教育の特色があり、これらの先進的な取り組みをさらに進め、バージョンアップさせることも必要であると考えています。

 早くからアクティブラーニングに取り組んできた本校では、より「深い学び」を実現する「ディープラーニング」に力を入れています。本校のサイエンス科では、情報を収集・整理・分析し、自分の考えを伝えるプロジェクトをワークショップ形式で行い、科学にとどまらない「学ぶためのスキル」を鍛えています。

 また、英語教育や留学プログラムを充実させるとともに、国際生教育にも力を入れています。国際生とは、帰国生を「国際人」として捉える本校の呼び名です。国際生は全校で300名以上在籍しており、一般生と混合でクラス編成します。多様な人と関わり自分と違う価値観の人と交流する中で、他者を理解し、人間の成長を促す環境です。これは「ダイバーシティ」(=多様性)のある社会で生きていくための主体性やコミュニケーション力を養うためでもあります。

 さらに、共学校である本校では、男子と女子がそれぞれの気質に刺激を受け合い、学びにおいてもそれ以外の場面でも、バランスのとれた学校生活を送っています。異性と話をする中で自分にはない感覚に気づき、人間としての幅が広がると言えるでしょう。

「共感的対話」は、こうした多様性あふれる環境の中でこそ、学びが多いはずです。自分とは違う考えや価値観を受け止め合いながら、コミュニケーションできる人に育っていってほしいですね。

[沿革]
1903年、嘉悦孝が日本で初めて女子を対象とした商業学校を設立。1907年、私立日本女子商業学校と改称。1919年、日本女子商業学校に改称。1952年、嘉悦女子中学校・高等学校と改称。2006年、かえつ有明中学校・高等学校と改称。有明キャンパス新築落成。

進学通信 2021年8月号
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