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私立中高進学通信

2023年1月号

キャリア教育の現場から

品川女子学院中等部

起業体験プログラムで
経営や人とのかかわり方を学ぶ

クラスを株式会社として組織し、文化祭『白ばら祭』で模擬店を運営する同校の起業体験プロジェクト。社会人やOGの力も借りながら生徒が実践的に学ぶ取り組みを取材しました。
代表メンバー写真。左からIさん、Yさん、Mさん、Kさん、Sさんが写っている。

左からIさん、Yさん、Mさん、Kさん、Sさんの代表メンバー。
社名はお客様に晴れた日のような温かい気持ちになっていただきたいという思いから「Sunday」に。
3年D組の「サンデー」と掛けています。企業理念は『リラックスできる時間づくりを支えます』

中等部校長の神谷 岳先生が写っている。中等部校長
神谷 岳先生

 28歳を仮のゴールに設定し、理想とする未来の実現のために何を選び、どう生きるのかを考える『28Project』を実施している同校。その一環として行われている起業体験プログラムでは、同校の文化祭『白ばら祭』に向けて、生徒が模擬店を株式会社として"起業"します。2022年9月に開催された『白ばら祭』でも、クラス単位で株式会社を設立し、本物の企業のような運営に取り組みました。

「本校では、生徒が能動的に人生を設計できるように、さまざまなプログラムを行っています。『白ばら祭』の起業体験プログラムは20年ほど前から行っている実績のある取り組みです。いかに型にはまったものにしないかが課題で、毎年見ていると何か新しいことを始めるクラスが出てきます。例えば、商品を売るのではなく体験を売る企業や、商品でも体験でもなく、ほかの企業が売る商品の宣伝をしてきて、契約数に応じて利益を得る企業も誕生するなどアップグレードしています。生徒からはこちらが予想もしないアイデアが飛び出しており、私たちも楽しみにしています」(中等部校長/神谷 岳先生)

 プログラムには中3生から高2生までが参加。保護者やOGからなるサポート委員や企業の協力を得て、生徒が会社を運営します。企業活動するなかで、社会で活躍するさまざまな職種の人と相談したり、交渉したりします。これが、生徒にとってまたとない学習の機会となります。

「中3生の場合、当初は学校が提携先の企業を決める形式でしたが、2021年度から生徒たち自身で企業探しをしています。中1からアイデアを形にする『デザイン思考』を学び、身近な問題と社会のかかわりを考えさせるようにしてきた学年なので、生徒に任せてみることにしました。今年は9月の『白ばら祭』で、中3の株式会社Sundayが、ソープフラワーを販売するプランで最優秀賞を獲得しました。毎年プログラムの内容をアップデートしていくなかでこの取り組みの成果を実感できて、指導する側としてもうれしい限りです」

 このプログラムがきっかけで社会に出てから実際に起業したり、個人事業主として働く卒業生も増えているそうです。

「卒業生から新規事業を立ち上げた話や、会社で楽しく働いている話を耳にします。本校の生徒は、自分のやりたいことを社会貢献に結びつけられる視点をもっています。キャリア教育の一環として社会人との接点も多く、彼らからの評価も生徒たちの自信になっています。ご協力いただいた企業の方が、『卒業後は入社を』などと言ってくださることもあり、励みになっています」

プロから的確な指摘を受け全力で運営
みごと最優秀賞を受賞
商品を包む作業中の生徒の様子。ソープフラワーは花びらが石鹸でできていて、石鹸としては使わず部屋に飾って楽しみます。バラ売りと3本セットで販売しました。商品を包む作業中の生徒。ソープフラワーは花びらが石鹸でできていて、石鹸としては使わず部屋に飾って楽しみます。バラ売りと3本セットで販売しました。

 2022年9月18日(日)、19日(祝・月)に開催された『白ばら祭』では、計17の企業がそれぞれの企業理念のもとに会社を運営しました。「プレゼンテーション力」「企画実行力」「業績力」「広報力」の4項目の総合評価で1位となった、(株)Sunday代表メンバーの中3生にインタビュー。「癒し」を企業理念に、ソープフラワーを販売した(株)Sundayの会社設立から事業計画の策定、準備、『白ばら祭』当日の運営などについて話を聞きました。

代表取締役社長 Mさん(中3)

「6月の起業体験プレゼンテーションでは、サポート委員の方に『なぜソープフラワーを売りたいのか』ということや、企業理念などをアピールしました。サポート委員には会計士や会社経営者の方もいて、当日は『企業理念がわかりにくい』『店内の動線が良くない』など、プロの目線から的確なご指摘やアドバイスをいただきました。『白ばら祭』終了後に、株主総会を開いて社員から解散の承認を得るのですが、最後に全員から拍手をもらい、感動して泣いてしまいました。とても良い経験ができたので、また参加したいです」

会計長 Iさん(中3)

「会計長として私が今回の起業プロジェクトで気をつけたのは、計算ミスをしないこと、領収書をなくさないこと、お金の動きは必ずメモをとることの3点でした。社員全員から500円ずつ出資してもらっているので、その資金を管理するのは責任が重く、大変なことだと感じました。『白ばら祭』1日目の決算作業は会計係の3人と担任の安藤先生で行いましたが、その日は結構遅くまで作業をしていました。商品が完売して、配当が一人あたり2500円になったのはとてもうれしかったです。最終的にミスなく会計できたことも、本当に良かったと思います」

広報長 Sさん(中3)

「私の役割は会議の議事録や、活動報告書の作成です。企画内容や商品の紹介をまとめた資料の作成では、文章やデザインも企業イメージにつながるので、細かいところまでとても気を遣いました。議事録を作成する時も、みんなの意見がもれなく入っているかを確認しながらまとめました。今まで学校の行事などで役職についたことはなかったのですが、今回経験して楽しさを知ったので、役職に対する抵抗感がなくなりました。今後、機会があったらまた挑戦してみたいと思います」

マネージャー Kさん(中3)

「クラスTシャツの発注を担当しました。デザインについての要望を、電話やSNSで業者の方に伝えました。ソープフラワーのラッピング用資材の買い出しは、経費削減のために1人で行いましたが、量が多かったので大変でした。商品の販売のほかに、「癒し」を探究したポスター展示も行いました。展示方法を考えるための専門家へのインタビューも、交通費を使わないようオンラインで行うなど、コスト意識は徹底していました。私は起業体験プログラムに興味をもってこの学校に入学したので、参加できてうれしかったです。来年も何らかの役職で参加したいと思います」

マネージャー Yさん(中3)

「私は商品の在庫管理を担当しました。初日に1時間で半数が売れてしまい、うれしくはあったのですが、運営としては品切れは良くないので、時間ごとに販売数を調整しました。また、店舗の動線の悪さについてご指摘があり、緊急会議を開いて2日目の朝に修正しました。取締役メンバーで決めたことがほかの社員に伝わらなかったり、意見の食い違いが起こったりした時に、双方の意見をよく聞くように心がけました。みんなの意見を冷静に聞いてメンバーに伝えることができたので、自分に自信がつきました」

ストレスと癒しの関係を調べて教室内に掲出している様子を写している。「癒し」をコンセプトにした商品なので、ストレスと癒しの関係を調べて教室内に掲出し、商品価値を高めました。
生花のように枯れることなく、優しい香りに癒されるソープフラワー。商品の良さが伝わるように、販売ブースも美しく飾りました。
白ばら祭で使用するポップを作っている様子を撮影している。

『白ばら祭』当日は、その日に予定した販売個数を売り切るため、ポップにも工夫を凝らしました。

今回の体験を活かして一歩踏み出せる人に
3年D組担任 安藤栄里子先生

『白ばら祭』で最優秀賞を受賞した要因は、クラスの個性をうまく調和できたことと、癒しを提供するというテーマの力だと思います。生徒たちは活動を通して、仲間と協力することの大切さを知り、自分の得意なことを活かして貢献するという貴重な体験ができたと思います。今回培った自信を胸に、興味を抱いたことに対して一歩前に踏み出し、自分の進む道を自分で切り拓いていく気概のある人になってほしいです。

進学通信 2023年1月号
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