私立中高進学通信
2025年1月号
心豊かに 芸術・情操教育
東京女学館中学校
社会問題をテーマに思考を深め
発想力を鍛える新科目「芸術A・B」

思い思いに取り組む制作風景。右奥は同校システム管理担当の近江哲男さん。
同校のシステム管理担当者からデジタル技術面のサポートが受けられます。
後ろの壁に飾られているのは、昨年の体育祭のために作った大きなポスター。
教員を人気アニメのキャラクターになぞらえ、全校生徒を沸かせたそうです。
美術・音楽・書道の3科目を融合して芸術表現を探究する「芸術A・B」は、従来の枠組みを越えた同校オリジナルの新科目です。創立記念祭で展示する作品づくりに余念のない、高3「芸術B」の授業を取材しました。
芸術を俯瞰した
新科目がスタート

教育目標にある「高い品性」を育てるため、感性を育む芸術教育にも注力している東京女学館。高校では2023年から、従来の美術・音楽・書道といった科目別ではなく、広い視野で芸術を学ぶ「芸術A・B」を新設。高2「芸術A」、高3「芸術B」は、自由な発想と多角的な視野を身につけるSTEAM教育とも連動した、新しい独自科目です。この新科目を誕生させるまで、芸術科の教員間で何度も話し合いを重ねたそうです。
「『これまでの美術・音楽・書道の授業は、技術を磨くことに偏りすぎてはいないか』『時代は急速に変わっているのに、芸術科の授業は10年前と変わっていないのではないか』といった議論の末、“本来は科目にわけられない芸術を、俯瞰して捉える視点を生徒たちにもってほしい”とスタートしたのが『芸術A・B』という新科目です」(音楽科/松本春佳先生)
同年4月、美術・音楽・書道のエッセンスを融合させた、高2「芸術A」がスタートしました。

「まず1学期には、頭を柔らかくするために思考のエクササイズをし、紙の変容性に着目した“紙の帽子”を作りました。2学期はライト・ドローイング(※)、3学期は映像に音をつけた自己紹介動画を制作しました。こうした授業のなかでI C Tも活用し、画像や動画、音楽などを融合させた独創的表現を学びました。『芸術A』を選択した生徒の中には、高3でも『芸術B』を選択している生徒がいます」(美術科/郷治真悠子先生)
「芸術B」では、国立新美術館で4月から開催していた、さまざまな社会事象を現代美術を通して考える展覧会「遠距離現在 Universal/Remote」を2度鑑賞しました。
「1度目、2度目と生徒にレポートを提出してもらいました。初回は『よくわからない』の一言だった生徒が、2度目の鑑賞後には長文のレポートを書いてくれるなど、成長を実感しました。その後全員でディスカッションをしたことで、生徒たちは作品を通して自分や社会の問題に気づいたようです。そして考え方が近い生徒同士でグループになり、創立記念祭で展示する作品制作をスタートさせました」(郷治先生)
担当する教員たちは、1人が授業を展開する時はほかの2人が生徒のサポートに回るなど、役割分担で授業を進めています。
「生徒たちはそれぞれが自分自身を見つめるところから制作をスタートさせています。視野を広くもち学び続けながら、より良い授業を展開していきたいと思っています」(書道科/吉田修先生)
※ライト・ドローイング……「芸術A」では、書道の“線をかく”という行為を拡大して考え、サイリウム(ペンライト)で空中に文字を描き、その軌跡を撮影する授業を行いました。
社会問題をテーマに
作品を制作
この日、生徒たちが制作していたのは、「フェイクニュース」「ルッキズム」「文化の継承」「思春期」「美の儚さ」という5テーマの作品です。「文化の継承」(下の写真 1)は、花がもつ限りある美を体感してほしい、「フェイクニュース」(下の写真 2)は、デマに惑わされずに真実のニュースを受け取ってほしい、「ルッキズム」(下の写真 3 4)は、見た目ではなく人間性を見てほしいなど、生徒たちはそれぞれのメッセージを込めた作品づくりに集中していました。
最後にメッセージをいただきました。
「昨年から始めた『芸術A』の授業は教員にとってもチャレンジでしたが、生徒の成長は著しく、ディスカッションでも堂々と自分の意見を述べるようになったことをうれしく感じます。東京女学館で、他校にはない芸術の授業を受けてみませんか」(郷治先生)
「東京女学館には長い歴史がありますが、創立時から時代の最先端をいく教育を行ってきました。これからも、中高生の創造力を無限に広げる教育をしていきたいです」(松本先生)
「東京女学館は、いろいろな生徒が自分らしく学び、育つことのできる場所ではないでしょうか。興味をもった人はぜひ説明会に参加して、本校の雰囲気を体感してください」(吉田先生)

「華道部で活動した6年間の卒業制作」と語るO・Mさん。創立記念祭に訪れた人が手作りの造花を花器に挿し、みんなで作品を完成させる体験型です。完成後の作品は映像に残します。

新聞記事などを切り抜いてパネルにしたり、テグスを使って天井から吊るしたりして、情報に囲まれている現代を表現した「フェイクニュース」。

人体模型にかけるレースのショールを手に。「見た目で人を判断しないで」と、ルッキズムについて考えさせる作品です。

粘土と針金で組み立てた人体模型の中に、綿を詰めたストッキング製の内臓を入れます。リアルさを追求して色にこだわり、2週間かけて染め上げたそうです。


(この記事は『私立中高進学通信2025年1月号』に掲載しました。)
東京女学館中学校
〒150-0012 東京都渋谷区広尾3-7-16
TEL:03-3400-0867
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