私立中高進学通信
2023年11月号
校長先生はこんな人!
東京女学館中学校
時代の変化を感じ取れ
豊かな感性を磨く
『芸術』を学ぶ大切さ
渡部 さなえ (わたなべ・さなえ)校長先生
1959(昭和34)年生まれ。群馬県出身。
栃木県立栃木女子高等学校卒業後、女子美術大学芸術学部 美術学科に進学。
同大学卒業後、一般企業の広報室に勤務。
その後、千葉県の市立中学校、東京女学館中学校の美術科講師を経て、1996(平成8)年、
東京女学館中学校・高等学校の美術科教諭となる。
教頭、副校長を歴任し、2020(令和2)年、校長に就任。
(生徒たちの作品が並ぶ美術室にて撮影)
画家になる夢を諦めず
仕事との両立をめざす
女子美術大学の美術学科で油絵を学んでいた頃、私の夢は画家として生きることでした。しかし、絵を志すなかで、ほんの一握りの人しか成功することができない芸術の世界の厳しさを、日々実感してもいたのです。それでもライフワークとして絵画を続けたかった私は、毎年2回、作品を展覧会に出し、働きながら絵を描き続ける道を選びました。画家活動は今もなお継続しています。
私が大学を卒業した当時は、4年制大学を卒業した女性にとって、就職すること自体が冬の時代でした。高卒、短大卒と違い「4大卒はすぐ結婚して辞めてしまう。短大卒なら採用します」と言われることもたびたびでした。
私は運良くある企業に就職し、広報職として7年間勤務しましたが、入社当時は「いったい何年もつだろう?」という目で見られていたと後で知り、驚いたものです。
女性の社会進出への課題は、時代とともに変化します。今女子校で生徒を見守る立場になって振り返ってみると、より考えさせられるものがあります。
パワフルな生徒との出会いが
教員への道を拓いてくれた
画家になりたいという思いが強かった私が、教育に携わるようになったのは、結婚により生活パターンが変わったことがきっかけでした。都心部への通勤が難しくなったため、大学時代に取得した教員免許を活用し、公立中学校で美術の非常勤講師として働き始めました。
そこで出会ったのがパワフルな生徒たちです。想定外の素晴らしい作品を創る生徒、素敵な言葉を紡ぎ出す生徒…。彼らと触れ合うなかで、教員という職業にとても魅力を感じたのです。
その後、東京女学館で美術教員をしていた親友が、2年間海外留学をすることになり、私が引き継ぐ形で講師として本校に赴任しました。当初は短期の約束で始まった講師生活でしたが、放課後も学校に残って一生懸命に課題制作へ打ち込む熱心な生徒たちの姿に感銘を受け、ますます教員という仕事にやりがいを感じたのです。
その後、友人は長く海外で過ごすことになり、私も本校の専任美術教員として在籍することに。教頭、副校長を経て、2020年より校長職を拝命しました。大学時代には予想していなかった立場で教育に携わることになったのも、素晴らしい生徒との出会いや人とのご縁があったからだと思います。
正直なところ、初めは校長という重責を担うことに葛藤がありました。ですが、本校が掲げる『主体性×協働性×問題解決力を養うインクルーシブリーダーシップ』という伝統ある目標を次世代につないでいくことが、私の使命だと捉えました。同時期にコロナ禍となり、働き方改革や少子化など新たな課題も表出しています。
新しい時代の流れに沿って、私たち教員も、より良く変わりながら生徒を育てなければならない。その自覚が、本校だからこその教育を推進する力になっています。
新教科『芸術』を
STEAM教育と連動
本校の教育において、私が特に重きをおいていることがいくつかあります。その一つは、芸術によって、世の中の変化を敏感に感じ取る豊かな感性を磨くことの大切さです。画家を志した頃から、芸術により深く関わるためには社会との接点が必要だという考えを、私はずっと胸に刻んできました。中高教育の目的は、難関大学へと進学できるスキルを身につけさせることではありません。進路選択で芸術科目が軽視されがちなことを、私は以前から憂いていました。
そこで2023(令和5)年度より本校では、高1・高2生を対象に音楽・美術・書道を融合した新教科『芸術A・B』を新設しました。理科的思考や数学的発想など他教科での学びとも結び付け、個人の自由な発想と多角的な視野を身につけるカリキュラムとなっています。
これは本校が注力し、また探究能力が必要とされる大学入試でも力を発揮できる、教科横断型のSTEAM教育にも直結します。都心部に立地する本校ならではの取り組みとして、学校の垣根を越えたワークショップ、卒業生を含むビジネスパーソンや地域と深い結び付きのある芸術家などを招いた講演や授業も行っています。
東京女学館のパブリックイメージとは異なるかもしれませんが、本校の生徒は皆、とても元気で、自主性と活気に満ちた学校生活を送っています。そんな生徒たちがより健やかに6年間を過ごし、品性と豊かな心を育んでくれることを、私は願ってやみません。
[沿革]
1888(明治21)年、『諸外国の人々と対等に交際できる国際性を備えた、知性豊かな気品ある女性の育成』をめざして、永田町にて開校。その後、虎ノ門へと移転し、1923(大正12)年、関東大震災後に現在の広尾へと校舎を移す。1948(昭和23)年には高等学校を開設し、それまでの中学部を中学校と改称。1998(平成10)年には、創立110周年記念式典を、新校舎落成記念と併せて挙行。2004年、中学・高校に国際学級を開設。教育目標は『高い品性を備え、人と社会に貢献する女性の育成』。
(この記事は『私立中高進学通信2023年11月号』に掲載しました。)
東京女学館中学校
〒150-0012 東京都渋谷区広尾3-7-16
TEL:03-3400-0867
進学通信掲載情報
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