私立中高進学通信
2021年2・3月合併号
実践!私学のグローバル教育「授業」
武蔵野大学中学校
「言語活動」をはじめとする
最先端教育で未来を切り拓く
「未来の教室(※1)」の実証モデル校に認定された同校は、「言語活動」や「アントレプレナーシッププログラム」などグローバル社会に貢献するための教育を実践しています。
「言語活動」の授業の様子。
石川県にどうすれば移住者を増やせるかを考え、同県の魅力をプレゼンテーションしました。
「中1の時と比べ、どの生徒も人前で堂々と話せるようになりました」と小幡先生は話します。
※1 「未来の教室」…教育(Education)とテクノロジー(Technology)を組み合わせた「EdTech」という技術を使って、「知る」と「創る」が循環する新たな学びを生み出す経済産業省による実証事業。
英語の力を磨くために
日本語の力を鍛える
「名古屋は愛知県の県庁所在地で、いろいろなお店があり、名古屋城もあります。そんな名古屋の、ここだけは押さえておきたいポイントを発表します」
タブレットPCを手にした3人が教室の前に出て、プロジェクターを示しながらプレゼンテーションしています。中2の「言語活動」の授業の様子です。
2019年に共学校として生まれ変わり、さまざまな教育改革を進めてきた同校は、同年秋に経済産業省が推進する「未来の教室」の実証モデル校に認定されました。改革の一環として中学校では「グローバル&サイエンス」をテーマとする教育を実践。グローバル教育の中心となる英語の授業を週8時間としました。内訳は通常の英語の授業が週3時間、ネイティブと日本人の教員によるチームティーチングの授業が2時間、PBL(※2)を取り入れた授業が2時間、そしてこの「言語活動」が1時間です。この授業は「自分の考えを英語で表現するには、言語力が必要である」との考えに基づき、2019年からスタートしました。言語の4技能の「読む・聞く・書く・話す」力を伸ばすために、英語と国語の教科の枠を越えて、情報収集力やプレゼンテーション力などを鍛えます。
今回取材した「言語活動」の授業を受けているのは、これを中1から学んできた中2の生徒たち。3人1組のグループで、インターネットなどから得られたデータを活用し、日本の都道府県を選んで「どうすれば移住者を増やせるか」を考え、プレゼンテーションしていました。授業を担当しているのは、国語科の小幡武憲先生(入試広報部部長)と英語科の野澤清秀先生。2人がチームティーチングで指導しています。
※2 PBL(課題解決型学習)…「Project Based Learning」の略称。答えが一つではない問題を解決するために、すべての教科において自ら考えることを促す学習法。
気づいたことなどを
文字化してクラスで共有
最初のグループは、この記事の冒頭で触れたように愛知県について発表しました。「押さえたいポイント」として、名古屋城に続き、世界最大のプラネタリウムがある名古屋市科学館、岡崎市を拠点に活躍するYouTuberグループの「東海オンエア」、豊田市に本社のあるトヨタ自動車などを紹介。さらに愛知県の名産品である味噌煮込みうどんや八丁味噌、ひつまぶしの美味しさについてアピールしました。その後、「愛知県の悪いところ」として交通事故の多さを挙げ、1位の大阪府に次いで全国2位であることも紹介しました。他の生徒たちはこのプレゼンテーションを聞いて、気づいたこと、感じたことをメモしてタブレットPCに入力し、入力した文章はクラスの生徒全員で共有します。こうした作業は「フィードバック」と呼ばれ、この授業で大切にされている要素の一つです。「フィードバック」の積み重ねがクラス全員のプレゼンテーションの質を高めていきます。
このグループは最後に愛知県について調べた感想を述べ、プレゼンテーションを終えました。次のグループの発表が始まるまでの間、小幡先生は生徒に向けて次のように助言しました。
「発表者が安心して発表できるように、聞いている人たちはうなずくこと、否定しないなどのマナーを守りましょう。そしてたくさんメモを取りましょう。
さて、今のグループはあえて愛知県の悪いところを取り上げていました。ここが大切です。次の課題はこうしたネガティブな要素をどうやってプラスに転じていくかです。たとえば、『愛知県にはトヨタ自動車があるのでクルマの保有台数が非常に多い。その台数と比較すると、交通事故は少ないのではないか』と言えば移住者を誘致する際に説得力が増します」
その後、別のグループが石川県の魅力についてプレゼンテーション。終了後、小幡先生が生徒に次のようなアドバイスを送りました。
「ターゲットを明確にし、自分の言葉で説明しましょう。キャッチコピーは自分が移住者だったらと、考えてみましょう」
最後に女子3名のグループがユーモアを交えて熊本県をプレゼンし、この日の「言語活動」の授業は終了しました。
アントレプレナーシップ
プログラム
課題解決型の新しい学びを
ほかの教育現場にも広げていきたい
同校では高校から生徒の希望によって「ハイグレード」「PBLインターナショナル」「本科」の3コースに分かれて学びます。2019年には、全コースの希望者を対象とする「アントレプレナーシッププログラム」をアメリカのマサチューセッツ工科大学(MIT)で実施しました。「アントレプレナーシップ」とは現在「起業家精神」と訳されていますが、もともとは「課題を解決する人」の意味です。2020年のMITでの研修は、新型コロナウイルスの影響で中止になってしまいました。その代わりとして、このプログラムを「PBLインターナショナル」の英語と数学の授業に導入しています。「PBLインターナショナル」は、留学、海外大学への進学をサポートするとともに、問題解決力を磨くことに重きをおいたコースです。
「経済産業省の方々からもアドバイスをいただきながら、本校の『アントレプレナーシッププログラム』を今まさに構築中です。この新しい学びをほかの学校などにも広げ、より充実したものにしていけたらと考えています」(英語科/野澤清秀先生)
同校で行われている「アントレプレナーシッププログラム」。
身の回りの人が困っていることの解決方法をグループで考えます。
先生より一言
論理的な思考力とともに
豊かな創造力や発想力を
「あなたはこの問題に関して、どう思いますか?」と英語で問われた場合、英文法を正確に理解していても、英語で答えることが苦手という日本人は多いはずです。その理由は、自分の意見を自由に発言する機会が少ないからだと考えられます。そこで「言語活動」の授業では、生徒たちにさまざまな学び・発言の場を与え、論理的な思考力とともに豊かな創造力や発想力を育んでいきます。もちろん、目的は英語の力を伸ばすことだけではありません。世界中の人々と協働して社会が抱える諸問題を解決するためのスキルを磨くことが目的です。
(この記事は『私立中高進学通信2021年2・3月合併号』に掲載しました。)
武蔵野大学中学校
〒202-8585 東京都西東京市新町1-1-20
TEL:042-468-3256
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