私立中高進学通信
2025年神奈川版
実践報告 私学の授業
鶴見大学附属中学校
「つながる学び」が未来をつくる
3教科横断型授業の挑戦
教科の枠を越えた多角的な視点での学びが、考える力を育てる

探究シーン1
歴史総合、探究、情報の3つの教科の教員が入れ替わりながら解説するライブ感あふれる授業。
生徒は目を輝かせながら聞き入っています。
多彩な教科を組み合わせた教科横断型授業を積極的に実践している同校。「歴史総合×探究基礎×情報」の3教科をクロスした授業で、未来を構想する力を育みます。
3教科の知識が重層的に広がり
歴史と現代をつなぐ
ホームベース(HR教室)と教科エリア(授業ごとの移動教室)を組み合わせたユニークな学習環境のもと、主体的な学びを実践する鶴見大学附属。そのアクティブな学びをさらに推進する新たな試みとして、2024年度より教科横断型授業が始動しました。
今回は、高1を対象に行われた「歴史総合」「探究基礎」「情報」の3教科が連携する授業を取材。テーマは「産業革命」です。授業は、国語科・探究科の中田逸葵先生による導入からスタートしました。
「皆さんは“Society1.0”という言葉を聞いたことはありますか? Society1.0は狩猟社会、2.0は農耕社会、3.0は工業社会、4.0は情報社会、そして現代はSociety5.0、人間中心の“超スマート社会”といわれています」とSocietyの変遷を紹介。さらに「探究では、課題を発見し解決していく力を大切にしています。最新のテクノロジーを活用してより良い社会を創る力が、これからの時代に求められているのです」と語り、生徒たちに未来を自分事として考える視点を提示しました。
続いて、「Society1.0〜3.0は柳原先生、4.0と5.0は永澤先生から解説していただきます」と、次の教員へバトンを渡しました。
地歴公民科の柳原一貴先生は、18世紀のイギリスで始まった産業革命、そして日本の近代化・工業化の流れを紹介。さらに、時事的な話題として、産業革命やAIに言及した新ローマ教皇・レオ14世のエピソードを交え、現代に通じる視点も提示しました。
続けて情報科の永澤一久先生は、「Society5.0でいうサイバー空間とはVRなどの仮想空間、フィジカル空間は現実世界のこと」と説明。人気アニメ『名探偵コナン』を例に、「特殊なメガネで現実と情報がリンクしますね」と話し、生徒の興味を引きつけます。
3名の教員が専門的な知見をリレー形式に解説することで、歴史、現代社会、未来の構想を知識としてつなげていきます。テンポよく展開される授業に、生徒たちの集中力も途切れません。
2030年の未来社会を創造
ロイロノートでグループ発表
授業後半は、探究的な問いに向き合うクロストークと発表の時間です。
『2030年を生きる私たちが実現したい社会はどんな社会か?』という問いに対し、生徒たちは各班で活発に意見を出し合いました。出た案をロイロノートを使って整理し、「どんな社会にしたいか」「どんな仕組みが必要か」をタイトルと共にまとめていきます。
生徒からは「極楽社会」「共創社会」「進化する未来社会」など、ユニークな意見が次々と出て、代表生徒が黒板に画面を映して堂々とプレゼンテーションします。他の班の発表にも興味津々で耳を傾ける姿からは、仲間の多様な考えに刺激を受けている様子が伝わってきました。
授業を終えた生徒からは、「社会科や情報で学んだことがつながった」「ほかの班の発表が面白くて刺激を受けた」といった声が多く聞かれ、学びの相互作用を実感した様子でした。

5年後の「2030年の未来」を考え、活発に意見を出し合う生徒たち。

キーボード付きタブレット端末を使いこなす生徒たち。素早く的確なスライドを作ります。

班ごとのプレゼンテーション。普段の授業で考えをまとめてプレゼンすることに慣れているため、オリジナリティーあふれる意見を堂々と発表します。

3教科横断型授業のために先生方が制作したスライドの一部。
工夫が凝らされ、緻密に構成されたスライドの提示は、生徒のICT力の向上に自ずと影響を与えています。
生徒に聞きました
学びの意義と将来へのつながりを発見

一つのテーマでも多様な視点が存在することを知り、教科横断型授業を通じて学ぶことの意味や将来へのつながりを意識するようになりました。
以前は「この知識が役立つのか」と疑問に思うこともありましたが、知識が結びつき、将来に生かせることに気づきました。クロストークを通じて他者と対話しながら考えを深める力も身につき、授業への取り組み方がより前向きになりました。
多角的な視点と意見交換で
広がる学び

複数の教科の先生が同時に授業を進める新鮮さがあり、内容も非常に興味深く感じました。一つの出来事をさまざまな角度から考えることで、視野が広がり、学ぶ意味がより明確になりました。クロストークではクラスメートの多様な「実現したい世界」の考えを共有でき、他者の意見に耳を傾けることの重要性を学びました。意見を組み合わせることで、より良いアイデアが生まれると感じています。
多様な知識が結びつく
新しい学び

探究科の中田先生がSocietyについて説明している際、社会科の柳原先生が歴史の視点から補足したことで、知識が有機的につながる面白さを感じました。情報と歴史が重なり合うことで、授業内容がより深く記憶に残りやすくなりました。異なる教科の知識を関連づけて考えることで、学ぶ姿勢にも変化が生まれたように思います。クロストークでは、他者の意見を取り入れつつ、自分の考えを論理的に伝える力を発揮できました。
ココも注目!
3教科の融合で育む深い思考力と表現力

2024年度は、2教科による横断型授業を実践していました。教科の枠を越えた学びに触れることで、生徒たちはこれまで以上に広くアンテナを張るようになり、思考が深まっていると感じました。これを受けて2025年度は、探究や情報の授業を組み合わせた3教科横断型授業を実践し、より発展的な内容としています。
本校では日頃からグループワークやディスカッションなどに積極的に取り組んでおり、生徒たちは短時間で話し合いから発表まで完結させる思考力や、デジタルツールを活用した表現力をすでに身につけています。
3教科横断型授業では、これらの基礎力を活かしつつ、より深く考える力、論理的に伝える力、主体的に課題を解決する力の育成に重点を置いています。これらの力は、大学入試はもちろん、その先の学びにも直結する重要な資質・能力です。今後も授業の進化を通じて、生涯にわたって“学び続ける力”を育てていきます。(社会科・地歴公民科・探究科/柳原一貴先生)
(この記事は『私立中高進学通信2025年神奈川版』に掲載しました。)
鶴見大学附属中学校
〒230-0063 神奈川県横浜市鶴見区鶴見2-2-1
TEL:045-581-6325
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