私立中高進学通信
2024年神奈川版
実践報告 私学の授業
鶴見大学附属中学校
学んだ知識を発信して自分のものに
『歴史ニュース番組をつくろう』
知識を定着させ、わかりやすく伝える力を伸ばす
授業シーン1
グループワーク中に生徒たちの間を回り、積極的に声をかける阿部先生。
生徒の主体性を損なわないようにサポートすることを心がけています。
生徒のやる気と探究心を引き出す独自の授業を実践する鶴見大学附属。
中2生は社会科の授業で、歴史トピックをニュース番組として発表する探究型授業に取り組みました。
社会科で学んだ知識を
活用してニュース番組に
仏教の禅の教えに基づく教育を実践する鶴見大学附属。他者への思いやりと自己肯定感を育む教育とともに、同校が重視するのは、日々の授業をいかに充実させるかです。今回の取材では、同校ならではのオリジナリティあふれる中2・社会科の授業を取材しました。
中2から歴史を学び始め、旧石器時代から弥生時代までを学んできた生徒たち。彼らがこの日取り組んだテーマは、『歴史ニュース番組をつくろう』です。グループごとに取り上げたい歴史的な出来事=ネタを決め、番組の台本となる原稿を書き、動画を撮影してニュース番組に仕上げます。
先生から内容説明とサンプルの例示があった後、早速4~5人のグループに分かれ、ニュースのネタ探しと原稿の作成に取りかかります。授業のねらいについて、社会科の阿部未来先生は次のように話します。
「調べた情報を取捨選択し、資料を正確に読み取る力を養うと同時に、学んだ内容をニュース番組の形でアウトプットすることで、知識を定着させるねらいがあります。
取り上げた歴史的な出来事を、相手に伝わる原稿に仕上げることもポイントになります。学んだ知識を自分のなかで消化して、わかりやすい言葉におき換えて伝える力は、社会に出てからも求められるもの。こうした力を育むために、社会科の授業でも、まとめや発表の時間を多く設けています」
生徒たちはグループに分かれ、デジタル端末を活用してニュースのネタ探しを始めました。阿部先生が作成したヒントとなる資料も、デジタル端末で共有されています。
同校では2015年からBYOD(※)(Bring Your Own Device)を導入。生徒は皆、使いやすいデジタル端末を選んで購入し、全教科の授業で活用しています。そのため、ノートPCを使う生徒もいれば、タブレット端末にペンで書き込む生徒もいます。こうしたデジタル端末は、今や授業に欠かせないツールとなっているようです。
「生徒たちの洗練されたデジタルスキルには、いつも驚かされます。リサーチや資料作成はお手の物ですし、ハイクオリティな動画作成や加工技術など私たちが学ぶべきところも多いんです。端末を自由に選べることで、取り組み方もより主体的になっています」
どのネタを取り上げるのか話し合って決定し、原稿作成の段階に入ったグループからは、「この言い方だとわかりにくくない?」「こっちのほうが伝わりやすいよ」といった声も聞かれます。
30分ほどグループワークを行い、ニュース番組の原稿が作成できたところで、この日の授業は終了。次回の授業では、実際にニュース番組を撮影する動画作成を行います。
※ BYOD…生徒が個人で所有するデジタル端末を授業や学習に利用すること。家庭で使っている端末や、使いやすい端末を選んで購入して活用します。
効率的×ていねいのバランスを重視して
それぞれのペースで成長
デジタル端末をさまざまな場面で活用する一方、授業の板書は「手書き」がルールです。
「これは、漢字力を落とさないようにするためです。大人でもそうですが、特に漢字は、書かずにいると忘れてしまいますよね。だからこそ、手で書くことが大切なんです。
生徒たちには、時間をかけてじっくりと取り組むことも、ときには必要であると伝えたいです。効率も大事ですが、ていねいさも大切にしています。常にその2つのバランスを考えながら、授業を組み立てています」
日々、授業の中で生徒たちを見守っている阿部先生。学年が上がるごとに、自分なりの勉強法を身につけたり、調べたことをわかりやすくまとめる力が上達したりと、一人ひとりのペースに応じた成長が見られるといいます。
「勉強しやすいように出来事の因果関係を調べたり、教員の話をメモしたりと、自分なりに理解しようとする姿勢や工夫が見えた時に、生徒の成長を感じます。さまざまな方法を試して、自分に合った勉強法を見つけてほしいですね」
キーボード付きのタブレット端末を使う生徒もいれば、ノートPCやChromebookを使う生徒も。皆、思い思いの使い方で、デジタル端末を使いこなしています。
授業では、生徒の要望にも臨機応変に対応。当日の授業で、男女の席が分かれていたのは、その一例です。
「新学年になり、まずは同性と仲良くなりたいという生徒の声が多かったので、この席順を取り入れました」(阿部先生)
グループワークで活発に意見を交わす生徒たち。資料の年表を確認したり、インターネットで検索したりしながらアイデアを出し合い、意見をまとめてワークシートに記入していきます。
先生に聞きました
さまざまな学びが得られる授業
何事にも一生懸命取り組んでほしい
社会科の授業では、単なる知識の暗記にとどまらず、自分なりに理解したことを発信する力まで身につくように意識しています。授業を通して伝える力や文章力が向上する生徒も多く、さまざまな力が身についていると感じます。どの科目の授業も、知識以外の学びが多く、将来に有用なものばかりです。だからこそ、生徒たちには、どの教科も大切にして、何事にも一生懸命に取り組んでほしいと思います。こうした粘り強さは、社会に出てからも必ず生きてきます。(社会科/阿部未来先生)
ココも注目!
「教科エリア+ホームベース型校舎」
アクティブな環境で主体的に学ぶ
ホームルームを行う『ホームベース』から『教科エリア』に生徒が移動して授業を受ける、ユニークな学習環境が特徴の同校。教科エリアの中心には、教科ごとの職員室にあたる『研究室』と、『メディアセンター』を配置。生徒からの質問にも随時対応しています。
「授業ごとに移動を挟むことで、生徒たちが主体的に『学びに向かっていく』姿勢が見られます。授業の合間に身体を動かすことで頭がスッキリするからか、毎回シャキッとした元気な生徒の顔が見られるのもいいですね。
メディアセンターには、生徒が主体的に取り組んだ『特活自由研究』を展示しているほか、生徒が社会科の課題や試験勉強に使用しています。課題を提出に来たり、わからないところを質問に来たりすることも。効率よく勉強できると好評です」(阿部先生)
(この記事は『私立中高進学通信2024年神奈川版』に掲載しました。)
鶴見大学附属中学校
〒230-0063 神奈川県横浜市鶴見区鶴見2-2-1
TEL:045-581-6325
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