私立中高進学通信
2024年神奈川版
実践報告 私学の授業
自修館中等教育学校
自学・自修・実践の力を培う
独自の探究プログラム
創立時から探究を軸にした教育を展開

探究発表会で中1生が発表。調べた成果をチームごとにポスターにまとめています。
社会と向き合い、自分の視点をもって課題を発見し、解決策を考察する。そんな探究活動に生徒が自ら興味を抱いて取り組めるよう、多彩な機会を提供している同校。その取り組みを取材しました。
探究が学びの柱
独自の探究授業を必修で展開

全国に先駆けて「『自学・自修・実践』できる生徒の育成」を教育目標に掲げている自修館中等教育学校。自主・自律の精神を育むため、1999年の開校以来、探究を軸とする教育活動に取り組んできました。創立20周年を機にそれまでの探究授業を刷新し、2020年からは「課題を見つけ、乗り越えるために考え抜く力、その成果を表現する力」を育む独自のプログラム『C-AIR(シー・エア)』(※)を展開しています。
中高6年間にわたる『C-AIR』のプロセスについて、探究担当の海老名豊昭先生は次のように説明します。
「中1から中2は『社会の見方を知る』段階と位置づけています。伊勢原市の行政・教育機関、大学と連携し、グループ学習を通して情報収集やポスター発表、プレゼンテーションといった探究活動のサイクルを習得します。これにより、社会に対する自分なりの興味・関心を養っていきます。
中3から高1は『社会とつながる』を目的に、学術分野ごとに12のゼミに分かれ、生徒一人ひとりが自ら選んだテーマの研究に挑戦します。ゼミを選択し、中3の時点で社会とのつながりを重視したテーマを決め、高1からは大学や企業への取材も実践。探究を深めて、その成果を8000字から1万字の論文にまとめていきます」
ゼミのほかにも、探究活動の基本的な手法や、論文の書き方などが学べるプログラムも実施していると海老名先生は話します。
「情報収集では、信頼性の高い情報をいかに集めるかが重要です。そのため、探究活動ではフィールドワークや文献調査を重視しています。図書館とも連携し、生徒がリクエストした書籍を購入してもらい、生徒が質の高い情報に触れられるようにしています」
高2以降は、さらに高度な探究に取り組んでいくようです。
「高2では、これまでの教科学習や探究活動の知識を活かし、『社会への参画』や『多様な人々との協働』をテーマに、1年をかけて探究を深めます。グループ・個人といったスタイルや発表形式は自由に選択できます。
高3では、指導教員のもと、選択授業として自由課題による探究活動を行っています。大学入試の総合型選抜に向けて探究を深める生徒もいれば、一般入試対策と並行して探究活動に取り組む生徒もいます」
※ C-AIR…Change and Collaboration - oriented Agency through Inquiry and Researchの略。変化と協調に向け、探究を通じて、社会を動かす力を意味します。
探究を通じて
生徒同士が学び合う

探究の成果を発表する機会が多いところも同校の特徴です。『探究発表会』では、中1と中2はグループで、中3からは個人で、その成果を保護者などの来場者に発信します。校内においても生徒同士が互いの発表から学び合い、多様な研究に触れることを大切にしています。
「中3・高1のゼミは、約10名の生徒が2名の教員と対話しながら探究を深める少人数制です。興味・関心の近いメンバーが集まり、発表の機会を多く取り入れることで、議論や意見交換を活発に行っています。
生徒数がそれほど多くない本校の環境は、人と人が深く関わり合う密度が高いため、探究活動には最適です。授業やゼミを通して生徒同士が互いの興味や取り組みをよく知っており、日常的な会話にも探究の話題が頻繁にあがります。生徒たちの様子から、探究を通じて培われた課題と向き合う姿勢が、学習や部活動を含むあらゆる場面で発揮されていることがうかがえます」
こうして生徒たちは『自学・自修・実践』を重ねながら、自分らしくこれからの社会を生き抜いていく力を着実に育んでいるのです。
生徒インタビュー〈中2〉
探究学習を通じてたくさんの気づきがありました!
「薬は人にどのような影響を与えるのか」をテーマに活動した
6名の中2生に探究活動について聞きました。

「昨年の伊勢原市のフィールドワークでは、地元の新たな一面が知れて興味深かったです。探究で学んだ多角的な視点は、陸上部の活動にも役立てています。自主練習を工夫し、弱点を明確にして、成果も上がりました」(Ma.K.さん)

「文献を調べたり、街の人に話を聞いたりして集めた情報を、皆でまとめて、発表することが楽しかったです。クラス内でもチームごとに探究内容が異なるため、ほかのチームの発表を聞くこともためになります」(A.R.さん)

「街頭アンケートに初めて挑戦し、人と話したりデータを集めたりすることで、多くのことを明らかにできると実感しましたし、アイデアが生まれる楽しさも感じました。探究を通じて、将来やりたいことを見つけていきたいです」(I.T.さん)

「学校には個性豊かな生徒が集まっていて、探究を通じてそれぞれの興味や関心を深めています。意見を出し合い、共感したり意見をすり合わせたりすることで、授業は活発で楽しいものになっています」(H.Y.さん)

「探究では、生徒主体でアイデアを出し合うことなどがとても楽しいです。調べた内容をまとめる力や、人に伝わる言葉を選ぶ力など、将来に必要なスキルが身についていると実感しています」(Mo.K.さん)

「探究には国語力や計算力など全教科の知識が必要になるので、学習意欲が高まりました。自修館ではグループワークが多く、ほかの生徒の意見から、新たな視点を得て驚くこともあり、視野が広がりました」(Y.R.さん)

生徒インタビュー〈高1〉
中1の探究をきっかけに継続的に研究を深める

「植物工場で食糧自給率を高めるためには」をテーマに研究を進めています。きっかけとなったのは、中1の探究活動で取り組んだ伊勢原市の農業後継者不足問題です。伊勢原市に550ほどある農家のうち、約350の農家に後継者がいないことを知り、後継者不足の原因は農業の重労働にあると考え、土を使わず天候にも左右されない「植物工場」に注目しました。
中3で玉川大学の植物工場研究施設を訪問し、無農薬野菜作りの最先端技術に感銘を受け、栽培にかかるコストや販売価格などの課題も学びました。現在は大学や企業の植物工場研究所を見学して調査を進めており、この後も大和ハウス工業の植物工場を訪れる予定です。
探究活動を通じて、読解力や集中力が向上したと実感しています。調査や発表などの活動を通じて、計画的に物事を進める習慣も身についたと思います。

教員と対話しながら探究を深めます。
(この記事は『私立中高進学通信2024年神奈川版』に掲載しました。)
自修館中等教育学校
〒259-1185 神奈川県伊勢原市見附島411
TEL:0463-97-2100
進学通信掲載情報
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