私立中高進学通信
2024年神奈川版
実践報告 私学の授業
湘南学園中学校
学園のカフェテリアとチームを組み
心のこもった食育を推進
“食”を通じて、『持続可能な社会の創り手』を育てる豊かな人間教育
授業シーン1
中1のクラスランチの様子。クラスランチでは、カフェテリアで同じメニューを食べる“共食”を体験します。
カフェテリアのスタッフから、食育に関する講話やレクチャーもあります。
食育に力を入れる同校では、家庭科の授業や『クラスランチ』などで、保護者が立ち上げた『NPO法人湘南食育ラボ』が運営するカフェテリアとコラボレーションを行っています。
カフェテリアを活用した
独自の食育を展開
湘南学園は、生徒一人ひとりの個性や自由を尊重する校風のもと、『持続可能な社会の創り手』の育成を掲げています。2013年よりユネスコスクールに加盟し、探究力と人間力を培う多彩な取り組みを『湘南学園ESD』と位置づけて実践。その一環として食育に力を注いでいることも特色です。
同校の家庭科の授業では、調理実習の時間を豊富に設け、学園内にあるカフェテリアのスタッフとチームを組んで独自の食育を展開しています。
「本校の家庭科では実習を多く取り入れており、食物について学ぶ中2では、年間10回の調理実習を行っています。カフェテリアには実習で用いる地域の安全な食材を発注していただいたり、管理栄養士や調理師に、調理指導をしていただいたりと、さまざまな面で協力を得ています。
季節や旬を意識した活動を行っており、夏には『夏野菜を使ったドライカレー』、秋には『さんまのさばき方』を、カフェテリアの調理師がレクチャー。旬の食材について学んだり、それを味わったりして、日本の豊かな食文化も体験します。実習で調理したメニューをカフェテリアでも定食として提供するなど、生徒が継続的に食を身近に感じられるよう工夫しています。
このように調理実習や試食会など、さまざまな授業をカフェテリアと協働して実施することで、本校の家庭科は豊かな体験を取り入れた充実した内容になっています」(家庭科/増子由美子先生)
PTAを母体とするNPOが
学園のカフェテリアを運営
同校では、生徒たちの昼食は基本的に家庭から持参するお弁当が中心ですが、カフェテリアを利用したり、カフェテリアが提供するお弁当を食べる生徒もたくさんいます。またクラス全員が同じメニューを楽しむ『クラスランチ』が年に数回実施され、中1では、配膳方法をカフェテリアスタッフから学ぶなど、カフェテリアは生徒たちにとってとても身近な存在です。
カフェテリアを運営するのは、同校のPTAが母体となって設立されたNPO法人湘南食育ラボです。同校は幼稚園・小学校・中高一貫校からなる総合学園ですが、幼稚園から高校までのPTAが一緒に活動しており、学園全体が一体となったコミュニティを形成しています。このコミュニティからNPOが生まれ、カフェテリアの運営がスタートしました。
「湘南学園のカフェテリアは、2013年11月、80周年記念館内に作られました。わが子に安心・安全な物を食べさせたいという思いから、卒業生の保護者が立ち上げた『NPO法人湘南食育ラボ』が、カフェテリアの設置を提案したことがきっかけです。
当時カフェテリアを運営するうえでは課題もありましたが、東日本大震災の際には学校が避難所となり、PTAが炊き出しを行った経験から、『私たちにもできる』と確信しました。
食育やカフェテリアでの食事を通して、身体に良い食事を選べる大人に育ってほしいと強く願っています」(NPO法人湘南食育ラボ理事長/原田ゆう子さん)
授業レポート
生徒が考案したメニューもカフェテリアで提供
さんまのさばき方も体験! 中高6年間で“食”が身近に
日本の食、世界の食を学び
食べて実感ある食育を実践
家庭科では『NPO法人湘南食育ラボ』が運営するカフェテリアとチームを組んで、中高6年間を通した食育に取り組んでいます。
「中2では、さんまのさばき方を体験し、中3では夏休みの課題として、地域の特産物や郷土料理をテーマに調べ学習を行い、レポートを提出します。カフェテリアに協力していただき、いくつかの郷土料理をランチメニューに加えました」(増子先生)
高2の家庭科の授業では、食品群への知識と理解を深め、食事の栄養バランスを考えた『4群弁当』のメニュー作りに毎年、挑戦しています。カフェテリアの管理栄養士が、生徒たちの考案したメニューの中から優秀作品を選び、カフェテリアで提供しています。
高3の家庭科では、世界の料理を調べるグループ学習を行います。
「クラスごとに人気のメニューをカフェテリアで提供していただくので、実際に食べて世界を知る経験にもつながります」(増子先生)
高3特設科目『教養』で
お茶の点て方も体験
同校では、高3生を対象に特設科目『教養』を設置。カフェテリアの協力を得て、茶道体験やテーブルマナー実習も行っています。こうした食の体験授業は生徒にも保護者にも好評で、とくに受験勉強に励む高3生にとっては、リフレッシュできる貴重な時間です。
「茶道体験ではカフェテリアが手作りしたうぐいすもちを提供いただき、『販売してほしい』という声があがるほど大評判でした。こうした体験の積み重ねが、食への興味や理解へとつながっていると実感しています」(増子先生)
中2生はカフェテリアの管理栄養士の指導のもと、さんまのさばき方を学びます。さばいたさんまは、その日のランチで提供されます。
高2生は、食を栄養バランスの観点から学習。『4群弁当』のメニューを考案する取り組みへとつなげます。
『教養』の授業で行われる茶道体験。『教養』の授業では、このほか礼状や手紙の書き方なども学びます。
ココも注目!
生徒の食育を学校と一緒に推進
NPO法人湘南食育ラボは、「カフェテリアを運営する業者」という役割を越え、学園、そして保護者の皆さんとチームになって食育に取り組んでいます。本校のカフェテリアに強く共感し、ぜひ協力したいとカフェテリアで働いてくださる保護者もいます。
おいしい食事を楽しみながら、心身ともに健康に成長していく生徒たちの様子をすぐそばで見られることは、何よりの喜びです。(NPO法人湘南食育ラボ理事長/原田ゆう子さん)
(この記事は『私立中高進学通信2024年神奈川版』に掲載しました。)
湘南学園中学校
〒251-8505 神奈川県藤沢市鵠沼松が岡4-1-32
TEL:0466-23-6611
進学通信掲載情報
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