私立中高進学通信
2021年神奈川版
校長が語る 自立へのプロセス
湘南学園中学校
「自律」からチャレンジ精神と創造力
強い絆が生まれる

写真中央が伊藤眞哉校長先生。右が生徒会総務委員長の菅原里彩さん(高2)、左が生徒会総務副委員長の光永智博さん(高2)。
自主的・積極的に行動できる人間を育てる

1965年、東京生まれ。大学の文学部卒業後、湘南学園中学校高等学校の国語科教員に。以来33年間、湘南学園の一教員として、多くの学園生と時を過ごしている。2020年4月、湘南学園中学高等学校の校長に就任。
伊藤眞哉校長先生
本校は『個性豊かにして 身体健全 気品高く 社会の進歩に貢献できる 明朗有為な実力のある人間の育成』を建学の精神とし、生徒には『自主的・積極的に行動できる人間』に育ってほしいと願っています。
そのため、本校では「自立」ではなく、自分を律するという意味での「自律」を促す教育に力を注いでいます。教員が常に授業や行事のなかで、生徒に問いかけた上で、しっかりと物事を考えさせるように心がけています。
2020年から2021年にかけては、この「自律」の精神が大きく発揮されました。そのひとつがコロナへの感染防止対策を徹底させた上で5月に開催した体育祭です。各行事の委員を取りまとめる生徒会総務委員長の菅原さんと総務副委員長の光永さんがリーダーシップを発揮して、体育祭を成功にみちびいてくれました。
菅原里彩さん
体育祭は、中1から高2までの5学年を縦割りにした5チームで優勝を競い合い、競技種目からルール、当日のプログラムまで、すべて生徒の手で作り上げています。新型コロナウイルスの感染拡大によって、昨年の体育祭は高1と高2のみの参加となりました。だからこそ、今年は全学年が参加できる体育祭をみんなが待ち望んでいました。
伊藤校長先生
私たち教員は、生徒に「どうすれば感染リスクを減らして開催できるか」を問いかけました。グラウンドに大勢の生徒が集まれば、どうしても密になってしまいます。こうしたリスクを一つひとつ挙げて、どんな工夫をすれば、安全に開催できるかを考えてもらいました。
生徒の「自律」の精神が発揮された体育祭
「自律」に向けた3つの力
- 苦しい時でも、物事に粘り強く、
地道に取り組んでいける力 - 制約に負けずに、
自分の夢や目標を育んで、
努力していける力 - コミュニケーションをとって、
力を合わせて進めていける力
光永智博さん
僕たち生徒会総務委員と体育祭実行委員のメンバーは、感染リスクを減らすために何度も話し合いを持ちました。まず考えたのが、リモート観戦です。グラウンドで観戦するのは高2生のみ。他学年の生徒は教室のスクリーンで競技を観戦し、出場する時だけ、グラウンドに出るようにしました。
菅原さん
体育祭では、全学年の生徒がダンスをするアトラクションをみんなが楽しみにしているのですが、全員一斉にダンスをすると、接触による感染リスクが生じてしまいます。そこで、一曲ごとに参加する生徒の人数を決めて、交代でダンスをするメドレー形式に変更しました。
伊藤校長先生
体育祭の種目にも数多くの工夫が見られました。これまではネットの下をくぐるなどして競い合っていた障害物競走は、教員とじゃんけんをして、負けたらその場で三回まわって次に向かうなど、独自のルールを考え出して、楽しませてくれました。
期待した以上の体育祭となり、とても感動しました。リモート観戦でも大いに楽しめたという意見が多くの教員から寄せられました。このように「自律」から、創造力やチャレンジ精神、人と人との絆が生み出せることを生徒は実感できたと思います。
行事を成功させたことで大きな自信を得る
伊藤校長先生
菅原さんや光永くんは、これまでの学校生活を通して、どんなところで自分が自律できたと感じていますか?
菅原さん
私は中1から総務委員として、行事の企画や運営に携わってきました。学年が上がるにつれ、行事を成功させたいという思いが強まり、責任感も芽生え、終わった後の達成感も大きくなっていきました。こうした経験を経て「自律」できるようになったのではないかと思っています。
コロナ禍でも、力を合わせて生徒みんなに喜んでもらえる体育祭を行うことができ、「私たちはここまでできるんだ。コロナというマイナスをプラスに変えることができたんだ」という手応えを強く感じました。生徒同士だけでなく、先生と話し合う機会も例年以上に増えました。
光永さん
僕は入学してからずっと行事を楽しむ側でしたが、去年初めて、学園祭の実行委員になり、縁の下の力持ちとして行事を支えることの楽しさや素晴らしさに気づきました。そこで今年は総務副委員長に立候補したのです。
以前は体育祭でのルールを気にしたことはありませんでしたが、運営側として臨んでみて初めて、ルールという制約のなかで、どうすればみんなに楽しんでもらえるかを考えるようになりました。
コロナ禍でも体育祭を無事に終了できたことで、自分自身も大きく成長できたのではないかと感じています。
10月には、みんなが心待ちにしている学園祭を開催する予定です。僕たち総務委員と学園祭実行委員は「みんなで楽しめる最高到達点の学園祭」をスローガンにして準備を進めています。めざすのはコロナに負けず、誰もが心から楽しめる過去最高の学園祭です。
伊藤校長先生
2人の話を聞き、その成長をうれしく感じました。こうした生徒の声を聞くたびに、私は生徒を誇りに思います。本校で学んだことを糧に、将来、大きく羽ばたいてほしいですね。

2021年の体育祭、アトラクションでの模様。
新型コロナウイルスという困難に立ち向かうことで、例年以上に生徒同士の絆が強まりました。
自立のための取り組み
先輩から"伝統"というバトンを受け継ぐ

同校では生徒が自分たちの手で行事を作り上げることが伝統になっています。行事でリーダーシップを発揮する先輩たちの姿を憧れの眼差しで見ながらさまざまなことを学び、その姿勢を受け継ぎ、行事の成功に向けて全力を注ぎます。こうして同校の伝統は受け継がれ、生徒たちは「自律」していくのです。
(この記事は『私立中高進学通信2021年神奈川版』に掲載しました。)
湘南学園中学校
〒251-8505 神奈川県藤沢市鵠沼松が岡4-1-32
TEL:0466-23-6611
進学通信掲載情報
PICK UP!!
紹介する学校
- 探究活動や学校生活に幅広くICTを活用し「発信力」を高めるカリタス女子中学校
- コロナ禍だからこそ先進的な取り組みが生徒の学びを進化させる北鎌倉女子学園中学校
- 違いを受容し意見を発信「人とかかわる力」を育てる神奈川学園中学校
- 平和の実現のために行動できる力を育てる関東学院六浦中学校
- 探究心をもった学びが未来の自分を深めていく鶴見大学附属中学校
- どんな時代であっても、自分自身の力で立てる人財育成をめざす森村学園中等部
- 知識を連結し汎用的能力を育むクロスカリキュラム横浜女学院中学校
- 油絵やバイオリンなど芸術に触れて感性を磨く横浜富士見丘学園中学校
- 日本を知り、アジアを知り世界を知って、飛躍する力に藤嶺学園藤沢中学校
- カトリックの精神から社会課題を考える聖園女学院中学校
- 20年後の世界で必要な力を今から育むGLP山手学院中学校
- ネイティブ教員9名が英語の授業を担当横浜隼人中学校
- 「自律」からチャレンジ精神と創造力 強い絆が生まれる湘南学園中学校
- 「OLIVE STREAM」を合言葉に100年の伝統を今に伝える関東学院中学校
- マリンチャレンジプログラムに向けた研究が評価され、2年連続で全国大会に進出サレジオ学院中学校
- グローバルユース国連大使に選出された2名が国際問題にかける熱い想いを語る自修館中等教育学校
- 生徒主導の課題活動・福祉活動を通し「こころ」と「力」を育成する聖セシリア女子中学校
- 高校でのコース選びに悩む中3生に先輩の高校生が自分の経験をアドバイス橘学苑中学校
- ICTを活用した多様な学びの実践でデジタルスキルと豊かな人間性を育む東海大学付属相模高等学校中等部
- 国公立大107名の合格を支えた年間600を超える3種の『講習』桐光学園中学校
- 豊かな自然と最新設備を備えたキャンパスで一人ひとりが輝ける学校生活を送る日本大学藤沢中学校
- 人・自然・世界と「共に生きる」ため伝統の「総合学習週間」でSDGsを学ぶ横須賀学院中学校
- 中学3年間の探究で大きく成長 翠陵グローバルプロジェクト横浜翠陵中学校


