私立中高進学通信
2022年特別号
校長先生はこんな人!
開智未来中学校
将棋と数学を心より愛する
“現場あがり”の校長先生が見つめる
真のリーダーになり得る人材の未来

藤井剛校長先生。
埼玉県出身。東京理科大学卒業、数学科教諭に。開智中学校(さいたま市岩槻区)の開校時から同校第1期生の担任を務める。
2011年4月、学園を同じくする開智未来中学校の開校に際して赴任。以降、学年主任、副校長等の役職を経て、
2022年4月、開智未来中学校・高等学校の第3代校長に就任。数学と将棋をこよなく愛する。
「本質を見抜く力」と「深く考え続ける力」で
リーダーを育成
校長に就任して初めて迎えた入学式。私は、入学生・在校生すべての生徒に向けて、「2つの力を身につけてほしい」と話しました。
1つ目の力は、「本質を見抜く力」です。今後、AIがますます進出してくる社会の中で、AIに負けずに活躍をするためには、本質をとらえる力が重要になってくるからです。例えば、本校では授業の終わりに必ず振り返りの時間があります。「今日の授業の本質は何だったのか」と、自分の言葉でとらえ直す訓練を続けていくことによって、本質を見抜く力は伸びていくと考えています。
2つ目の力は、「深く考え続ける力」です。人生100年時代といわれている今、求められるのは息長く社会の中で活躍できるリーダーの存在です。リーダーとしての人間的な厚み、リーダーとして人を包み込む深み、それらが身についてこそ真のリーダーといえるのではないかと、生徒たちに問いかけました。
そんな思いを込めて私は、「急がば自分で考えろ」というメッセージを伝えました。これは、私が愛する将棋の世界で、最年長での名人獲得記録を持つ故・米長邦雄先生の言葉です。私はこの言葉を、自分で考え、試行しない限り、物事は自分のものにはならないと捉えています。
“現場あがり”の校長として
生徒と共に歩んだ日々は宝物
本校の開校は今から11年前のことでした。いわゆる東日本大震災のあった年なのですが、私はその設立準備委員として創立に携わってきました。前任校の開智では開校第1期生の中1の担任となり、その生徒たちの卒業時には学年主任を務めました。開智未来でも開校第1期生の担任となり、卒業時には学年主任として送り出すことができたのは、教員として本当に幸運だと思っています。
私の担当教科は数学です。本校の特徴でもあるのですが、数学は検定教科書以外にも学園オリジナルテキストを用いて指導しており、強い思い入れもあります。私は“現場あがり”の校長ですので、今も昔も生徒たちとの距離感は近いものがあると自負しています。特に数学の授業や日常生活を通して生徒一人ひとりと語り合い、また文化祭や体育祭では共に楽しんだ日々は大切な宝物です。
本校は創立以来、哲学の基盤の上に学力と人間力を共に育てる学校づくりに邁進してきました。生徒たちもそのことをよく理解してくれていて、いつも明るく朗らかに、そして時に逞しく成長していく姿を数多く見せてくれます。生徒一人ひとりの名前と顔が完全に一致できる小規模校ならばこその、温もりいっぱいの付き合いをこれからも大切にしていきたいと考えています。

埼玉県北部の自然豊かな地域にある開智未来。
全8駅から便利なスクールバスが出ていることもあり、
1都5県(東京、千葉・埼玉・茨城・栃木・群馬)から生徒が集まっています。
各地から集まる多様な生徒たちの
高いポテンシャルに注目!
埼玉県北部の加須市にある本校には、埼玉県内だけでなく、茨城・栃木・群馬、そして、少数ですが東京・千葉から通う生徒も在籍しています。残念ながら徒歩で本校に来れるような最寄り駅はありませんが、合計8つの駅からスクールバスで通うことができるので、安心かつ便利なのです。広範囲な地域から集まる本校の生徒は、実に多様で個性的です。生徒の奮闘事例を紹介したいと思います。
まず初めはとある男子のケースです。現在高2のその男子生徒は、中学入学前から河川の水質や、水中にいる昆虫に興味を持っていました。本校の中1の『里山探究フィールドワーク』(長野県飯山市)にも嬉々として参加し、中3の『探究フィールドワーク』(広島・京都・滋賀方面)では、自発的に琵琶湖の水質保全活動に取り組み、教員たちを驚かせました。高1の『才能発見プログラム』では1年間かけて、学校近隣にある渡良瀬遊水地の水質保全活動に取り組みました。その男子生徒は今、大学の先生や地元選出の県会議員と自主的にコンタクトを取りながら、プロジェクトを成功させようと頑張っています。
次にとある女子のケースです。中学入学時から人一倍頑張り屋で、生徒会長も務めた女子生徒が、本校で中高一連の『探究活動』を通して、アイルランドの民族問題に興味をもつようになりました。そして猛勉強して英語を得意にし、夏休みには自らアイルランドに足を運ぶようになりました。自ら選んだ海外での活動体験をさらに学びに活かそうと探究部にも入り、難関の全日本高校模擬国連大会への出場も果たしました。そんな彼女は大学受験を、学校推薦型選抜入試を活用して東京大学に合格・進学し、今は2年生になっています。「開智未来で本気で学べば、大学でも十分通用する力を得ることができる」という彼女の確信ある経験は、後に続く後輩たちのモチベーションになっています。
“3つのI”から未来を描く
探究をベースとした深い学び
何度も言いますが、本校には大規模校ではなかなか見ることのできない、生徒と教師のつながりがたくさんあります。「勉強を頑張っています」「探究活動に力を入れています」という生徒が出てくれば、生徒たちに負けずに活動的で意欲のある先生方が、それぞれの活動を全力でサポートしています。本校は、本質をとらえ、深く考え続けるリーダーを育成する学校でもありますから、自らの意欲で周囲にいる大人たちを巻き込んでいくのも、まさにリーダーとしての素養の一つなのです。言い換えるなら、一人ひとりが活躍できる場、活躍しやすい環境が整っているのが、本校の魅力といえるでしょう。
そんな本校の教育には3本の重要な柱(=3つのI)があります。1つは、「探究」(Inquiry)、2つ目は、「世界水準」(Internationalization)、3つ目は、「ICT」(Information and Communication Technology)です。この3つのIを集大成したのが、『未来TED』という大きなイベントです。中1から高2まで各学年を代表する生徒が一堂に会し、1年かけて取り組んだ探究活動の結果を、タブレット端末を駆使しながらプレゼンしていくのです。流暢な英語でプレゼンしていく生徒もいます。先ほど紹介した男子生徒も、女子生徒も、『未来TED』を通して自らの学びに自信を深め、それぞれの未来を思い描きながら、さらに成長を続けています。
ちなみに「探究」というと、今でこそ各校の学びの根幹に据えられるほど重要な学習活動の一つになっていますが、実は25年前に「探究」のワードを使用したのは開智学園が最初といっても過言ではありません。私は前任校で探究活動推進室長を務めていました。それこそ“探究って何?”というところからスタートしただけに、昨今の情勢に感慨深いものがあります。
未だに大好きな将棋と数学の
“沼”にはまっています(笑)
校長に就任したこともあり、残念ながら数学の授業を受け持つことはなくなりました。ですが、前校長の関根先生が現在でも『哲学』の時間を受け持っていることもあり、私はそれをまねて、『述語論理』というちょっと風変わりな特別授業を開講することにしました。高2・高3の生徒に向けて、「受験勉強に役立たないと思うけど」「君たちが望むならやってもいいよ」と(笑)。そんな発信をしたところ、なんと50人もの生徒が集まってくれました。生徒たちの向学心が嬉しかったですね。なお、保護者と学校を結ぶ会報紙『保護者会報』では、通常の『校長コラム』に“大人だって数学を”という副題を付けて、数学の面白さ、楽しさ、そしてもう1つ、美しさを発信しています。実は保護者会には「親も教員もみんな共に育つ」という「共育」の考え方が深く浸透しているのです。こちらの記事もまた好評でして、数学を愛する教師冥利に尽きるというものです。
保護者の皆さんからよく聞かれるのは、私にとっての将棋と数学の関係です。どちらも終わりがないといいますか、汲めども尽きぬ魅力があると感じています。私が小学校高学年頃から夢中になって取り組んでいるものですが、どうも何かに取りつかれると、そればかりやってしまう癖があるようで、将棋も数学も未だに“沼にはまっている”状態です(笑)。
いずれにしましても、真のリーダーになり得る人材の未来は、その名の通り開智未来から始まっているものと確信しています。

藤井先生の一声で集まってくれた中1と中2の元気な生徒たち。
どの生徒の明るい表情からも、同校で学ぶことの楽しさ、やりがいが伝わってきました。
開智未来中学校
〒349-1212 埼玉県加須市麦倉1238
TEL:0280-61-2021
進学通信掲載情報