私立中高進学通信
2024年特別号
私学だからできるオリジナル教育
サレジオ学院中学校
現地を歩けば発見がある!
観察眼と思考力を鍛える「地理巡検」

左から加賀遼大さん(中3)、増本航希さん(中3)、社会科教員の小川剛史先生、鈴木彰人さん(高2)
サレジオ学院中学校・高等学校では年3回、希望すれば誰でも参加できる社会科教室「地理巡検」を実施しています。社会科の小川剛史先生と、同イベントに参加した生徒3名に、その内容や意義についてお話を伺いました。
街での気づきが
物事を深く考えるきっかけに

創立者ドン・ボスコの教育理念に基づき、教員が生徒と「ともに居る(アシステンツァ)」ことで豊かな人間性を育てるサレジオ学院。生徒と教員の距離が近く、教室の外でのコミュニケーションも活発です。
毎学期に1回開催される社会科教室「地理巡検」は、生徒と教員の深い交流が見られる活動のひとつ。街を歩きながら地域の特色を学ぶ同校独自のフィールドワークです。1学期は地元である港北ニュータウン周辺を、2・3学期は異なるエリアを約半日かけて巡ります。
2024年12月の地理巡検は「軍港横須賀を歩く」と題し、新港ふ頭やドブ板通り、空き家が多くなっている地区などを歩いた後、軍港巡りのクルーズに乗船しました。ドブ板通りでカレーの香りがしたり、空き家が多くなっている地区ですれ違うのが高齢者ばかりだったりと、現地を訪れるからこそ体感できる驚きと発見に満ちていたそうです。
「地理巡検をわかりやすく言うと、『ブラタモリ』です。各ポイントで教員が解説を行いますが、答えがない問いについては生徒と『どう思う?』と意見を交わし、語り合って歩きます。社会科は外に出かけて自分で見たり聞いたりすることで理解が深まる教科ですから、このような体験学習にも力を入れています。地理巡検をきっかけに、生徒がさまざまな視点で物事を観察し考えることができるようになってほしいと願っています」(社会科/小川剛史先生)
同校では「25歳の男づくり」と銘打ち、高校卒業時の18歳ではなく、社会の中で自らのポジションを実現しているであろう25歳を念頭に置いた人間教育を行っています。地理巡検でのリアルな体験は、社会に出た後の人生にも活きる糧となることでしょう。
歴史、時事問題、日常生活など
すべてに地理が関わっている

地理巡検には、多い時は40名を超える生徒が参加し、行き先などのコーディネートは地理の教員3名が持ち回りで担当しています。中3の加賀遼大さんと増本航希さん、高2の鈴木彰人さんはこれまで何回も地理巡検に参加してきました。どのような活動を行い、どのようなことを考えたのでしょうか。
「地理巡検では、自分がよく利用する電車の線路がカーブしている理由がわかったり、自宅の近くが昔は海だったことを知れたりと、身の回りに関する新たな発見がたくさんあります。それが楽しくて毎回参加しています。私はもともと歴史が大好きなのですが、他の分野にはそれまであまり関心を持てませんでした。しかし地理巡検を通して、歴史と地理は切っても切り離せないものであり、さらに現代の時事問題にもつながっていることを強く実感しました。おかげで興味の範囲が大きく広がりました」(加賀さん)

「印象に残っているのは『豊洲とオリンピック』をテーマに豊洲周辺を歩いた回です。工業地帯が広がっているかと思えば、駅周辺は商業施設があって家族連れも多く、表情に富む街だと感じました。
地理巡検には地理の先生が3名も参加するので、メインで解説を行う先生はもちろん他の地理の先生ともじっくり話ができます。時には校長先生や退職した先生が顔を出してくださることもあります。先生方と街の風景を見ながらいろいろな話をしたり、おすすめの地理アプリを教えてもらったりすることが楽しいです。地理に対する興味がより深まり、昨年は地理オリンピックに挑戦しました」(増本さん)

「私にとって地理巡検の一番の魅力は先生や後輩との交流です。散歩しながらだと、将来の話や日常生活の不安や迷いに対するアドバイスなど、学校ではなかなか話題にできないことも話しやすくて楽しいです。
もちろん地理の面白さも体感しています。地理巡検の行き先の一つである高輪ゲートウェイ周辺は普段からよく行くエリアですが、その地理や歴史については深く考えたことがありませんでした。地理巡検で『ここは江戸時代にこうやって使われた跡地だ』などの話を聞いて大変面白く感じ、他のエリアを歩く時も土地の背景に思いを巡らせるようになりました」(鈴木さん)
地理巡検の行き先(テーマの一例)
「軍港横須賀を歩く」
新港ふ頭やドブ板通りなど異国情緒あふれる横須賀の街を歩き、造船所が造られた明治時代から現在に至るまでの変遷をたどります。

「YOKOSUKA軍港めぐり」クルーズ乗船時の様子。
アメリカ海軍の空母ジョージ・ワシントンが見え、生徒たちは大興奮!
「港北ニュータウン今昔物語」
同校のある横浜市都筑区を中心に歩きます。江戸時代につくられた富士塚や、鶴見川多目的遊水地などを見学し、学校周辺地域の歴史や特色を学びます。

ドイツから移設されたベルリンの壁。
都筑区にあり、誰でも見学可能となっています。
「豊洲とオリンピック」
2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に伴い再開発が行われ、工業地帯から生まれ変わりつつある街・豊洲を歩きます。

豊洲にある石川島播磨重工業の造船所跡で記念撮影。
「江戸~東京のゲートウェイ」
古くから人々のにぎわいが絶えない東京都港区の高輪・三田・芝地区を巡ります。錦絵に描かれた場所を実際に訪れるほか、先端技術を使った建設現場の見学も。

高輪ゲートウェイ駅前で説明を受ける生徒たち。
サレジオ学院中学校
〒224-0029 神奈川県横浜市都筑区南山田3-43-1
TEL:045-591-8222
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