私立中高進学通信
2024年特別号
2024年特別号
東京成徳大学中学校
創造性、主体性、チャレンジ精神の備わった
Distinguished Learnerを育てる
自立した学習者
東京成徳の理科 教育

中1理科2分野のアクティビティの1つ『生物の分類』の様子。
授業の主体者である生徒を
“遊び心”満載の授業で育成
社会の変化に対応し、主体的に躍動できる「グローバル人材」の育成が、同校の使命です。具体的には、創造性・主体性・チャレンジ精神の3つの力を備えた「Distinguished Learner」(自律した学習者)の育成がその目標となります。
そんな同校の教育を進めていくうえで必要になるのが、「未来を見据える」「世界を知る」「自分を拓く」の3つの要素から成る学習法です。理科の中村千鶴先生が実践するユニークな授業にも、Distinguished Learner育成につながる興味深い試みがちりばめられていました。

「そもそも物理・化学・生物・地学のすべてを踏まえて『理科が嫌い』という生徒は、まずいないものと考えています。生物の中でも植物は苦手だけど動物は好きという生徒もいれば、テストは嫌いだけど実験や作業は好きという生徒は実際にいるからです。そこで私は常にいろんな刺激を生徒たちに与えながら、生徒一人ひとりの“どこか”に、興味・関心のあるテーマが引っかかってくれたらいいなとの思いで理科の授業に取り組んでいます」
誰にでもある“理科の可能性”に光を当てようと、教科書一辺倒にならない指導を心がけている中村先生のこだわりは、ほぼ毎回実践しているという「Playfulness」(=遊び心)に凝縮されていました。
「ただ教科書に載っていることを“正解だから覚えておかなければならない”と捉えるのではなく、教科書に載っていない実験や観察を、アクティビティとして楽しんでもらっています。そのポイントは、『こんな実験があったらおもしろそう』『こうしてみたらどうなるの?』など、生徒の興味、関心を受け止めることです。実際にできそうだなと私が判断したら、『ちょっと実験してみよう』『観察してみよう』と本格的に動き出します。それが私の求める“遊び心”なのです」
昨年度中1の授業を担当した中村先生は、学年修了時に『理科が好きですか?』とのアンケートを実施したそうです。その結果、『大好き』と『まあ好き』を合わせた数は約6割という結果に中村先生も一安心。ちなみに『大嫌い』と回答した生徒はゼロで、中村先生は大きな手応えとともに、Distinguished Learnerとしての未来に期待を寄せています。
それでは、中村先生が「授業の主体者は生徒です」と笑顔で語る、遊び心満載の授業の一端を見ていきましょう。

生徒たちに大人気という理科のフィールドワーク。
「進学指導」ではなく「進学サポート」を心がける同校ならではの、
生徒の可能性を広げるプログラムです。
自律した学習者を育てる
Playful Lessons
Case 1 ハトの餌を発芽させてみよう!
POINT
“麻の実”だけが発芽しない理由を知る
中村先生が担当する中1の授業では、まず「身の回りにある科学に気づく」ことをテーマに1年間が始まります。
「例えば、『植物の種が発芽するには何が必要か?』を題材に、ペットショップなどで普通に販売されているハトの餌の分析を行ったことがあります。実際にハトの餌として売られている商品の中には、トウモロコシをはじめ、小麦、大麦、エンドウマメ、ソバの実、麻の実などの雑穀類がブレンドされており、その一つひとつの発芽状態を観察していくのが授業の目的になります」
注目の授業は「ハトの餌」として売られている商品の中身を分類するところからスタート。標本づくりまでが前半の授業です。
「ハトの餌の中身に詳しくなったら、次は発芽させてみることが後半の授業です。実際に学校のベランダで育てながら発芽状態を通して単子葉か双子葉かの違いを分析したり、さらには根と芽のどちらから先に出るのかといった様子も細かく観察することができました。ただ…」
ここで中村先生だけが想定していた“小さな事件”が起こります。
「結論をいうと、麻の実だけはどうやっても発芽しませんでした。でもそれは私の方であらかじめ想定していた結果で、仮に麻の実を発芽させてしまえば、大麻栽培として法律に抵触してしまうことを生徒たちに知ってほしいと考えたからです。したがって、『工場から出荷する際には、あらかじめ発芽しないように実が焼かれている』というのが正解なのです。理科を通して世の中の仕組みを知ることも一つの遊び心であると考えています」

ハトの餌の発芽実験の応用で、
中1の生徒が夏休みに主体的に取り組んだ「家にあった果物と野菜の発芽実験」レポートより。
なぜバナナは発芽しないのか…という謎にも迫った秀作だったようです。

高校過程の探究型学習で取り入れられている『美味しい珈琲を淹れよう』と題したゼミ。
「焙煎も抽出もデータを分析することでサイエンスになるのです(笑)」
と、中村先生も笑顔で推奨する人気の授業です。
自律した学習者を育てる
Playful Lessons
Case 2 葉脈標本を自宅でつくってみよう!
POINT
何でも受け入れる生徒になってはいけない!?
中村先生の授業に刺激を受けて、自宅で自ら実験、観察をする生徒が増えているといいます。そんな中、中村先生がとてもおもしろかったと語る、とある中1の生徒の葉脈標本(スケルトンリーフ)づくりを紹介します。
「一般的に葉脈標本を授業でつくる場合、時間短縮のために葉を水酸化ナトリウムで煮てから始めます。一方、家庭でそれをやるとなると、水酸化ナトリウムの購入を含めて若干ハードルが高くなるので、特に中1には難しくなります。だから私は“できない”と思ったのですが、『できましたよ』と、ある生徒は漂白剤を水酸化ナトリウムの代用品にして、みごとな葉脈標本をつくってきたのです」
その生徒が語る成功の秘訣は、批判的思考力(クリティカルシンキング)にありました。
「聞けば、先生は水酸化ナトリウムで葉を煮ていましたが、そもそも煮なくてもできる方法があるのではないかと考えたというのです。私はとても嬉しくなりました。なぜなら先生がこう言ったからこうなんだと、何でも一方的に受け入れる生徒になってほしくないと思って授業を行っているからです。与えられた情報を客観的にとらえ、創造性も豊かに、主体的に判断し、挑戦する姿勢が、中1の段階から備わりつつあるところに、教科書に載っていない授業の力を実感しています」

授業中に生徒がつくった葉脈標本。
「葉脈というものを学術的に考えるというよりも、
まずは葉脈を取り出してみるという遊び心を大切にしています」(中村先生)。
東京成徳大学中学校
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