私立中高進学通信
2024年特別号
私学だからできるオリジナル教育
東京成徳大学中学校
写真も、動画も、お絵描きも
なんでもできる「数学」から
きみの未来を創造しよう!

創造性・主体性・チャレンジ精神の備わった「自律した学習者」(Distinguished Learner)の育成に努める東京成徳大学中学校。「数学」の授業も自律した学習者を育成する重要なアイテムです。Apple社が認めるApple Distinguished Educator(以下、ADE)の1人、数学科の降矢貴充先生に、iPadを効果的に活用した【学び型】授業についてお話を伺いました。
Apple社が認定するICT教育の先端校

2017年度からiPadを導入し、積極的にICT教育に取り組んでいる同校は、Apple社が認定するApple Distinguished School(以下、ADS)です。授業や校外学習では、Apple社の教育カリキュラム(『Everyone Can Create』)を採用し、動画・写真・音楽・手描きのスケッチなど、生徒一人ひとりの創造性(Creativity)を伸ばしながら、自らの言葉による発信力の強化にも努めています。
降矢貴充先生(数学科主任・ICT活用推進部課長)が担当する『数学』においても、「創造性」の育成をテーマにしたユニークな授業が展開されています。降矢先生は同校に5名在籍するADEの1人で、Apple社が認めた最先端教育の担い手・普及者です。
「竹」と「偶数」の共通点から学ぶ方程式の解
自律した学習者を育てるために、降矢先生が実践する数学の授業の特徴はどのようなものでしょうか。
「まず本校の数学の授業スタイルは、【教え型】と【学び型】を使い分けて実践しているところに大きな特徴があります。ざっくりいいますと、前者は従来型の授業、後者は生徒たちが自分自身で学んでいくというイメージです」
降矢先生が推進する【学び型】の授業の主要テーマが、同校がめざす自律した学習者の育成に欠かせないポイントの1つ、「創造性」です。
「中1の生徒たちの創造性を育成する1つのきっかけとして、例えば、方程式を学ぶ授業では、『2枚の写真が同じである瞬間を探す』という課題を投げかけました。生徒たちが創造力を膨らまして考えた作品は次の通りです」


数学が苦手な生徒の「解」にも、その生徒らしい創造性が
続いては、中1の文字式です。

「そもそも数学の文字式が、どのようにして抽象的な概念を表しているのか、それを説明するのは大人でも難しいものです。もちろん文字式は小学校から学んでいるはずですが、これから先の数学の好き嫌いに関わることだけに、楽しく教えていきたいと思っています。そこで取り入れたのが、iPadを活用した“お絵描き”です」
「この“虹”の絵を描いた生徒に聞くと、『aは不透明であるが、その不透明度をどう表せばいいのかわからないので、1/2だけ薄く描いた』と答えました。私はこの作品にその生徒ならではの創造性があることを実感しました。今後の伸びしろに期待しています」

なお、高1を対象にしたゼミの中で、アプリ開発の講座を受け持つ降矢先生は、自ら手掛けたアプリをApp Store(アップ・ストア)に公開しています。生徒たちは自由にダウンロードでき、生徒一人ひとりの創造性の育成に一役買っています。誰でも、いつでも気軽に降矢先生お手製のアプリをダウンロードして、創造性を身近に感じることができます。
遊んでいるように見えても実は学んでいる授業
数学の授業では、アプリを使った動画作成の課題もよく行うそうです。
「例えば、階段を上り下りする動画作成を通して、正負の数を表現してくれた生徒がいます。iPadを手に教室を飛び出し、校舎のいたるところで動画撮影をしながら、身の回りにある数学と触れ合うというイメージです」


「教科書を用いた授業ではよく、『移動というのはプラスとマイナスの概念である』と教えていますが、それを実際にやってみようということで、iPadを片手に教室を飛び出すのが私のこだわりです(笑)。ちなみに階段を使って正負の数を表現してくれた生徒の動画は、入学式からわずか1ヵ月後に校内で撮影したものです。和気藹々とした雰囲気の中で、移動の概念を学んでもらっています」
計測アプリを使って『三平方の定理君』を探せ!
次は、iPadに搭載されている計測アプリを使った「三平方の定理」の授業を紹介します。
「簡単にいいますと、校舎内をまわって三平方の定理を見つけてもらう授業です。『三平方の定理が成り立つような作品をつくる』ことがミッションです。作品は写真でも動画でもかまいません。ただ自分の作品に“命”を吹き込んでもらうため、直角三平方に手足や目・口などを入れ、私がリクエストした『三平方の定理君』というキャラクターにして、場面に合ったセリフを入れてもらうことがルールです」
大人の目には、やや高度なテクニックが求められるリクエストであるように感じますが、入学直後からiPadを使いこなせるようになっている生徒たちにとっては、お手の物。事実、生徒たちの作品には、降矢先生が高く評価するそれぞれの“味”がありました。



【学び型】の授業から生徒が自走する環境を創出
ところで、降矢先生が中2の秋にとったアンケートでは、数学の授業が好き、どちらかといえば好きという生徒は約8割でした。中3ではまだアンケートを実施していないということですが、これから内容が高度になるにつれて数学から離れてしまう生徒の増加が予想されます。降矢先生は、これからも数学とのつながりを絶やさないような授業デザインを進めていくそうです。
「『友だちとの共同制作を通して交友が深まり、数学をより身近に感じることができた』『身の回りのことが意外と数学とつながっていることに気づいた』などと、具体的な感想を寄せてくれる生徒も少なくありません。もっとも、『偏差値が上がらないのでは?』『学問としての数学の授業がこれでいいのか?』といった保護者からの意見があることも事実です。ですが、数学の面白さ、楽しさを理解できる“フィルター”を持ってない生徒たちに、どうやってその“フィルター”を育てていくかがポイントであり、そのために創造性の育成が重要になると私は考えています。結果として数学の内容に積極的に踏み込んでくる生徒が増えてきているのは、私としては非常に興味深いところです。そういう意味では“自走する環境”というものが、創造性の育成に焦点を当てた【学び型】授業によって創出できていると考えています」



「私が担当する数学の授業やアプリ開発のゼミを通して、体験したことを自らの進路とリンクさせてみる生徒が出てきているのも、自律した学習者の育成に努める本校の特徴ではないかと思います。中1でも中2でも中3でも、優秀な作品はなるべく発表の機会を設けてみんなでシェアできるようにしています。こうした環境のなかで数学の面白さに目覚め、数学をもっと身近なものに感じてほしいですね」
iPadを効果的に活用し、生徒一人ひとりの創造性(Creativity)を伸ばすための自分だけの作品作りへとつなげていく、同校の数学。楽しさもワンランク上の新しい数学がここにありました。
東京成徳大学中学校
〒114-8526 東京都北区豊島8-26-9
TEL:03-3911-7109
進学通信掲載情報
年度別アーカイブ
- 2024年度
- 2023年度
- 2022年度
- 2021年度
- 2020年度