大学や社会が身近になる!~高大連携・キャリア教育~

中1の「稲作」では厚木にある農大の専用農場を利用し、田植えから除草、稲刈りまでを体験。
収穫したお米は一人ひとりに配られます。膝まで泥につかって作業する生徒たちはいい笑顔。
農業の大変さや達成感を味わっているそうです。
CASE2東京農業大学第一高等学校・中等部
東京都世田谷区・共学校
教育理念「知耕実学」を土台に、
「夢の創造と実現」を後押しする同校。
東京農業大学のリソースを活かした体験学習を多数展開しています。
高大連携による「体験」が充実
チャレンジへの意欲を養う

中等部教頭
奥田 修司 先生
本物に触れる「実学」を通して「知」を耕すという意味の「知耕実学」を掲げ、「他者から得る学び」「日常から得る学び」「体験から得る学び」を重視している同校。中等部が開校した2005年より、東京農業大学(以下、農大)との高大連携プログラムを進めています。
中1では農大の専用農場で「稲作」を体験。中2の「お米の科学」では同大の研究室でデンプンの観察や古米と新米の違いを分析し、お米のおいしさを科学的に検証します。中3では同大の食品加工技術センターで「味噌づくり」に挑戦し、発酵や麹について学びます。ここまでは中学生全員参加のプログラムですが、高1の希望者は同大で発酵学の講義を受け、「醤油づくり」も行います。
「さらに高2の希望者は、農大の教授陣がオンラインで行う『STEAM教育講座』に参加できます。同講座は東京情報大学(設置者:東京農業大学)でも開講しており、こちらへの参加も可能です。『味と匂いを科学する』『万華鏡に潜む数学』など幅広いテーマを扱っており、後日配信されるアーカイブは中学生の視聴が可能です。そのほか、農大で開催される『食と農と環境を考える世界学生サミット』の高校生によるポスターセッションにも毎年参加しています。
高大連携における本校の強みは、農大が隣接する地の利です。連携プログラム以外のことにも相談に乗っていただいたり、農大からお声がけいただいたりと、フットワーク軽く交流しています」 (中等部教頭/奥田修司先生)
高大連携の目的は、多彩な体験の場を生徒たちに提供することです。
「今春の農大への内部進学者は8名と、本校ではほとんどの生徒が外部大学に進学しますが、本校での体験を経て『自分の興味・関心への気づきにつながった』『大きな学びを得た』『チャレンジへの意欲が高まった』と話す生徒が多く存在します。外に出ていく生徒も含め、農大が生徒の活躍を後押ししてくれるのはありがたいことです。
今後は内容のブラッシュアップを図り、地域活性化につながる活動にも参加していきたいと考えています」
高大連携以外にも、保護者が自身の仕事内容や生き方について語る「キャリア授業」、卒業生による「キャリア講演会」などを行い、進路について考える機会を用意しています。
そして同校は2025年度より高校募集を停止し、完全中高一貫校として新たなスタートを切りました。
「完全中高一貫校化と同時に、農大併設の東京農業大学稲花小学校の1期生が本校に入学し、中学受験を経て入学した生徒とともに学んでいます。そのため、中学からの入学生と高校からの入学生が混合することで起こっていた『化学反応』を、より早期に移行することが可能となりました。
現在の中1生がその1期生にあたるので、生徒たちがどのように切磋琢磨しながら成長を遂げていくのか今後が楽しみです」
中学3年間で取り組む「課題研究発表会」の冊子。自分の興味・関心のあるテーマを研究する大学研究室に生徒自身でアポイントを取り、インタビューを行います。
「ハイレベルな研究に取り組む生徒も多く、例えばマイクロプラスチックを研究した生徒はその成果を認められ、東大の先端科学技術研究センターの高校生研究員として活動しています」(奥田先生)
放課後に開講される自由参加の講座「一中一高ゼミ」も、学問の境界を越えた「体験」の機会。「数学を目で見よう」「フィールドワークの達人」など、多彩なテーマで年間100本ほど開催しています。教員が自分の趣味を活かして指導するほか、外部講師を招くこともあります。
「お米の科学」の様子。









