(左から)中学部長・竹村 慎吾先生、中3のNさん、Rさん
国境を超えた協働を通して課題解決にあたり、「世界のどの舞台に立っても堂々と自分の意志で行動し、広い視野に立って社会をけん引する力を持つ人物」、すなわち『京都発世界人財』の育成を目指す同校。その実現に向けた独自の取り組み、『地球学』と『カナダ研修旅行』について、中3生と中学部長・竹村慎吾先生にお話をしていただきました。
バスケットボール部に所属しながら、苦手教科である数学の克服に奮闘中。「英語の勉強にも力を入れていて、目下の目標は、中学卒業までに英検準1級に合格すること。高校での『国際コース』進学に向けて頑張ります」
小学校時代からヒップホップダンスに熱中。中2の『地球学プレゼンテーション大会』ではヒップホップカルチャーをテーマに選んだ。「特待生としての高校進学を目標に勉強を進めつつ、英検2級合格を目指します」
「本校では、京都先端科学大学工学部と連携してロボット制作に取り組む『ものづくり講座』をはじめとする、STEAM教育・中高大連携教育を推進中。一人ひとりが強みを見つけられるような学びの環境を追求していきます」
こちらの学校を選んだ理由を教えてください。
Rさん
私は小3のとき、インドネシアから日本に来ました。その頃から、国際関係の仕事に就きたいという思いがあり留学したいと考えていて、中学に『カナダ研修旅行』を経験できること、高校には10カ月の長期留学に行ける『国際コース』があることに惹かれて志望しました。
Nさん
好きな英語をしっかりと学べること、『地球学』に魅力を感じたことが決め手です。
N さんのように、中学の体験型学習『地球学』を志望理由に挙げる生徒が多いそうですね。
竹村先生
『京都発世界人財』を育成するための取り組みは多彩ですが、その代表格とも言えるのが『地球学』です。“ホンモノ”に触れることを重視し、中学3年間、土曜日に隔週で実施するプログラムで、教員のアイデアも取り入れながら年々バージョンアップしています。二人は、どのプログラムが印象に残っていますか?
Nさん
一番思い出に残っているのは、中1の深泥池でのフィールドワークです。食べられる葉っぱがあると教えていただいて、食べてみたら美味しかったことを今も覚えています。入学して間もない頃だったのですが、とても楽しくて、「中学校の勉強っていいな」と思いました。豊かな自然に触れて、改めて「この環境を守っていかなければ」とも感じました。
Rさん
私は『地球学プレゼンテーション大会』。『地球学』では発表する機会がたくさんあって、とても楽しいです。
皆の前で話すんですよね。緊張しませんか?
『地球学』の学びの集大成として、学年末にコンテスト形式で実施する『地球学プレゼンテーション大会』。生徒が設定したテーマは多岐にわたり、クラス・学年の予選を経て、各学年10名の代表者を選出する。
R さん
入学当初は人前で話すことが苦手で、言葉に詰まりがちでしたが、だんだん上手く話せるようになりました。
竹村先生
R さんは今年のオープンスクールで、『カナダ研修旅行』についてのプレゼンテーションをしてくれましたが、説明も、資料もわかりやすかったですよ。
Nさん
僕は話すことは好きなのですが、プレゼンテーションを組み立てるのが苦手で…。思いつきを形にするのが難しいと感じています。R さんのプレゼンは上手だなと思うので、学ぶことがたくさんあります。
R さん
皆がほめてくれるので、回数を重ねるごとにモチベーションが高まっていきました。将来、プレゼンテーションを武器に仕事ができればいいなと考えています。
Nさん
中3では卒業論文に取り組みます。シート作成については、これまでR さんや皆のプレゼンテーションを見てきたなかで、「自分も取り入れよう」と思っていることがあるので、ぜひ活かしたいです。
竹村先生
N さんはハキハキと話せるところが強み。素晴らしいことですよ。入学したらまずは『地球学』を通して、いろいろな分野に触れ、視野を広げてほしいですね。そしていつか「これだ!」という分野が見つかったときには、『地球学』で磨いた「調べて、まとめて、人にわかりやすく伝える」スキルを存分に発揮してください。
中1最初のフィールドワーク『深泥池観察会』では、氷河期からの生き残りとされる生物と、温暖地に生息する生物が共存する京都市北区の深泥池を訪れる。
宿泊をともなう『地球学』のフィールドワーク『地球学特別プログラム』(希望制)。2023年度は長崎県・島原へ。
R さんが志望理由の一つとして挙げてくれた『カナダ研修旅行』が、2023年に復活しましたね。
竹村先生
『カナダ研修旅行』は中3全員が参加するもので、『地球学』やグローバル教育を通して培った姿勢や力を発揮する、中学3年間の学びの集大成の場として位置づけられています。事前学習では、佐々井宏平校長が手書きした世界地図を使ったカナダの地形・気候についての講義を聴いたり、現地校での日本文化に関するプレゼンテーションに向けた準備などに取り組みます。
『地球学』でのプレゼンテーションの経験をそのまま発揮できますね。
『W担任制』やネイティブ教員による英語の授業『OC』により、日常的に英語を使う環境。間違うことを恐れずにどんどん話す姿勢を育んでいる。
Rさん
はい!
Nさん
5つの学校に分かれて訪問するので、グループごとに練習をしました。
竹村先生
本校では中学3年間、ネイティブ教員と日本人教員による『W 担任制』を採用しているほか、2023年度から保健体育・音楽・美術を英語で学ぶ『イマージョン授業』を導入するなど、英語を使うことが“当たり前”の環境を用意しています。現地でのコミュニケーションはどうでしたか?
N さん
友だちを作りたいと思っていたので、実際の会話をイメージして声に出して練習したり、話すときの話題も前もって考えたりと、自分なりに準備をして臨みました。現地では、自分から積極的に「Hello !」とあいさつしていると、現地の生徒たちが「友だちだよ」という意味のハンドサインを返してくれたんです。そこから話しやすい雰囲気ができて、想像以上に馴染むことができました。
Rさん
最初は緊張して、Nさんのように自分から声をかけることもできず、友だちと一緒に行動できずにいたんです。でも現地の生徒の一人が話しかけてくれたことがきっかけになって仲良くなり、バディとして行動するようになりました。『W 担任制』の環境や、ネイティブの先生による英語の授業で会話の練習をしてきたこともあったので、英語に対する壁のようなものはなく、自然に話せました。
現地校では『地球学プレゼンテーション大会』などを通して自然と身についた、わかりやすく伝える意識・スキルを発揮して、日本文化を紹介するプレゼンテーションに挑戦。英語がコミュニケーションツールであることを改めて実感し、学びに対するモチベーションが高まる貴重な機会となった。
現地校の生徒がバディとして学校生活を共にしてくれる。数日間訪問するので、徐々に交流も活性化。「長期留学ができる『国際コース』に進学したいという気持ちがより高まりました。次はぜひ、カナダ以外の国を見てみたいです」(Rさん)
現地では全日程、ホームステイだとうかがいました。
Rさん
私が滞在したご家庭は、「お腹を空かせないこと」がハウスルール。食事とは別にマフィンなどを用意して「自由に食べてね」と言ってくれたり、食事のときには部屋まで迎えに来てくれたり、親切にしてくださったので、コミュニケーションもスムーズにできました。
Nさん
僕はずっとしゃべっていました(笑)。友だちは話しかけることに少しためらっていたのですが、食事のときにホストマザーが話しかけてくれたので、緊張もほぐれたみたいです。
竹村先生
上手く話せなくても、間違っても大丈夫。英語を使うことが“当たり前”の本校で、間違いを恐れずに話す姿勢がすでに身についているはず。研修旅行でも、その姿勢を大切にしてほしいと思います。
学校生活を通して英語で話すこと、外国人と接することに慣れてはいても、ホームステイとなると緊張するもの。Nさんはホストファミリーと初めて一緒に外出したとき、字を読み上げては『これはどういう意味?』と質問して、会話のきっかけをつくっていたそう。「話しているうちに慣れてきて、自信を持つことができました」(N さん)
異文化交流を通して、気づいたこと、感じたことはありましたか?
Rさん
日本が謙遜する文化だとすれば、カナダは受け入れる文化。「かわいいね」と言ったら、「うれしい。あなたもかわいいよ」と返してくれるんです。
Nさん
そうそう。だから現地で「その服かっこいいね」とほめられたときは、素直に「ありがとう」と答えました。またカナダでは、相手を尊重する文化も根づいています。昼休みにラグビーをしようということになって、僕は力が強くないけれど、「じゃあパスをしてくれれば大丈夫」と誘ってくれてうれしかったし、無理せずに楽しめました。
『赤毛のアン』の舞台として有名なプリンス・エドワード島を観光。「カナダらしい町並みや景色を楽しめたひとときでした。雄大な自然を感じることができました」(Rさん)
Rさん
同感です。集合写真を撮るときに国旗を飾ったのですが、私の母国のインドネシアの国旗も用意してくれて…。多民族国家ということもあり、相手をリスペクトする姿勢を肌で感じることができました。
Nさん
僕もそうありたいです。異文化に触れて視野が広がったことで、ダンスを活かせる仕事に就くという夢に向かって頑張ろうという気持ちがより強くなりました。
Rさん
現地では自分の意見を積極的に主張する人が多く、その一人ひとりの意見が大切にされていて、意識が変わりました。これからは周りに流されず、自分の考えをきちんと伝えたいと思っています。
竹村先生
いろいろな気づきにつながったようで、本当にうれしいです。『カナダ研修』で学んだことを、ぜひ学校生活においても実践してください。多民族国家であるカナダは、自分が日本人であることや、アジアの一員であることを感じさせてくれる場所。自分が何者であるかを考えることは、世界に羽ばたいていくうえでとても大切なことだと思います。得た学びを糧とし、自らの手で未来を切り拓いてほしいと思います。