
中学部長・竹村 慎吾先生「本校の生徒は、地球学を通じて自由に発想すること、自分から行動する面白さを体感していると実感します。生徒の意見に耳を傾けて、新しい企画にチャレンジしていきたいと思います」
中3・Nくん英語教育に力を入れているところが魅力で同校に進学。小学生のときに動画を通じて“えん罪”に興味を持ったことがきっかけで検察官を目指している。第一志望は国公立大学の法学部。
中3・Sさんオンラインで参加。『地球学』に魅力を感じて入学。日本が小麦を輸入に頼っていることを知り、国内で効率良く小麦を生産する研究に取り組むことに興味を持つ。第一志望は神戸大学農学部。
独自の体験・探究型プログラム『地球学』は、貴校の志望理由になるほど人気の取り組みですね。どのようなものかを教えてください。
竹村先生
情報通信技術の発達により、私たちの生活は大きく変化しています。現在、中高生の子どもたちが社会に出る頃にはサイバー空間と現実空間が高度に融合することで経済が発展する“Society5.0”といわれる超スマート社会が到来するといわれています。このような時代に求められるのは、世界のどこにいても自分の意志で堂々と行動し、広い視野を持って社会をけん引することができる人物であると考えました。本校では、このような時代を切り拓く力を持つ京都発の世界人財を「グローバルイノベーター」と定義し、『地球学』はそのような人物を育むための根幹として位置付けられている探究学習です。『地球学』は、“ホンモノ”に触れることを重視して、「地域を知る」「日本を知る」「世界を知る」という3つの段階で展開していきます。中学3年間、土曜日に隔週で実施するプログラムです。ただ、『地球学』だけではなく、いまや本校の授業はすべてホンモノに触れることにこだわり、主体性を重んじていることはいうまでもありません。
これまでの『地球学』で、印象に残った取り組みは?
Sさん
中2のときの『地球学プレゼンテーション大会』です。この大会は、一年間を通じて地球学で取り組んだプログラムから気になったテーマを取り出して、自分で調べて発表をします。このとき私は、東日本大震災で死者がいなかった岩手県・釜石市に焦点を当てた「釜石の奇跡」をテーマにしました。調べてみると、普段から釜石市は、災害時は集団ではなく個別に避難することを徹底していたことがわかりました。調べた内容そのものに発見があって面白かったのですが、それ以上に中1のときのプレゼンでは資料を読み上げるのが精いっぱいだった私が、このときは内容を暗記してスムーズに発表できたのがうれしかったので印象に残っているんです。普段の授業で、調べ学習の仕方やデータの集め方、まとめ方を学んでいることが活きたのだと思います。
Nくん
Sさんの発表は、根拠となるデータが緻密に収集されていて、僕もよく覚えています。僕は、今年6月に京都先端科学大学の亀岡キャンパスで田植えをしたことです。最初は、泥の中に入るのは抵抗があったのですが、慣れてくると楽しくて、お米ってこうやってできるんだと思いました。実は、僕はお米が大好きなので感動もひとしおでした。
竹村先生
いつもクールなNくんが、そのように感じてくれていたのはうれしいです。今後は稲刈りも計画しているのでそれも楽しみですね。収穫したお米でおにぎりを作ってみてもまた新たな発見があるかもしれません。
グローバル教育としては、海外との交流も活発ですよね。
竹村先生
全生徒を対象としたスウェーデン・ストックホルムの学校との交流に加え、2021年度からは希望者対象でインドとの交流がスタートしました。
Nくん
僕は、幼稚園でインターナショナルスクールに通っていたため、日常会話であれば英語と日本語をほぼ同じレベルで話すことができます。スウェーデンとのオンライン交流では、「IKEAは、一つの街にどのくらいあるの?」と質問しました。インドとのオンライン交流にも参加したのですが、独特のイントネーションで、聞き取ることそのものが難しかったです。
竹村先生
「なぜ、インドと?」という質問を受けることがあるのですが、今や海外イコール欧米諸国、という時代ではありません。インドは今、人口がさらに増え、今後、ますます存在感を発揮する国となるでしょう。インド人の独特のイントネーションに戸惑い、どのようにすれば上手く伝わるのかを考えたり、さらにインドという国に興味を持つきっかけになればという思いがあります。
Nくん
先生の話を聞いて、アフリカの人とも交流してみたいと思いました。
竹村先生
それも面白いですね。前向きに検討しましょう。2023年からはグローバル教育の一環として、英語で保健体育・音楽・美術の授業を行う『イマージョン教育』を実施します。さらに、中1から中3まで日本人教員とネイティブ教員が担任となる『W担任制』を実施して、ホームルームの伝達事項をネイティブ教員が行うなど、中学全学年で、「英語は日常的なものである」という環境をつくります。
Sさん
私たちのときは中1時のみW担任制でした。入学当初は、ネイティブの先生の言葉が聞き取れなかったのですが、数カ月で耳が慣れ、今は全く抵抗がありません。
一つのテーマから新しい企画が次々と生まれますね。
竹村先生
そのとおりです。足元を掘り下げ、世界に目を向け、自分で考える。すべてが『地球学』の学びにつながると感じています。このような流れで、銭湯好きの教員の発案で、昨年、薪を使った銭湯を経営されている方に学ぶ『銭湯プロジェクト』がスタートしました。銭湯が少なくなりつつある今、その魅力を見直して、皆で盛り上げるにはどうすれば良いのかを考えました。
Nくん
協力してくださった銭湯に行き、浴槽の掃除をして番台の仕事について教えていただきました。僕は、利用促進として、中学生料金を設定することを提案しました。すると、「組合のような組織があり、新たな料金設定はできないように設定されている」ことを教えてくださいました。最初は良いアイデアと思ったのですが、そういうルールや仕組みなど、表には見えていない事情があることを知り、視野が広がりました。
竹村先生
何でもないように思うことでも社会の大きな流れにつながっています。『地球学』は、真面目に、真摯に取り組む姿勢があれば、すべてのことが社会の一部になっていることを知ることができる機会でもあるのです。さらに今年は特別プログラムとして、8月に京都府伊根町に行き、養殖に取り組む企業の方にお話をうかがいました。
『地球学』とは別に、2022年度から『ものづくり講座』が始まりました。マイコンを利用してロボットのプログラミングに取り組むプロジェクトで、現在、10名の生徒が参加しています。目標はロボットコンテスト出場で、楽しみながら力をつけています。
この2年間、コロナ禍で行動制限がかかっていたのですが、これからはできる限り“現地でホンモノに触れる”機会をかなえていきたいと思います。

地球学プレゼンテーション大会

インドとの交流
同校が考える学びの意義は、「自分の好きなことを見つける」「自分から学ぶ姿勢を持つ」「自分の力で調べ、考え、まとめる」「自分の考えを伝える」「さまざまな人を受け入れる」「失敗を次に活かし“やればできる”ことを知る」「自信を持つ」。これらを意識して展開する学び全体の根幹として位置づけているのが、探究型学習『地球学』です。大学との連携のもと、学園全体で強化を目指すグローバル教育を融合させたオリジナルプログラムでは、中学3年間を通じて“地域→日本→世界”へと視野を広げながら“ホンモノ”に触れる経験を積むことを重視。夢や将来の目標を見つけ出す原動力ともなる「知的好奇心」を引き出していきます。
また、学年・教科の枠を越えた探究活動やフィールドワークを通して、生きる力を養うことで、グローバルな視野に立って自ら問いを立てて考え、行動し、世界の人々と協働して課題を解決できる“グローバル・イノベーター”を育みます。
学びの相関図
銭湯プロジェクト
銭湯が町から姿を消していきつつある今、京都市内の薪を使った老舗銭湯との連携で、
2021年度にスタートしたこのプロジェクトは「銭湯文化を守る」「勤労観を育む」がコンセプト。
仕事内容をヒアリングし、銭湯を活性化するためのアイデアを皆で考え、提案した。
地球学特別プログラム
2022年度は、舟屋で知られる京都府与謝郡伊根町にて、8月1日から一泊二日で実施。
舟屋や、漁船からブリ・岩ガキの養殖を見学。
また、地元の方々との座談会やビン玉編み体験を通じて、
伊根の文化や地元の方々の温かさに触れる研修となった。
海外交流校とのオンライン交流
「コロナ禍でも世界とつながろう」と、2020年度からスタートした『スウェーデンオンライン交流』。
スウェーデンの学校の生徒とつながり、自己紹介や互いの国の文化を紹介。

山田尊文教頭
『Society5・0』といわれる社会において物事の本質を見極め、多様な人々と協働する過程で自分の考えを構築・発信するためには、多角的視点から問題を捉える力・論理力・そして語学力が不可欠です。また問題の解決策を探るプロセスにおいては、統計分析・データ解析を行うための数学的知識も必要となります。これは大学の研究においても言えることで、つまり中高では、文理を問わず教科知識・専門知識を備えることと、その知識を活かして創造的・論理的に思考し、課題や解決策を見出す力を育むことが求められているのです。
そのような力を持つ『京都発世界人財』を育むためには、幅広い学力を身につけさせることが不可欠。加えて、自分の強みを知り、自己肯定感・自信を持つことが必要だと考えています。本校では中学3年間を“適性を見極める時期”、高校3年間を“適性を伸ばす時期”と位置づけ、生徒一人ひとりが強みを見つけ、伸ばしていけるように、自分を表現できる環境を多彩に用意しています。
中学3年間の学びの根幹をなす「学ぶ意味・よろこび」を知る独自の探究型学習『地球学』では、教員の人脈やアイデアも活かしながら年々バージョンアップを遂げており、生徒たちが目を輝かせるようなプロジェクトが次々と立ち上がっています。
2022年度からはSTEAM教育・中高大連携教育推進の一環として、京都先端科学大学工学部との連携のもと、ロボット制作に取り組む課外活動『ものづくり講座』がスタート。グローバル教育・英語教育においても、2023年度より新たな取り組みを予定しています。
本校だからこそ実現できる一貫教育を創り上げたいと考えています。

前述の『銭湯プロジェクト』のほかにも、これまで取り組んでいた『養蜂』が『はちみつプロジェクト』に発展。遠心分離機でのはちみつ採取や、文化祭で発売する瓶入りはちみつのラベルデザインなどを生徒が担当。一人ひとりが得意分野を活かして活躍する姿が見られた。

京都先端科学大学との連携のもと、数学科教員が指導を行う放課後の『ものづくり講座』。プログラミング基礎、センサーの制御方法を学びながら、オリジナル作品を制作。学内のコンペティションや外部のコンテストにもチャレンジ!
2022年度よりこれまで中1のみ対象だった『W担任制』(ネイティブ教員+日本人教員)を中学3年間に拡大し、英語が“あたりまえ”の環境に。さらに2023年度より保健体育・音楽・美術を英語で学ぶ『イマージョン授業』を導入予定。コミュニケーションツールとして実践的な英語を使いこなすための基盤を築く。

「コロナ禍でもあきらめない」という思いで、2020年度より始動したグローバル教育プログラム『スウェーデンオンライン交流』。2021年度からは中学希望者対象に、インドとの交流もスタート。授業のネイティブ教員の発音とは異なるため、生徒たちは戸惑っていたものの、グローバル社会においては普通に起こる状況。