中高6年間を満喫しよう!~学校生活~


Profile
川合 正 先生
1950年三重県生まれ。
学校法人東洋大学京北幼稚園前園長、北豊島学園(幼・中・高・通信・専)理事。
京北中学高等学校、京北学園白山高等学校の元校長。
東洋大学文学部非常勤講師として教員養成に15年間携わるとともに、東京私学教育研究所をはじめ各地の教育委員会や幼・小・中・高教員研修、保護者会など全国で活動。
『男の子がやる気になる子育て』(かんき出版刊)、『未来を支える君たちへ』『「動ける」子にする育て方』(2冊は晶文社刊)など教育関係書籍や論文も多数。
直前期はIメッセージで!
直前期の受験生に対する保護者の声かけは、「Iメッセージ」が基本です。
「Iメッセージ」とは、自分を主語にした話し方です。これと相対する「YOUメッセージ」は、相手を主語にした話し方です。
わかりにくいと思いますので、具体的に見ていきましょう。例えば、「もっと勉強しなさい」という内容を「YOUメッセージ」で伝えると、「入試が近いのに、どうしてあなたは勉強をしないの」という言い方になります。
これをIメッセージに言い換えると「入試が近いから、もう少し勉強したほうがいいと、お母さんは思うよ」となります。どうでしょうか。受け取る印象が全く異なることがわかるでしょうか。
子育てにおける保護者の話し方の基本は、「Iメッセージ」にすべきであると私は考えます。なぜなら「YOUメッセージ」の本質には強要や脅迫に近いニュアンスがあるからです。「どうして勉強しないの」と尋ねる形になってはいますが、実は「もっと勉強しなさい」という強要や、「もっと勉強しないと大変なことになるぞ」という脅迫が言外に隠れているからです。
そんな言葉を受けると、子どもは反発したり、「自分はもうだめだ」と落ち込んでしまったりします。特に心理的にデリケートな直前期においては、こういった反応が強く出やすいと考えておく必要があります。
YOUメッセージは
子どもの人生にも悪影響
「YOUメッセージ」の危険なところは、「受験後」にも影響する点です。
「YOUメッセージ」に従って勉強していた場合、第1志望校に合格した場合にも、そうでなかった場合にも、「親に言われた結果そうなった」という側面が残ってしまいます。
これでは第1志望校に合格した場合でも「自信」を得ることができませんし、経験からの学びも得られません。
また、合格できなかった場合は、「自分が悪いんじゃない。親がもっと言ってくれなかったからだ」とか「親の言うとおりにやったのに失敗した。どうしてくれるんだ」といった責任転嫁に結びつく可能性があります。
いずれにしても、「自分の意志で努力し、その結果を受け止め、自分自身のことを客観的に振り返る」という、受験を通して得られるはずの精神的な成長の機会を失ってしまうのです。
受験は、第1志望校に合格することだけが目的ではありません。もちろん合格するに越したことはないのですが、その後の人生をより良いものにすることこそが、本来の目的のはずです。
だからなおのこと、「合格さえできれば全てがバラ色」「合格できなければ全てが最悪」といったスタンスに陥りがちな「YOUメッセージ」には注意が必要です。
成功しても失敗しても
人生の糧を得るIメッセージ
一方の「Iメッセージ」は、直前期に特に必要とされる言葉です。
「Iメッセージ」は、「私は、あなたに寄り添っているよ」ということが伝わります。小学生くらいまでのお子さんは、友達との関係も深まり親から離れ始める時期ですが、その一方で、まだまだ親に見守っていてほしいとも思っています。「私はあなたのことをいつでも見守っているよ」ということが伝わる「Iメッセージ」は、お子さんが不安になりがちなこの時期に、特に大きな意味をもってくるのです。
実は「Iメッセージ」には、少しドライな面もあります。「お母さんは、もう少し勉強したほうがいいんじゃないかなと思うよ」と言った場合、勉強するかどうかはお子さん自身の判断になります。それ以上、親は踏み込みません。親とお子さんとの間に、一定の距離感が必要です。
もしお子さんが「今は勉強しなくてもいいや」と考え、結果的に受験がうまくいかなかったとしても、それはお子さん自身の判断から生じたものだと明確になります。もちろん、うまくいった場合の満足感や達成感、自信も大きなものになります。その学びを得るために、親はあれこれ言いたくなるところをぐっと我慢することが大切です。
安易な「保証」を避け
「事実」から自信をもたせる
ただし、「Iメッセージ」なら何でもいいというわけではありません。
まず、必要以上に保証しないこと。お子さんが受験を不安に思っている時に、「大丈夫よ。模擬試験でこんなにいい点数をとっているんだから絶対合格よ」などと、不用意に「試験の結果」に言及しないことです。
模擬試験の成績が良くても、本番で同様にうまくいく保証はありません。いくら親自身が「確信している」ことでも、安易な決めつけは「YOUメッセージ」と同様になってしまいます。
「あなたが今まで続けてきた頑張りは確かなものだよ。当日はそれを発揮すればいいだけ。落ち着いて取り組んでね」と、自信の裏付けとなる事実を喚起させるにとどめてください。
第1志望校についての話し方も、注意が必要です。
励ましのつもりで、「〇〇中学に絶対合格しようね」などと声をかけてしまいがちですが、裏を返せば「〇〇中学に入れなければ『失敗』」と言っているようなもの。直前期の子どもが感じるプレッシャーはより大きくなりますし、万が一うまくいかなかった場合、必要以上の絶望感を味わうことになります。
保護者は、受験する学校それぞれの良さを伝えていれば、それで十分です。「どの学校に行くことになってもお母さんはうれしい」と伝えることで、お子さんもリラックスして受験に臨めます。
言葉での励ましより、
温かいお茶とお菓子で心を伝える
受験当日は、必要以上に励ましの言葉をかけるよりも、持ち物の確認など、バックアップのための言葉がけを優先してください。あとはしっかり目と目を合わせて送り出せば、保護者の気持ちは必ず伝わります。
試験後には「お疲れさま!」と伝え、好きなものを食べさせてあげてください。
「試験の結果ではなく、今まで頑張ってきたあなたを応援しているよ」という気持ちを伝えることが、その後のやる気につながっていきます。
親子が一緒になって取り組む中学受験では、保護者も「自分が受験している」かのような気持ちになってしまうことが少なくないようです。
しかし、言うまでもなく受験はお子さん自身のもの。保護者は入れ込みすぎず一定の距離を保ち、見守ってあげることが大切です。
アドバイスしたいこと、注意したいことは山ほどあると思いますが、そこはできるだけ抑えて、お子さんの生命のために大切なこと睡眠、食事、体調管理に気を遣ってあげてください。温かいお茶とおいしいお菓子で応援の気持ちを伝えてあげれば、お子さんは勇気をもって受験に臨むことができるでしょう。
『親に言われて嫌だった言葉、傷ついた言葉』
- まったくあなたはダメね
➡ 完全否定 - いつもこうなんだから、仕方ないわね
➡ やめたいと言った時 - どうせ努力したって大したことはないでしょう
➡ できないところにフォーカス - やる気になったのはうれしいわ。でも続くかしら?
➡ 逆説否定 - あなたなんかにできっこないと思うわ
➡ 未来否定 - こんな成績じゃ、将来は真っ暗だね。社会では生きていけないよ
➡ 脅迫 - 今の時期は3時間勉強するのが当たり前だよ
➡ 責任転嫁 - さっさとしなさい。本当にのろまなんだから
➡ 言葉の暴力 - あなたのせいで、こんなに白髪が増えたわよ
➡ 見当違い。同情を買おうとする - お母さん(お父さん)はどちらでもいいのよ。
でも、やらないで困るのはあなたでしょう?
➡ ダブルバインド 二重拘束 突き放し
川合先生の考える「子どもとの会話鉄則9」
● 説得は、納得ならず。
➡ 力よりも信頼こそが大切
● 相手は背中を見ている。
➡ 口より態度
● 感情は、伝染する。
➡ 親が不快なら、子どもも不快
● 耳を澄ませば、ゴールが見える。
➡ 傾聴から全ては始まる
● 待てば、海路の日和あり。
➡ 焦ってみても意味はない
● 相手の力に期待しよう。
➡ 子どもは、解決策をもっている
● 秘密共有が、連帯の挨拶。
➡ 信頼関係こそが命綱
●「親は親 子どもは子ども 教師また」
➡ みんなそれぞれ生きている
● 相手の立場に時々立ってみよう。
➡ 見方を変えれば、道が開ける









