中高6年間を満喫しよう!~学校生活~

逗子開成中学校・高等学校校長
小和田 亜土(こわだ・あど) 先生
早稲田大学教育学部を卒業後、同大学大学院に進学し修士課程を修了。
1993年より社会科教員として逗子開成中学校・高等学校に着任。
2018年以降の5年間は教頭として学校運営に携わり、2023年度より現職。
海とともに歩んだ120年
建学の精神「開物成務」
建学の精神「開物成務」(かいぶつせいむ)には、どのような思いが込められているのでしょうか。
「開物成務」には、「自主的に行動し、社会のなかで協力しながら責任を果たす」という願いが込められています。もともと逗子開成は、東京の開成中学校の分校として誕生しました。初代校長は開成中学校の校長を務めていた田邊新之助先生で、海と山に囲まれた逗子の自然環境を教育の場として理想的と考え、この地を選んだのです。この精神は120年を経た今も本校の根幹に息づいています。
逗子という立地も、生徒たちに大きな影響を与えているのですね。
そうです。自然に囲まれた環境のなか“等身大の自分”でいられることが本校の魅力で、男子校ならではの“気兼ねなさ”もあり、どんな生徒もそれぞれのスタンスで居場所を見つけられる。そうした“自然体”が本校らしさと言えるでしょう。教員との距離も近く、外のベンチで談笑しながら進路相談をする光景も日常的に見られ、信頼関係が構築されたなかで生徒が自立していく空気が醸成されています。
「自主性」を重んじる校風は、どのように根づいているのでしょうか。
本校における全ての教育活動は「自主性」と「社会性」を育てることに結びついており、体育祭や文化祭などの学校行事は生徒主体で企画・運営され、互いに協力しながら一つの目標を形にしていくプロセスが重視されます。近年の文化祭では生徒たちが逗子市の商店街と連携し、キッチンカーの出店を実現させるなど、地域社会と関わりながら活動の場を広げています。
また、1998年に始まった土曜講座は「自分の興味に合わせて選べる学び」として定着し、現在では土曜講座から派生した、生徒有志による自主的な海洋探究プロジェクト、通称『うみけん』などの自主活動が生まれ、地域や環境問題などをテーマに取り組むグループも多数誕生しています。
文化祭やオープンキャンパスなどでは、在校生が自然体で来場者に声をかける姿が見られます。
生徒有志による自主的な探究プロジェクト活動、通称『うみけん』。海洋教育サミットで発表したり、東大の研究室で海洋研究に関する実験装置を開発したりと、さまざまな活動に取り組んでいます。
「海洋教育」による学びの深化
象徴的な行事である「ヨット帆走」や「遠泳」は、どのような目的で行われているのでしょうか。
1986年から始まった「海洋教育」は当初、「ヨット帆走」と「遠泳」の2本柱でスタートしました。いずれも“強い心と体を育てる”ことを目的としています。
「ヨット帆走」については、中1の10月から3月にかけてヨット製作と講義が行われ、自分たちの命を預ける船を造るという緊張感のあるなかで、工具の使い方や塗装などを真剣に学びます。そして中2の春に完成したヨットで進水式を行い、逗子湾へ船出するのです。こうした体験を通して、「自らの手で造り、仲間と力を合わせて海に出る」逗子開成の精神が培われていきます。
小和田先生は海洋教育をさらに発展させてきました。どのような教育を推進してきたのでしょうか。
「ヨット帆走」や「遠泳」は心身を鍛えるだけでなく、「海と人とのつながり」を学ぶ貴重な機会です。東京大学海洋アライアンスの先生方との出会いをきっかけに連携が始まり、海洋教育は大きく前進し、2014年には同アライアンスと正式に連携協定を結び、科学的・社会的な視点から海を学ぶ「海洋教育」へと発展を遂げたのです。大学の先生方に講演をしていただいたり、海をテーマとする探究学習を行ったりと、生徒たちが海の環境や文化を多角的な視点で考える機会が増えました。その成果として東大の研究室を訪問したり、海をテーマに自主的な研究を行ったりするグループが生まれ、学会発表に挑戦する生徒も現れるほどです。海をきっかけに「自分でテーマを見つけ、社会とつながる力」が育っていることを実感しています。
海を題材に自然との共生や防災・環境問題など多様なテーマを学ぶ
海をテーマに、学びをどう深めていくのでしょうか。
海洋教育は「総合的な学習(探究)の時間」と連動して進めています。中1で大学の研究者を招いて行われる「土曜講座」で海に関するテーマに触れ、「自分が講師なら、どんな講座を開くか」といった問いを通して主体的に学びを広げ、中2で「海に関するディベート大会」を開催し、水族館や捕鯨などを巡る社会的論点を通して議論する力を育みます。そして中3になると各自のテーマで自由研究を進めて文化祭で発表するのです。
さらに高1では自由にテーマを設定し、調査・分析・発表を行うなど、探究をより専門性のある内容にまで深めていきます。3月に実施される「総合探究発表会」は、中学から積み重ねてきた探究学習の集大成と言えます。
海についてだけ学ぶのではなく、そこから学びが広がっていくのですね。
そうです。説明会などで耳にする「海洋教育」「遠泳」という言葉に、少しハードルの高さを感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、実際に海の活動ばかりをしているわけではありません。自然のなかでの体験を通して、人との関わりや学びを深めていくことを大切にしているのです。
「海」は単なる題材ではありません。自然と人との共生、防災や環境問題など、多様なテーマへとつながり、海を通して「社会をどう見るか」「社会とどう関わっていくか」を考える契機としています。
中1の10月から3月にかけてヨット製作と講義が行われ、中2の春に完成したヨットで進水式を行い、逗子湾へ船出します。
学びの基盤は「自ら学ぶ力」「自分事」として進路を考える
学習面において大切にされていることを教えてください。
与えられた課題をこなすのではなく、「自分で考えて学ぶこと」です。そのため授業では班での意見交換を重要視し、例えば数学では解き方を互いに説明し合う、社会科では教科書を読み解きながら問いを立てるなど、対話的な学びを多く取り入れ、補習も一律に行わず、必要に応じて個別にフォローしています。
また、高1まではクラブや委員会などの活動を優先し、学びのリズムを自ら作ることも奨励しており、オンライン授業システムの活用や、オンライン学習の導入などICT環境も整備し、自分のペースで学習を深めていける仕組みを整えています。
進路指導ではどのような点を重視されていますか。
重視するのは「自分事として考える」こと。情報にあふれた時代だからこそ周囲に流されず、自分の興味・関心、将来の夢や目標と真剣に向き合い、納得のいく進路を選んでほしいと考えています。
そのための入り口となるのが「土曜講座」であり、短期完結型の講座を通して幅広い分野に触れ、興味を広げ、やがて深めたいテーマを見つけて探究につなげていきます。高校では企業経営者などを招いて行う「キャリア講座」を設け、社会で活躍する先輩の話を通して、進路を具体的にイメージできるよう支援しています。
本校では医学・建築・工学系などへの理系進学希望者が多い一方で、法学や社会学など文系にも広がりを見せており、「海外大学進学セミナー」や「海外研修」など、グローバルに学ぶ機会も増えています。今後も、その先の社会で求められる「世界標準で考え、行動できる人」を育成する教育活動を実践していきます。
主体性を発揮しながら他者と協働できる人へ
中高6年間で、どのような生徒を育てたいとお考えでしょうか。
意見の違いを受け入れ、折り合いをつけながら共に前へ進む力それこそが、これからの社会で求められる力です。一人ひとりが主体性を発揮しながら、他者と協働できる人に育ってほしいと思います。
海に寄り添う環境での学びは単なる体験ではなく、自分と世界をつなげて考える視点を育みます。6年間を通して自ら考え、仲間と活動し、社会と関わる経験を積み重ねることで、どのような場においても力を発揮できる人へと成長してほしい。逗子の地で、その力をしっかり育んでほしいと願っています。
最後に、中学受験を考えているお子さんや保護者の方へメッセージをお願いします。
まずは、「この学校に入りたい」という憧れをもってほしいと思います。特に第1志望校に対しては、その気持ちを大切にしてほしいですね。強い憧れがあれば、模試の結果が振るわない時でも、諦めずに頑張り続けることができるでしょう。
逗子開成にはいろいろなタイプの生徒が在籍しており、海やヨットに強い関心をもって入学する生徒もいれば、文化祭の雰囲気や先輩たちの楽しそうな姿に惹かれて入ってくる生徒もいます。それぞれが自分らしい形で認め合い、居場所を見つけていける学校なのです。
明るくて親しみやすい雰囲気は、逗子開成の大きな魅力のひとつです。









