中高6年間を満喫しよう!~学校生活~


昭和女子大学附属昭和中学校・高等学校 校長
真下 峯子 先生
奈良女子大学理学部生物学科卒業後、埼玉県内の公立中学校、県立高校で理科教諭として教鞭を執る。埼玉県立総合教育センター主席指導主事、埼玉県立高校校長、私立女子中高校長などを歴任し、2020年4月から現職。

森上教育研究所 アソシエイト
高橋 真実 さん
慶應義塾大学卒業後、メーカー、外資系コンサルティング会社を経て独立。学校向け広報セミナーや教育シンポジウムの企画・運営に携わる。保護者として娘の中学受験を経験。
理数教育・探究は
人生の選択肢を広げてくれる
高橋中学受験者数の高止まりなど、高い人気と注目を集める私学において、理数教育、データサイエンス教育、STEAM教育、探究学習を強化する学校が増えています。こうした動きには、どのような背景があると思われますか。
真下世の中や世界情勢は今も刻一刻と変化を続けており、「変化が当たり前」という誰にも未来の予想がつかない時代を迎えています。子どもたちは将来、そんな時代のなかで、自分の力を発揮できる場所を何とか見つけていかなければなりません。私学がさまざまな教育に取り組む背景には、そうした時代を想定し、子どもたちの「選択肢を狭めたくない」「力を発揮できる場所を増やしたい」という思いがベースにあるのではないでしょうか。少なくとも本校ではキャリアを考えるうえで、「人生の選択肢を半分にしない」ために理数教育にも力を入れ、文系・理系双方の分野で活躍できる女性の育成に注力しています。
特に女子の理系教育については、「女子は理系が苦手」という偏見のもと、「できなくてもよい」とスポイルしがちな風潮もありました。しかし、苦手・得意は環境に左右される部分が大きく、「女子は理系が苦手」は事実ではありません。本校では、こうした先入観にとらわれない教育環境を整えています。
高橋貴校では、「スーパーサイエンスコース」の設置やデータサイエンス教育など、さまざまな取り組みをされていますね。
真下本科、グローバル留学、スーパーサイエンスの3コース制で、「これからの時代を生き抜く力強い女性」を育成しています。現在、卒業生のうち理系学部への進学は32%ですが、これを将来的には50%まで増やしていきたいと考えています。
2023年度には、「文系・理系を問わない女子高校生のDS・プログラミングチャレンジと理工系キャリア支援~データサイエンスを中心に据えた探究活動プログラムの開発」として、本校の取り組みが三菱みらい育成財団による助成に採択されました。高1生全員がデータサイエンスの特別講座を計8時間受講し、独自に開発したデータサイエンスの教科書で基礎を学び、専門家を招いたワークショップやプログラミング教育も実施しています。
高橋「文系・理系を問わず」というのがポイントですね。コンサルティングやマーケティングをはじめ、文系の仕事でもデータを用いて考えるプロセスは欠かせません。全ての生徒がデータサイエンスを学ぶ点に意義を感じます。
真下そもそも社会に、文系・理系にくっきりと分かれる「課題」など存在しないのではないでしょうか。例えば、コロナ対策委員のメンバーを見ても、医療や感染症の専門家がいる一方で、経済学者や政治の専門家もいて、多彩な観点からの知見が求められています。全ての社会課題には、文理融合的な視点が必要なのです。
高橋現実問題として日本では急速な少子化が進んでおり、文系・理系、男子・女子などを区別していては、社会が成り立ちません。みんなで知恵を出し合い、力を合わせていく必要があるんですね。
真下先生は、「数学」や「理科」など、理数教科を学ぶそもそもの意義については、どうお考えでしょうか。
真下理数教科を学ぶ最も大きな意義は、論理的思考力やエビデンスを伴った発信力などを育てることにあると考えています。これらの力は、社会へ出た後に、文理関係なく、どんな仕事においても必要不可欠です。例えば文系の編集者でも、責任をもって言葉や事実を発信する際には、エビデンスやファクトチェックが必要ですよね。
先日、生成AIのシンポジウムで、メディアアーティストの落合陽一さんが、「これからの時代は、思考力やコミュニケーション力、問題解決力、情報収集力など、学問や職業の枠を越えて応用できる力、いわゆる『PhDスキル』(※)こそが求められていく」ということを話されていたんです。それを聞いて、疑問に思ったことを調べ、先例があればそれを学び、先例がなければ自ら研究を進めていく「探究」も、PhDスキルが求められる学びだと感じました。
高橋おっしゃるとおりですね。そもそも「探究」が学習指導要領に入ったのは、「探究に取り組むこと」自体を目的としたわけではなく、探究を通して学力の三要素(知識・技能、思考力・判断力・表現力等、主体的に学習に取り組む態度)を育むことが目的なんです。
昭和女子では、どのような探究学習を行っていらっしゃいますか。
真下本校では、探究の最上位目標に「つくる」を掲げ、そのために必要な力として「さぐる ねばる つながる ためす」を定め、探究だけでなく、全ての教科のシラバスに位置づけています。
- PhDスキル:博士号を取得する過程で培われるスキルや能力。
これは特定の専門知識だけでなく、研究や学術活動、問題解決、思考の方法に関わる幅広いスキルを含みます。
昭和女子大学附属昭和の“探究”
高橋探究の土台として「知的好奇心、リスクテイクの勇気や心理的安全性」を重視していらっしゃるのも素晴らしいと感じました。さまざまな学校の公開授業を見ているとわかるのが、クラス内でどんな発言をしても受け入れてもらえる安心感のある学校では、どんどん意見が出て、ああでもない、こうでもないと活発な議論が生まれるということです。日本でベンチャー企業やスタートアップ企業が生まれにくい背景には、「失敗を許さない」社会の空気も原因だという話はよく聞きます。
真下同調圧力があり、予定調和になってしまう組織のなかでは、「多様な意見」は生まれないですよね。話し合いのなかで出てきた多様な意見こそが探究の起点になるわけですから、まずは心理的安全性をつくることは欠かせません。
高橋貴校では「心理的安全性」をつくるために、具体的にどのようなことをされているのでしょうか。
真下安心・安全な環境になるかどうかの分かれ道は、失敗した時の教員の声かけにあると考えています。例えばテストでいい点数が取れなかった場合でも、「できないところが明確になったね。次はそこを学習していけばいいね」など、失敗を成長や学びにつなげていくことが重要です。本校では教員によるポジティブな声かけを、日々のなかで意識しています。
ちなみに、スーパーサイエンスコースに入学した生徒と面談をして、「なぜこのコースに入ったの?」と質問をしてみると、「ここには同じ感覚をもっている仲間がいるから」という返答が多いのです。ダンゴムシを見て面白いという感覚は、「普通」のクラスだと疎外感につながるかもしれませんが、ここでならそうした興味・関心を十二分に発揮できると言うんですね。こうした声が出てくるということは、コース分けも一つの心理的安全性につながっているのかもしれません。
高橋中高一貫校は、「失敗が許される時間的余裕」が6年間あることも大きな価値ですね。じっくりと時間をかけた試行錯誤が必要な探究学習にふさわしい環境と言えます。









