創立以来、約100年にわたり受け継がれる理念「人をつくる」に基づき、個々の可能性を広げながら、将来について自ら考え、選択する力を育てる教育を貫く四條畷学園中学校。その姿勢は、生徒たちの3年後の選択である進学実績に名を連ねる高校が、実に多様であることからもうかがえます。
その実現において大きな役割を担っているのが独自の「進路指導」です。進路指導部長の寺西 剛先生は、「将来就きたい仕事から逆算して進路を選択するのが理想」と話します。
まずは自分が好きなことを起点に興味のある仕事を見つける→そのためにはどの学部で学ぶ必要があるのか→その学部がある大学に行くにはどのような高校を選べばよいのか→その高校に進学するために今何をすべきなのか。それらを考えさせる指導を行っているのです。
生徒と教員の距離が近いことが特徴の同校。
進路についても気軽に話せる雰囲気と関係性が作られている。
“逆算”できるように導くための進路指導は、進路ガイダンス、二者・三者面談など、一般的にイメージされるものだけではありません。
「最大の特徴は、全教員が集まり一人ひとりの生徒について話し合う『進路対策委員会』にあります。これは、進路指導部長である私や担任に加えて、学年の各教科担当やクラブ顧問、校長や教頭まで参加するもの。成績ありきではなく、それぞれの立場から見てきた“一人ひとり”の個性・適性に着目し、本人の普段の様子や希望・悩みなどを共有した上で、『こういう分野も合っているかもしれない』『こういう言葉をかけたら、もっと広い視野から考えられるのでは』といった話し合いを行います。つまり、本当に適した進路に向かう道のりを、全教員で考える体制が整っているということです」き
この『進路対策委員会』の意義を高めるためのベースは、日々の学校生活において作られています。一つは、毎日2~3人の生徒が教員と個人面談を行う「日直面談」をはじめとする、生徒と教員との密なコミュニケーション。学校生活における悩みから進路や将来の夢に関する相談まで、あらゆる話を1対1で行い、中1から“生徒と教員の信頼関係”と“進路に対する意識”をじっくりと育んでいきます。
生徒同士で勉強を教え合ったり、進路を相談し合うなど
切磋琢磨できる環境で高い進路意識が育まれる。
もう一つは、生徒の状況に合わせた学びの徹底。たとえば朝の読書タイムは、臨機応変に、進路実現を支える時間として活用します。模試対策をしたり、仲間と進路について話し合ったり、良い状態で1限目の授業に臨むことを目的としたミニ授業を行うなど、ルーティーンではなく、日々変化していく生徒たちの状況に合わせて“今まさに必要なこと”を与えていきます。
手間を惜しまず、柔軟かつていねいに積み重ねるのが四條畷学園のスタイル。全教員が集結して議論する『進路対策委員会』は、その象徴と言えるでしょう。企画部長の中司 延亮先生は、この『進路対策委員会』が進路実現にもたらす効果について、次のように語ります。
「データ分析といったデジタルな手法だけではなく、教員同士の対話というアナログなアプローチも大切にする。非効率ではあるのですが、このプロセスを踏むからこそ全教員が一人ひとりの状況をしっかりと把握でき、それぞれの立場から声をかけることが可能となります。現に、本校では休み時間にもあちこちで進路の話が飛び交っています。そのような環境にいると“高校受験は孤独な戦いではなく団体戦なんだ”“皆がサポートしてくれているんだ”という空気感が自然と生まれ、生徒たちのモチベーションが高まり、思い描いた進路を実現する原動力になっていると感じています」
中2の探究学習として実施された、義肢装具等の製作を手掛ける企業の経営者による講演会。真剣に聴き入り、質疑応答タイムには積極的に質問していた生徒たち。「社会人として大切なことは何か」「今大切にすべきことは何か」を考える貴重な機会となった。
“逆算の進路選択”を実現する上で、「探究学習」も重要な位置づけにあります。四條畷学園中学校では10年以上前から6年一貫の取り組みとして探究学習を導入し、試行錯誤とチャレンジを重ねて進化させてきました。2021年度からはこれまでの内容を凝縮させ、時代に合わせてアレンジした3年制の中学バージョン「学園プロジェクト(通称:Gプロ)」がスタート。「時代を知る、自分を知る、地域(地元)を知る」プログラムを通して広い視野を養い、興味ある分野を掘り下げていきます。
中2の探究学習の第1弾として実施された『地域企業の経営者による講演会』を見学しました。SDGsの企業の課題発見に向けて多角的な視点を養うことを目的としたものですが、企業の事業概要や社会的意義はもちろん、会社として大切にしている“利他の精神”や人材の採用・育成の方針、多様性に満ちた社員の紹介やそれぞれの仕事内容などにも触れられ、まさに“逆算”の起点となる内容。こうして視野を広げ、中2後半には「職業調べ」に取り組む予定です。
5月に行われた中1・中2研修合宿でのカレー作りの様子。
行事にも探究の要素を積極的に取り入れています。先日、淡路島で行った中1・中2合同の宿泊研修では、「カレー作り」、淡路の魅力を伝える「動画作成」、「ニュースポーツの考案」の3つからアクティビティを選択できる形としました。
「身につけてほしいのは“自分で考える力”。それさえあれば、誰かに言われなくても、自分の進路を見つけることができると信じています」(寺西先生)
探究学習のカリキュラムも、内容は生徒たちの状況を見ながら決めていくとのこと。手間を惜しまず、生徒たちの成長と思いに伴走する教員の熱意が、多様かつハイレベルな進学実績の支えとなっているのです。