
雲雀丘学園が7月と12月に実施する『Frontier Week』は、全校生(高3は7月のみ)を対象に、教科や学年の枠を越えて学ぶ特別授業期間。その名のとおり、生徒たちは新しい領域や未知のテーマに挑みながら、授業や発表、外部講師による講演などを通して学びを深めていきます。

『FrontierWeek』が始まったのは、同校が次代で活躍する先進的な教育に力を入れている姿勢が評価され、2024年に文部科学省から『DXハイスクール』、および兵庫県から『ひょうごリーダーハイスクール』の指定を受けたことが背景にあります。
対象は中1から高2(高3は7月のみ)で、1講座100分の授業を基本に、教科の枠を越えた多彩なプログラムが展開されます。教壇に立つのは、いつもの授業とは異なる教員で、デジタルツールを活用した授業や、『スポーツ探究』のような身体を使った講義、さらに『ビブリオバトル』『英語暗唱大会』など発表の機会も設けられています。
『FrontierWeek』で行うこれらの探究的・挑戦的な特別授業は、生徒の視野を広げ、新たな興味・関心を呼び起こすとともに、主体的に学ぶ姿勢を育むことがねらいです。

12月の『FrontierWeek』第一日目に中1で行われた『AI×国語』の授業を担当したのは、普段は高校生に漢文を教えている山村長史先生。教科や学年の枠を越えた『FrontierWeek』ならではの授業です。松任谷由実のヒット曲『春よ、来い』と、清少納言の『枕草子』より“うつくしきもの”を題材に授業は進められました。
授業のテーマは、「学習者(人間)とAIの判断の差異を探る」。生徒と生成AIに同じ質問を投げかけ、その違いを比べていきます。そして、人とAI、それぞれの返答の方向性の違いを把握し、何を判断基準にしているのかを探究します。
まず、『春よ、来い』を視聴し、山村先生が「歌詞に出てくる“キミ”とは誰のことだと思いますか?」と問いかけます。「もう会えない恋人?」「冬のことでは?」など生徒からさまざまな答えが出た後に、AIを用いてこの曲の意味を調べると、「恋愛がテーマ。沈丁花の花が二人の関係を物語っているのではと推測できる(後略)」という答えが提示されました。山村先生は、「では、AIが提示した世界観から理解を深めていきましょう」と、歌詞の深掘りを促します。意見交換を行い授業が進むと、ある生徒が「AIってすごいな」と発言しました。すると、山村先生は、「AIは人間が作ったもの。人間が書き込んだ知識を集めているにすぎません。すごいのは人間です。ですから、AIの情報は参考にはなるけれど、何も考えずに鵜呑みにしてはいけません」と提言。生徒たちがハッとするようすが印象的でした。

「次は『枕草子』の“うつくしきもの”から考えましょう。“うつくしきもの”とは現代では“可愛い”という意味です」と解説。そして“可愛いもの”が書かれた複数のテキストを見ながら、それぞれが人間作か、生成AI作かを判断するクイズに挑戦。
人とAIの“可愛い”の違いを探りました。生成AIのテキストには犬やパンダの赤ちゃん、子猫など一般的に可愛いとされる動物が登場する傾向が。人間作のテキストには「小さな妹が髪を切り『可愛い?』と聞いてくる姿が可愛い」など経験に基づいた描写が多いように見られました。生徒からは「人間が作ったテキストには感情が込められている」「生成AIは、難しい言葉を多用している」といった意見が出ました。
「AIが生成したものに偏りがあるのは、Web上で大勢が“可愛い”と言った情報を拾っているだけだからです。人間の作品にはそれぞれの経験と感情が込められています」と、山村先生。経験とそこから生まれる感情や情景を、自分で言葉にする意義と大切さを伝えました。そして、「AIは便利ですが限界があります。自分で考えることを忘れず、AIの情報に振り回されずに、上手に向き合うことを心がけてください」と語りかけました。
今回の『AI×国語』の授業は、中1生たちが、人とAIの意見を見比べながら、「自分の言葉で考え、表現すること」の意味を実感する機会となりました。
「『Frontier Week』では、教員は普段の受け持ちとは異なる生徒に向けて、いつもの教科学習とは異なる授業を担当しますから、学校全体が良い意味での緊張感に包まれるように感じます。生徒も教員も、挑戦する気持ちで取り組んでもらえたらと思います」(山村先生)

●スポーツ探究
●中1「デジタルツール×個別最適化学習」「ストレスとの付き合い方」「国際理解教育」「OWARAI」「救急法」「スポーツ研究」など
●中2「エネルギーの未来について」「浮遊ゴマ」「薬物について」「ビブリオバトル」など
●中3「システムデザイン特別授業」「AI×英語・数学・技術」「金融×DX」「百人一首研究」「こころの未来」など
●中1~中3 「英語暗唱大会」「合唱発表会・コンクール」
●高1「食を通じてデータサイエンスを学ぶ」など
●高2「探究論文発表」「ゲートキーパー講習」など

●ビブリオバトル

●システムデザイン特別授業

●英語暗唱大会

●合唱発表会・コンクール