

中学教頭・佐々木恵先生
常翔学園中学校では、2025年度より 〝グローバルシチズンシップを育む〟ことを目的とし、中3の5月に海外修学旅行を実施しています。行き先はオーストラリア・ケアンズ。生徒たちは事前に設定された三つの目標を意識して、5泊6日の行程に臨みます。プログラムの立ち上げから携わってきた中学教頭の佐々木恵先生は、オーストラリア修学旅行の目的を次のように話します。
「目標の一つ目は、英語を使ったコミュニケーションを通じて国際感覚を豊かにすること、二つ目はファームステイや現地校との交流を通して異文化への理解を深めること、三つ目は大自然に触れることで豊かな情操を培うとともに、環境問題などの国際課題解決に対する意識を持つこと。ルーブリックも作成しています」
目標達成には、コミュニケーションツールである英語力を身につけることが不可欠。そこで中2の1年間は、通常の英語の授業に加えて、教科横断型学習プログラム『常翔STEAM』の一環である『英会話講座』を受講します。特徴は、地球探究・SDGs・グローバル探究をキーワードとしている点にあります。ネイティブ教員の指導のもと英語力を磨くとともに、英語を使いながら世界の課題について考え、議論することで視野を広げ、修学旅行を意義深いものにするためのベースを築くのです。

ファームステイは2日目に実施。一家庭に数名のグループで滞在し、ランチやディナーなどを共に楽しむ。ホストファミリーとの交流を通して、英語力への不安を払しょくしたり、会話のポイントをつかむことで、後日の現地校との交流がより有意義なものに。

学校交流では生徒1名につき現地校の生徒1~2名がバディとしてつき、グループに分かれて交流。現地の生徒たちが企画したバレーボール・卓球・ズンバダンスを一緒に楽しみ、常翔学園中の生徒たちは折り紙・書道・けん玉などの日本文化を英語でレクチャーした。

校内で3日間にわたり行われる中2の『イングリッシュ・デイキャンプ』。空港・ホームステイ・ホテルなど、修学旅行のシチュエーションをイメージしながら英会話を学ぶ。「『英会話講座』の成果か、これまでで一番積極的に取り組めていたと思います」(佐々木先生)
また、『英会話講座』の集大成として、校内で3日間の『イングリッシュ・デイキャンプ』を実施。ネイティブ講師とのコミュニケーションを重点的に行うことにより、英語に対する心の壁を取り除きながら、現地の生活で必要となる単語・フレーズを習得します。
こうした準備を経て、いざ現地へ出発。同行した佐々木先生は、生徒の姿を見て大きな手応えを得たといいます。
「ファームステイは、生徒がホームシックにかかるかもしれないと考え、あえて1日のみの設定にしたのですが『もっと滞在したかった』という声が多く聞かれましたし、学校交流では有志の生徒が企画した劇で大いに盛り上がりました。皆、想像以上にたくましく、英語の得意不得意にかかわらず『また海外へ行きたい』と思ったようです。初めての海外修学旅行でしたが、今回の内容を踏まえてブラッシュアップさせ、より良いプログラムへと進化させていきたいと考えています」

4日目は2022年に開校したニューマンカソリックカレッジを訪問し、現地の7年生(中学1年生)と交流。セレモニーでは、修学旅行実行委員の生徒が企画した英語劇『おおきなかぶ』を披露。出演者を募ると、現地の生徒たちからどんどん手が挙がり、場が一気になごんだそう。「演目を選んだのも、オリジナルの台本を作ったのも生徒たち。英語教員のサポートを得ながら仕上げていきました」(佐々木先生)

学校交流後は、同じ敷地内にあるジェームズクック大学のキャンパスツアーへ。「どのような学部がありますか?」と積極的に質問する姿も見られた。

世界遺産のグレート・バリア・リーフに浮かぶグリーン島では、ガイドのレクチャーに沿ってシュノーケルを体験。ウミガメに遭遇した生徒も多く、美しい海を体感する貴重な機会に。

ハートリーズ・クロコダイル・アドベンチャーでは多様な動物たちに、レインフォレステーション自然公園では先住民族アボリジニの文化に触れた生徒たち。ケアンズ市内では、現地の大学生が案内役を務める『B&Sプログラム』で、現地のオープンな雰囲気に包まれながら、観光や買い物を楽しんだ。
写真左より、中学教頭・佐々木 恵先生、中3のNさん、Tさん、Iさん、Mさん。
●Nさん オーストラリアの方々はとてもフレンドリーで、ケアンズ市内の散策では、知らない人が声をかけてくれたり、あいさつをしてくれたりしてうれしかったです。
●Tさん 交流した学校と同じ敷地内にある大学を見学したとき、スケールの大きさに驚きました。日本の大学のキャンパスも広いですが、それ以上だったように思います。
●Iさん グリーン島でのシュノーケルでは、ウミガメに5 回も遭遇し、一緒に泳ぎました。それだけきれいな海なんだと実感しました。
●Mさん ケアンズの動物園で、多くのいきものと触れ合いました。印象に残っているのはニシキヘビ体験と小ワニ体験。特にワニに触れたのは初めてで新鮮でした!

Tさん
生徒たちは、今回の修学旅行で何を得たのでしょうか。中3生4名に、出発前の気持ちや現地での体験、自身の変化・成長について語っていただきました。
●出発前はどのような気持ちでしたか?
I さん 自分の英語が通じるのかどうか、不安でした。特に入国審査での受け答えと、ファームステイでの交流が心配でした。
M さん 海外は小さい頃に行ったきりで覚えていないので、初めての感覚。英語はもちろん、飛行機に乗ることにすら不安がありました(笑)。
T さん 私は逆で、学んできた英語が現地での生活でどのように使えるのか楽しみでした。
N さん 英語力を試してみたかったので、空港に入った時から、「早く英語を話したい」と思っていました。
●2日目のファームステイはどうでしたか?
Tさん いざ行くと、人見知りをしてしまい自分からは話せなくて…。日本人の受け入れ経験があるご家庭で、向こうから積極的に話しかけてくれたので、何とか頑張って答えていました。
M さん 僕が滞在したのはホストマザー1人のご家庭。単語を並べるだけでも言いたいことを汲み取ってくれたので、思った以上に話しやすかったです。「通じた」という実感も得られて、緊張がほぐれました。
Iさん 僕も意外と話せました。特に会話が弾んだのは夕食の時。炭水化物とタンパク質中心の献立だったのですが、日本では野菜をしっかり食べると話すと驚いていました。
N さん ホストファミリーがミュージシャン一家で、ホストマザーのギターに合わせて日本やオーストラリアの歌を一緒に歌い、楽しかったです。会話では、英語の先生から教えていただいた、質問の例文集が役に立ちました。

Iさん
●当初、「日本に帰りたい」と言い出す生徒もいるかもしれないと思っていたのですが、皆さんのたくましさに驚かされました。学校交流では、より楽しめたのでは?
Nさん バディが2人ついてくれたのですが、どちらとも仲良くなれました。ファームステイで「きちんとした文章でなくても大丈夫」とわかっていたので、どんどん話しかけたことが大きかったと思います。
Tさん ランチタイムにチェスを教えてもらって、一緒に楽しみました。英語が聞き取れない時は、ゆっくり話してくれたり、簡単な単語に置き換えてくれたので、理解することができました。
I さん 学校で習っている英語とは発音やアクセントが違うところがあるので、聞き取りには苦心しましたが、僕もバディもラグビーが好きで、会話が弾みました。
Mさん 自然に話せました。バディに「好きなアニメは?」と質問したら、日本の人気アニメの絵を描いてくれて、盛り上がりました。
●セレモニーで披露した劇『おおきなかぶ』は、よいアイスブレイクになりましたね。
Mさん 私とNさんは修学旅行実行委員としてこの企画に参加しました。出演者を募集すると、現地の生徒たちが「はい!」と積極的に手を挙げてくれて。
Nさん 『桃太郎』にしようという案もあったんですが、世界的に知られている話を選んで、大正解でした!

Nさん
●日本文化を紹介し、レクチャーもしましたね。
Iさん 僕は折り紙担当。前日に急きょ、説明の一部を担当することになり、初めて見る単語もあって戸惑いましたが、友だちが教えてくれて、本番は上手くいきました。
Mさん 書道担当です。現地の生徒の名前を当て字で書いたり、日本語では何と言うのか、知りたい単語を聞き出して書いたりしました。
Nさん 当て字は、ハッピーな意味合いの漢字をチョイスし、意味を説明すると、すごく喜んでくれました。
●英語やコミュニケーションに対する意識に変化はありましたか?
Iさん 海外に行って初めて、英語は特別なものではなく、僕にとっての日本語と同じように、現地の人たちにとって当たり前のコミュニケーションツールなのだと気付きました。そのため、努力すれば理解できるし話せるようになるはず。苦手意識はありますが、もっと頑張ろうと思えるようになりました。
Tさん 聞き取れなかったり、言っていることは理解できるのに英語で言葉を返すことができなくて、悔しい思いをしました。スムーズにやりとりができるように、私ももっと勉強を頑張りたいです。
Mさん 僕も感じたことを言葉にできず、もどかしく感じることがしばしばあったので、語い力をつけたいと思いました。交流する時には、文法を意識しすぎず、とにかく言葉を伝えた方がいいなと思いました。
Nさん 最初のほうは、不安な気持ちが顔に出てしまっていて、相手に気を遣わせていたように思います。笑顔を心がけたら、雰囲気も和やかに。笑顔は万国共通、大事なものなのだと実感しました。

Mさん
●自分自身が変わったなと感じることは?
Iさん オーストラリアのいいところは、個性を出せるところ。これまで僕は遠慮して意見を言わないことも多かったのですが、現地の人々を見ていて、自分なりの考え方を持っていいし、表現していいんだと感じました。
Mさん ホストファミリーや現地の生徒が積極的に話しかけてくれたことで、人と話す時の距離感をつかむことができました。もともと人見知りをするタイプなのですが、今の自分なら、知らない人から話しかけられても対応できるし、自分から話しかけることもできるかなと感じます。
Tさん 印象に残っているのは現地の方々の積極性です。私は授業で進んで手を挙げることはあまりないですし、体育の授業のダンスも控えめになりがち。でも現地校では、ほとんどの生徒が手を挙げ、ダンスも全力でした。それを見ていると、自然と「手を挙げてみようかな」「踊ってみようかな」という気持ちになれましたし、私もそういう雰囲気を作る一人になりたいと思いました。少しずつでも実践していけるように頑張ります。
Nさん 私も、現地の方々の積極性やオープンな雰囲気に刺激を受けました。たとえばランチは性別関係なく誘い合いますし、休み時間もガヤガヤしているのですが、それが心地よく感じました。これからは、自分から話しかけて、いろいろな人とコミュニケーションを取りたいなと思いました。