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進学通信

2025年3月

実践報告 私学の授業
社会・世界を肌で感じる探究学習で “学の実化(がくのじつげ)”の実践者へ

同校の探究学習が目指すのは“学の実化(がくのじつげ) ”。これは、「学理と実際の調和を追究するべきであること」を意味する関西大学の学是で、教育の土台となっているものです。6年一貫カリキュラムのもと、進路選択や自己実現、社会貢献など人生のあらゆる場面で活きる、自ら考え行動する力『考動力』を育む活動が展開されています。
公開日2025/4/15
行事や国際理解教育と融合した多彩なプログラム
「考えるとは何か」を学ぶ中等部独自の授業『考える科』。

「考えるとは何か」を学ぶ中等部独自の授業『考える科』。

 現在は身近なものとなっている探究学習ですが、同校におけるスタートは、開校した2010年にさかのぼります。次代に求められる「自ら課題を設定し、問いを探究する力」へとつなげることを目標に、自律力・人間力・社会力・国際力・創造力に裏打ちされた『考動力』の育成に力を注いできました。

 探究学習の入り口として、探究活動の素養を養う中等部の独自設定科目『考える科』を設定しています。多面的な視点で発想を広げる水平思考など、多様なスキルを磨くプログラムを展開しています。「協働的に学ぶためのコミュニケーション能力やディスカッション、ディベートなどのスキルはもちろん、プレゼンテーションのルーブリック作りを通して、よい発表とは何かを考えて実践したり、折り紙の手順を文字のみで説明することで表現力を身につけたりします」(研究開発部主任・釈慶樹先生)

 また、行事や国際理解教育の取り組みを探究学習と融合させて実践しています。中2の『日置川宿泊研修』では、地元の民家にホームステイさせていただき、校内で実施する『日置川物産展』に向けて地元の方の助言を得ながら企画を立てる活動を通して、幅広い産業について学び考えます。中3の『カナダ研修』では、各自が自然や文化など興味のあるテーマを設定したうえで現地を訪問。日本との違いを体感し、帰国後にレポートをまとめます。

 さらに、関西大学や外部機関との連携にも積極的で、中等部の総合学習の時間では、高槻市の森林・里山保全に取り組むNPO法人や国際交流ボランティア団体などの協力を得て探究活動を実施します。
 高等部では、20以上にのぼる企業を招き社会課題への取り組みを学ぶ『SDGsフォーラム』を開催。その後は10のゼミに分かれて課題研究や論文執筆に取り組みますが、各ゼミに配置された関西大学の教員からアドバイスをもらいながら、必要に応じて外部機関へのヒアリングも行い探究学習を進めていきます。

カリキュラムの枠を越えて有志による活動も活性化

 特筆すべきは、多彩なプログラムがぎっしり組み込まれたカリキュラムでありながら、生徒の現状に合わせて、あるいはよりよい形を求めて、バージョンアップし続けている点です。「高等部での探究学習は、個々がより主体的に活動できるスタイルを検討中です」という釈先生の言葉からも、その姿勢がうかがえます。

 現状に甘んじず、のびのびと学んだ生徒たちの活動もまた、既存のカリキュラムの枠には収まりません。2024年は水産資源に関する社会課題の解決のアイデアを提案する『未来の回転寿司共創プロジェクト』で商品本部賞を受賞。また有志の生徒による、フードロス削減に向けて防災備蓄食を使ったリメイクメニューを企画・開発・販売する活動や、災害時に外国人観光客と災害多言語支援センターをつなぐシステムを考案し、社会実装を目指す活動も展開中とのこと。“学の実化”の精神を受け継ぐ生徒たちの今後の活躍が楽しみです。

6年一貫の段階的なカリキュラムで『考動力』を育む
●探究学習の素養を培う『考える課』(中1~中3)

中1ではコミュニケーションに関する学習や、ディスカッションを評価し合い、選出されたクラス代表による『公開ディスカッション』を実施。中2ではストレスの原因となる出来事へのネガティブな考え方や表現をポジティブな考え方や表現に置き換える“リフレーミング”について学ぶ『ストレスマネジメント』や『ディベート大会』に取り組みます。中3では、どのような文章を書けば合格できるのかを探究する『新しい大学入試を考える』、いのちの意味や生き方について考える『いのちの学習』に取り組みます。
これらを通して身につけたスキルを活かし、教科学習や探究活動に取り組みます。

●中1総合学習 『MACHIプロジェクト』

学校がある高槻を知り、高槻に関わり、高槻の人々とつながるプロジェクト。高槻の地理・歴史を学びPRを行う「地歴系列」、福祉の課題を学び解決策を考える「福祉系列」、竹の有効活用を実践する「自然系列」、高槻に住む外国人の方との交流を通して共生について考える「都市交流系列」の4系列に分かれて活動。いずれも企業・団体による協力のもと、フィールドワークやインタビューなどを行い、地域のために何ができるのかを考えます。

●中2総合学習 『MIRAIプロジェクト』

“もの”と“人”のつながりについて学びます。農家での生活を体験する『日置川宿泊研修』、第1次産業・第2次産業・第3次産業を体験する
『系列フィールドワーク』を経て、日置川でお世話になった方々の協力のもと、日置川で生まれたものを保護者や生徒たちに届ける『日置川物産展』を実施します。

●中3総合学習 『MICHIプロジェクト』

自己分析する力を養うことを目標に、「おもてなし」「もったいない」「しあわせ」の3系列に分かれて活動します。『カナダ研修旅行』では、それら三つの視点から日本と海外を比較。自己を見つめ、進路選択や高等部での探究学習につなげます。

中2総合学習 『MIRAIプロジェクト』

中3総合学習 『MICHIプロジェクト』

●高1 『プロジェクト基礎』

社会における課題への取り組みを知り、企業や団体の活動について話を聞いて、質疑応答や意見交換を行う特別授業『SDGsフォーラム』を実施。2024年度は23の企業・団体との交流が実現しました。その後、「社会」「人間」「自然」「安全」の4系列・10のゼミに分かれて活動。グループごとに約1カ月をかけて、大学教員からの助言を得ながらテーマと問いを設定し、探究します。

●高2 『プロジェクトゼミ』

『プロジェクト基礎』と同じ4系列・10のゼミに分かれて、個人研究に取り組みます。一人ひとりがテーマとリサーチクエスチョンを設定。担当教員や大学教員との面談・文献調査・フィールドワーク・外部機関へのインタビューなどを通して問いを深化させ、約7,000字の論文を執筆します。

高1『プロジェクト基礎』

高2『プロジェクトゼミ』

●高3 『卒業研究』

探究学習の集大成として、大学教員や専門家が参加する『卒業研究発表会』で、個人研究の概要や成果についてプレゼンテーションを行います。本選に進んだ生徒による聴衆を惹きつける発表は圧巻。
夏からは秋の『葦葉祭(文化祭)』に向けて、クラスごとに社会貢献につながる模擬店を計画。2024年度は飲料メーカーや子ども食堂と連携した企画や、能登半島で作られた塩を用いたポテトの販売、リサイクルを目的とした衣服の回収が行われました。