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進学通信

2024年7月

実践報告 私学の授業
好奇心を出発点に 追究する楽しさを知る 『探究アウトプットタイム』

公開日2024/8/31

 答えのない課題に直面する現代社会においては、失敗を恐れずに挑戦する姿勢が不可欠です。学びにおいてもその姿勢があれば経験値がアップし、自信が得られるもの。しかし〝失敗〟には、マイナスのイメージがつきまといます。「間違ってはいけない」と、消極的になってしまうケースも少なくありません。

 こうした現状を変えたいという思いで2023年度からスタートしたのが、最難関国立大学や医学部医学科などを目指す『スーパーJコース』の課外プログラム『探究アウトプットタイム』です。中2から、「ロボットプログラミング」「サイエンスチャレンジ」「デザイン探究」「水圏環境探究」の四つから、自らの興味に沿ったゼミを選択します。

「これらのゼミを”失敗してもいい場所”にするため、あえて成績がつかない課外プログラムとしました。四つのゼミに共通しているのは、興味や関心、疑問を起点に、自分自身で自由にテーマを設定すること。そして、いつまでに仕上げる、という期限を設けていないこと。自分たちのペースでのびのびと試行錯誤するなかで、ワクワクすること、不思議に思うことの大切さや、追究する楽しさを知ってほしいと考えています」 (花本圭史先生)
「臆することなく意見を言い、行動できる人になってほしいという思いがあります。高校での探究を引っ張る存在になってくれたらうれしいですね」(持田政治先生)

 ゼミを覗くと、休み時間のように皆イキイキと、活発な姿が見られました。ロボットの制御方法のアイデアを出し合ったり、実験の進め方を話し合ったり、より快適な自習室の空間デザインについて先生に相談したり…。その主体的に行動する姿に、失敗を恐れる空気はありません。ミッションやテーマが与えられる従来型の探究とは異なり、それらをゼロから見つけることは簡単ではないものの、生徒からは「未知の世界に突入している気がする」「やりたいことが見つかりました!」という前向きな声が聞かれました。
 ワクワクしながら、じっくりと考え、学ぶ楽しさを知るなかで、生きていくための力が着実に育まれているのです。

『サイエンスチャレンジゼミ』では、グループごとに話し合い、取り組む実験のテーマを発表。「スライムを保冷剤として活用するための研究」「蚊の口の構造を応用した採血機を開発」など、多様なテーマが続いた。

『水圏環境探究ゼミ』では、学校の近くにある城北ワンドでの自然観察活動を中心に、外来種も含めた多様な生物の共存について考える。

Seminar1ロボットプログラミング (担当/岡本正夫先生)

基礎から応用まで幅広く学ぶ

自律型ロボットの制御と、その応用に取り組むロボットプログラミングゼミ。中2生は、ライン上を一周させるためのプログラミングを検討中。
中3生は、競技会への出場を視野に、数台のロボットにダンスをさせる方法を考えていました。
「私は基本、答えを教えません。答えが一つではないことや、課題を自分たちで試行錯誤すること、一人では限界があると感じたら皆で相談して進めればいいということを、身をもって知ってほしいからです」(岡本先生)

Seminar2デザイン探究 (担当/藤田凪歩先生)

「こうだったらいいな」を形にして生活を豊かにする

日々の生活が豊かになるようなモノ、空間などをデザインします。中2生は現在、制服に関して生徒へアンケートをとり、皆が快適に過ごせる新しい制服を考案中。
中3生は「ゲーム制作」「住みたい部屋」「自習室」などのデザインに挑戦。自習室のデザインを仕上げ、藤田先生と模型作りについて相談する生徒もいました。ほかの生徒たちも、「今はゲームのキャラクターを考え中」「部屋を広く使えるように、ベッドを昇降式にしたい」と楽しそうに取り組んでいました。

Seminar3サイエンスチャレンジ (担当/持田政治先生)

疑問を実験で解決する

サイエンスチャレンジゼミは、「何を実験テーマにしてもいい自由なゼミ」。この日は皆の前で実験テーマの発表があり、斬新で幅広い分野・切り口のテーマが見られました。主体性のあるゼミ生が多いので、見守っていることが多いという持田先生ですが、上手に発表ができているグループがいれば、「このグループはスライドに書いていない情報を言葉で補足しているのがいいね。皆が話を聞いてくれるからね」など、ポイントを押さえた指導を実践。互いに高め合える環境となっています。

Seminar4水圏環境探究 (担当/花本圭史先生)

多様な生物の共存について考える

城北ワンドで釣りをして生物を採取・観察するため、花本先生の説明とお手本を頼りに、この日は釣りの仕掛け作りに挑戦。ゼミ生の中で釣りの経験者は1人だけ。予想以上に手間取り、予定していた釣りは次回に延期となりました。
「通常の探究の授業は時間制限があるため、教員が事前準備を行うことが多いでしょう。しかし、ここでは掘り下げるテーマの設定も、観察の準備も、すべて自分たちで行います。生徒の質問には単に答えるだけではなく、『どうしてそう思うの?』『どうやって調べたらいいと思う?』と、追究につながるような言葉がけを意識しています」( 花本先生)