中学校検索

地域
学校区分
学校名
検索
閉じる

進学通信

2023年9月

この記事は1年以上前の記事です。

Students' Chat Spot
111 年の歴史に新風を巻きおこす!
生徒会が中心となり校則改定に取り組む

お話を聞かせてくれた前生徒会長の高3・RMさんと生徒会顧問・池内達也先生

公開日2023/10/30

校則は、生徒たちの安全を確保し、落ち着いて学ぶ環境を整えるために定められています。しかし生徒にとっては少々堅苦しく、時代に合わないと感じるものもあるようで校則の見直しに取り組む学校が増えています。三田学園では、生徒会が中心となって校則改定に取り組んでいます。そのきっかけをつくった前生徒会長のRMさんにお話をうかがいました。

校則改定を学校に提案しようと考えたきっかけを教えてください。

 私は高2時に生徒会会長を務めました。以前の生徒会長が「文化祭を変える!」と宣言し、生徒がダンスや演技を舞台で披露するという、新しい文化祭をつくり上げたんです。生徒会が学校を変えるようすを目の当たりにして感動し、高2になって生徒会長に立候補しました。 
 
 中学でも生徒会で活動をしていたのですが、生徒会で「制定カバンは必携の必要があるのか」をテーマに話し合ったことがありました。そのときは校則改定を提案する動きにはならなかったのですが、ずっと疑問に感じていたことです。なぜなら制定カバンが重く、肩に掛けて登校するうちに背骨が痛くなり、体調を崩してしまった友だちがいたからです。体調不良が要因で制定カバンが持てない場合は、学校に届けを出してリュックサックを使うのですが、少数ですが届けを出さずにリュックサックだけで登校する生徒もいました。「なぜ、そんなことをするのだろう」とは思いましたが、制定カバンが重いためリュックサックを使いたくなる気持ちも理解できました。そして、校則って何のためにあるの?誰のために定められているの?と考えるようになり、高校で生徒会長に就任したら、校則について改めて皆で考える機会とするために、校則改定を軸に活動をしたいと思ったんです。

活動はどのようにスタートさせたのですか?

生徒の声を聞き、皆がより良い学校生活を送れるように日々活動している生徒会。さまざまなイベントでも大活躍! 写真は2022年体育大会。

生徒の声を聞き、皆がより良い学校生活を送れるように日々活動している生徒会。さまざまなイベントでも大活躍! 写真は2022年体育大会。

 会長就任直後の高2の4月、中学生徒会にも協力を依頼して全校生徒を対象にした校則についてのアンケートを実施しました。「制定カバン必携を負担に感じたことがあるか、ないか」をはじめ、服装、身だしなみに関する校則について意見を書いてもらう内容にしました。約1カ月間の回答期間を設けて集計してみると、制定カバンのほかにも「制定靴は革製ローファーのため、履き慣れるまで時間がかかり足に負担がかかる」「女子の靴下が真夏でも膝下までのロング丈で暑い」「女子の髪型で、長髪は真冬でも結ばなければならないため寒い」という意見が出てきました。そして、「校則改定をしてほしい」という意見を持っている人は50%、「どちらでもいい」人は30%、「その他」は20%でした。興味深いのは「その他」の20%です。この人たちは「改定しなくてもいい」という反対意見を持っている集団でした。反対の理由として「事前に校則に納得して入学しているのだから改定する必要はない」「個人の自由を尊重し過ぎると生徒として統一感が薄れる」という意見が書かれていました。私は反対意見を見て「そういう視点もあるのか」と気づき、校則改定を学校に提案する理由が明確でなければ、安易に実行には移せないと感じました。

皆が納得できるようなきちんとした理由がないとむやみに校則改定はできないのですね。

 そうです。そしてそのなかでも、最も重要なのは、健康を害する可能性のある「制定カバン」、履き慣れるまでに時間がかかり足の形に影響する革製の「制定靴」、真夏のロング丈が暑いと感じる人が多い「女子靴下」、寒いのに結ばなければならない「女子の髪型」と優先順位をつけました。見た目などのファッション的な観点ではなく、あくまでも骨格や体温調整など“健康”を切り口にして学校に提案をしました。

提案後、校則はどのように変わったのですか?

 「女子靴下」は、制定品のロング丈に加えて、くるぶし丈の着用が認められました。色は白・紺・茶系で市販品でもよく、各自が買い求めやすい価格のものを選ぶことができます。ただし式典の時は、制定品のロングソックスを着用します。この案件は提案から約2カ月後の2022年7月に改定されました。

 「制定カバン」「靴」「髪型」については、2022年の秋から現在まで試行期間中で期限は決まっていません。試行期間を設けた理由は、改定をするには新ルールを協議する必要があるからです。私は高3に進級したため生徒会長の任期は終了しましたが、新生徒会長が引き継いで取り組んでいます。

女子靴下は、提案から約2カ月で、通年、ロング丈のものを着用から、くるぶし丈も着用できるよう改定された。

「制定カバンが重いので、荷物が少ない日は軽いカバンで通学してもよいのではないかと考えています。現在、試行期間中のため、リュックサックで登校する生徒もいます」(RMさん)

校則改定の活動をするなかで心がけたこと、学んだことを教えてください。

 アンケートを実施したとき、主観的な考えにこだわらないようにして全体の意見を把握するように心がけました。さらに、反対派は何を主張しようとしているのかという意図をくみ取る努力もしました。

 校則改定は大きな問題ですから先生も含めて大勢の人を巻き込むことになります。私が生徒会長の任期中に何をするべきかを考えて、スケジュールを立てて段取りよく動くようにしました。

 この取り組みを通じて学んだことは、反対派の声は賛成派の人よりも大きく語気が激しいということです。最初は、皆が快適に学校生活を送るための校則改定なのに、なぜ反対する人がいるのかということや、反対意見ばかりが気になってしまうことに落ち込みました。その後、賛成派は校則改定に納得しているから主張する必要性を感じない。だから声が聞こえない。反対派は納得できないからこそ声が大きくなるのだということがわかり、学校と社会で起きていることに大きな違いはないと感じました。そして社会の動きに興味を持つようになったのは大きな変化でした。

 学校には大勢の生徒が在籍しています。まとめるためには校則は絶対に必要です。でも、よく考えてみると三田学園は1 0 0 年以上の歴史のある学校ですから、現代にそぐわない校則があったとしても不思議ではありません。とはいえ、校則改定を提案するときは、学校から拒否されるのではないかと思っていました。ところが生徒会顧問の池内先生をはじめ、ほかの先生も好意的に話を聞いてくださり、温かく、風通しのよい学校だと改めて感じました。大変でしたが素晴らしい経験ができ、改めて三田学園の生徒でよかったと思いました。

校則改定の活動をどう思いましたか?

制定カバンは、毎日、使うものという前提で作っているため素材と作りがしっかりとしています。そのため重くなっているのですが、RMさんが友だちの体調不良をきっかけに校則改定に取り組んだことで、学校も見直す必要があると認識しました。生徒の立場から意見を述べてくれたことで学校としても動きやすくなり、頼もしく感じています。これからも生徒と学校が力を合わせてよりよい三田学園をつくっていきたいと思います。(生徒会顧問・池内達也先生)